2014.08.30
第74話 鮎

「新ばし 鮎正」店主 山根恒貴さん「天然鮎のあじわい」

とった鮎は一晩生け簀で生かして砂を抜きます。鮎はコケを食べるので、コケの間の小さな砂がお腹の中にあるんです。だから取れたての鮎をそのまま塩焼きにして「どうぞ頭から召し上がって下さい」と言っても、食べた途端に砂がジャリジャリします。それでは困るので、生け簀で砂抜きをするんです。
鮎は主に「友釣り」と呼ばれる方法で釣ります。これは鮎の縄張り意識を利用した釣りで、鮎は川の中で石の周りに縄張りを持つんです。そこに糸に繋いだ囮の鮎を近寄らせると、鮎は追い出そうと体をぶつけてきます。そこを針で引っかけてとるのが友釣りです。「鮎」という字の起源は諸説ありますが、私は「場所を占有する(縄張りを持つ)魚」だと思います。
鮎料理といえば「塩焼き」「炊き込みご飯」、それから素焼きにした鮎に味噌をのせて食べる「田楽」も昔から有名です。さらにウチでは「背越し」というお刺身の一種もお出ししています。これは鮎を背骨ごと2〜3mmの薄切りにして、冷水にさらして洗いにした料理です。洗いにする時、生きた鮎じゃないと身が縮まないので、島根で生きている間にやってもらいます。背骨のコリコリした食感をお愉しみいただけます。
鮎は香り高い身もおいしいのですが、うるか(内臓)も忘れてはいけません。ウチの「うるか茄子」は塩焼きに次ぐ人気の一品です。その名の通り、鮎のうるかと茄子を合わせた料理で、うるかの苦みが魅力です。ただし鮎のうるかは少ないので1人前を作るために鮎が2〜3本は必要で、コースでしかお出しできないのですが。