地域で開催される交通安全教室は時代を反映して変わってくるかもしれません。
最新テクノロジーを使って「危険」を実感。
実生活に役立てようというツールが登場しました。

神奈川県平塚市にある株式会社ラッキーソフトは、
2012年 7月創業の新しい会社。
鉄道運転士用の訓練シミュレータの製造を主な事業としてスタートしましたが、
その技術を応用して開発したのが「交通安全 危険予測シミュレータ」です。

「交通安全 危険予測シミュレータ」は、
三面鏡のように繋がった、3つの、48インチ液晶モニタと向き合います。
中央に自分と並行のモニタが1つ。その左右に1つずつ。
左右のモニタは中央から内側に少し折れ曲がる角度になっています。

この3つの画面にバーチャルな目の前の街が映ります。
手を振り、足踏みすると、歩いているように後ろへと流れていく景色。
その中で街に潜むいろんな危険を避けながらゴールを目指します。
ちょっとしたゲーム感覚で歩行者の危険体験ができるのです。

シーンは4つ。
さらにそのシーンの時間帯や、天候、交通量を変えることができます。
このシミュレータをやってみると意外とのほほんと街を歩く自分に気づくかもしれません。
目と耳で情報をキャッチして「危険」に敏感になっていることが大切です。

このシミュレータで「危険」に気づかなかったり反応が遅かったりすると
車や自転車や人に激突して一瞬画面が赤く染まります。
なんだか本当に交通事故に遭ってしまったような気分・・・

ゴール後は「体験者本人」「上空から」「ドライバー目線」と視点を変えて
体験者の注意点を分析・確認することができます。
「大型液晶モニタ」タイプに加えてゴーグル型の「ヘッドマウントディスプレイ」タイプもあり。
それぞれ価格は300万円、280万円ほど。

先日、都道府県警察の1つと契約を交わしたとのことで
こうしたツールが交通安全教室の場に導入されると
特に子供や高齢者にとっていいレッスンになるでしょう。


今週は『渋滞学 後編』。
先週に続いて東京大学 先端科学技術研究センター 
数理創発システム分野 西成活裕教授にお話を伺いました。

渋滞はもちろん目的地への到着が遅延するもの。
その経済的な損失は日本全体で年間12兆円という試算があること。
解決のキーワードは「車間距離40m」だということを先週お伝えしました。

それだけではありません。
渋滞は交通事故に繋がるもの。
渋滞防止は事故を防ぐことにもなるのです。

西成教授によると高速道路で起こる事故の20%は渋滞が原因。
高速道路は渋滞をして車が止まっているというイメージがないもの。
そのため見通しの悪い坂道の下で渋滞が起こっている時に
普通に走ってきた運転手にとっては、急に目の前に止まっている車が出現することになり、
ぶつかってしまうといことが少なくありません。
渋滞における、後ろからの追突事故は、非常に多いのです。

また、渋滞は運転手をイライラさせ、周りに注意が行き渡らなくなり、
追突すると二次的な事故も、もちろん考えられます。

20年「渋滞学」を研究してきた西成教授が出した結論は、
クルマの渋滞が解消できるか否かは人間にかかっているということ。
研究当初は道路を建設したりすることで渋滞をいかに無くすかを考えました。
その後は運転手の挙動を変えることによって渋滞を無くす方法を考えました。
そして、技術の革新も渋滞緩和に有効です。
今後、自動運転が実用化されれば、渋滞は今よりは緩和されることは確実だそうです。

でも、運転手が利己的な振る舞いをする社会であれば、
渋滞は増えていってしまうのではないかと西成教授は指摘します。
自分も早く目的地に着くのではなく、みんなでそうなるようにしようという、
社会的な視野をを我々が持つことができるかどうか。
そこにこそ渋滞解消の鍵があると西成教授は考えています。


東京大学 先端科学技術研究センター 
数理創発システム分野 西成活裕教授は数理物理学の専門家。
水や空気の流れを研究していました。

子供の頃から渋滞がキライだったという西成教授。
20年ほど前のある時、水や空気も「流れ」なら人やクルマも「流れ」。
水や空気に使われている数学を交通渋滞にも応用できないか?と考えました。
そして、やってみると・・・ イケる!
ということで確立してきたのが「渋滞学」です。

出版した本は売れ、メディアにも頻繁に登場。
渋滞学と西成教授は全国に知られるようになりました。
西成教授はその考えを発展させて、日常生活でムダを省く方法、
仕事の効率を上げるコツなどの提言もしています。

夏休み。
渋滞が他の時期よりも起こりやすい時期。
今週と来週は前後編にわけて西成教授の「渋滞学」をお伝えします。

数学を使って渋滞を解析した結果、わかったことがあります。
「40m」という車間距離が渋滞とそうではない状態をわける鍵だということ。

それまでの習慣だと高速道路では時速40km以下での走行になると「渋滞」の表示を出し、
一般道路では時速10km以下の走行になると「渋滞」としていたのですが、
それでは渋滞の捉え方に一貫性がない。
全てに共通する渋滞の定義は何か追求していったところ、
距離で分類したほうが早さで分類するよりも良いという事が見えてきました。

とっている車間距離が少ないと前の車がブレーキを踏めば、
追突を避けるために自分もブレーキを踏まなければいけません。

前の車との車間距離が十分にとっていれば
前のクルマがブレーキを踏んでも自分は一定の早さで走っていけます。

自分がブレーキを踏んだことで、そのブレーキを踏む行為が後ろにも伝わっていくのか。
自分はブレーキを踏まず、後続車にブレーキを踏む行為が伝わることはないのか。
ここが渋滞のポイントになります。

車間距離が40m以下だとブレーキを踏む行為が伝わっていってしまう。
しかも、それは増幅していく。
車間距離を40m以上開けていればブレ―キを踏む行為は伝わらず、
渋滞の小さい波も吸収できて、渋滞を未然に防ぐ効果もあるのです。

ただし、道路のキャパシティもあります。
1時間に2,000台のクルマが集まると渋滞は避けられません。
それは例えば、ゴールデンウィークやお盆の帰省ラッシュ。

でも、1時間2,000台に満たないのに渋滞が起きるのは、
みんなが「車間を詰めすぎているから」なのです。
それは例えば、日曜日の夕方のような、頻繁に起こっている渋滞です。

前のクルマのスピードが遅い時や、
全体的なクルマの流れのスピードが落ちてきた時は、
早く進みたいという意識から車間距離を詰めてしまうもの。
しかし、それは反対の結果を生むことになります。

1回渋滞が起こると、その渋滞を解消するのに時間がかかります。
渋滞になると、止まったり、動いたりという状態が繰り返されため、
遅くても一定の早さで走るよりも到着時間はずいぶん遅れます。
燃費もかなり悪くなって西成教授の実験では、
渋滞になる場合と、緩いスピードでも一定の速さで進める場合、
最大で約40%も燃費が違うという結果が出ているそうです。

また、渋滞でクルマの到着が1時間遅れると、
その時間で生み出せたはずなのに生み出せなかった経済損失が3,600円。
その1年間の総額は日本全体で・・・ 12兆円 !
という数字を国土交通省が出しているそうです。

覚えておいていただきたいのは、いちばんの渋滞発生ポイントは登り坂。
登り坂は渋滞原因全体のうち1/3以上を占めています。
渋滞の名所と言われている花園インターチェンジや小仏トンネル。
あれらは実はちょっとした登り坂なのだそうです。

なぜこうしたところで渋滞が起こるかというと、
運転手がちょっとした登り坂だと、登り坂だということに気付きません。
アクセルをそのままに運転するので、クルマは少しずつ遅くなる。
そうすると後続車が車間距離が詰めていた場合、衝突を避けるためにブレーキを踏む。
その後ろのクルマも車間距離を詰めていた場合、より強くブレーキを踏まなければいけない。
そうしてブレーキの連鎖となり、それが十数台続けば、クルマは止まり渋滞が起こります。

1時間のクルマの通行が2,000台に満たない場合、
渋滞が起こるか起こらないかはドライバーの面々の運転にかかっているというわけです。
個々の運転手の努力が集まれば渋滞は回避できるのです。
渋滞が減少すれば、事故の危険も減るもの。
これからの運転は車間距離40mを守るようにしましょう。

来週は『渋滞学 後編』です。





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