今週は「平成29年 春の全国交通安全運動」をお伝えする後編。
警察庁 交通局 交通企画課 中島篤司さんにお話を伺いました。

今回の全国重点は3つあります。

(1) 歩行中・自転車乗用中の交通事故防止
  (自転車については,特に自転車安全利用五則の周知徹底)

(2) 後部座席を含めた全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底

(3) 飲酒運転の根絶


それでは、この3点を細かく説明していきましょう。


【?歩行中・自転車乗用中の交通事故防止】

朝、自転車通学する子供が全国にはたくさんいます。
「自転車乗用中の交通事故」の特徴は自転車乗用中の死傷者数は16歳が最多。
時間帯では7・8時台と16時台から18時台の登下校の時間帯に集中しています。
つまり自転車通学をしている高校生は充分に気をつけなければいけません。

時間に余裕がないと、先を急ぎ、安全確認が疎かになります。
高校生になると自転車の速度も小・中学生と比べて速く
衝突した時、歩行者が受けるダメージが大きくなります。
自転車との衝突で歩行者が亡くなる、大けがを負う事故は後を絶ちません。
「保護者は、子供が朝に余裕をもって家を出られるよう配慮をお願いするとともに、
万が一の事態に備えて自転車保険への加入を検討していただくようお願いします」
と中島さんはおっしゃっていました。

ところで、周知徹底を目指す「自転車安全利用五則」は、
自転車の安全利用を促進するため、
自転車に関する基本的事項をわかりやすくまとめたもの。
その内容は・・・

1 自転車は、車道が原則、歩道は例外
       
2 車道は左側を通行
   
3 歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行

4 安全ルールを守る
 ◯飲酒運転・二人乗り・並進の禁止
  ◯夜間はライトを点灯
◯交差点での信号遵守と一時停止・安全確認

5 子どもはヘルメットを着用


この「自転車安全利用五則」をしっかりと守り、
事故に遭わない、起こさない、
安全な自転車の運転を心がけて下さい。


【?シートベルト・チャイルドシートの正しい着用の徹底】

シートベルトは後部座席を含めた全ての席での着用が法律上義務づけられています。
交通事故が起こった時、シートベルトを着用していない場合は、
着用している場合と比べて死に至る割合が約14倍です。

また、後部座席の着用率は、運転席や助手席と比較すると低くなっていて、
一般道路における着用率は、未だ36%と低いまま。
後部座席でシートベルトをしていないと、
事故のときに車外に放り出されたり、前席の運転者や助手
席の人にぶつかってしまい重傷を負わせてしまうことにもなりかねません。
後部座席を含め全ての座席でシートベルトを着用することが、
自分自身や同乗者の命を守るうえで、いかに重要かを認識しましょう。

また、6歳未満への着用が義務づけられている
チャイルドシートの正しい着用も徹底したいところです。
適正使用している場合と比較すると交通事故での死亡確率が高くなります。
6歳以上のお子さんでも体格差があります。
シートベルトを着用することが難しい場合はチャイルドシートを使いましょう。


【?シートベルト・チャイルドシートの正しい着用の徹底】

飲酒運転はいつまでたっても無くなることはありません。
飲酒運転による交通事故のうち、死亡事故の占める割合は5%を超えています。
飲酒運転による事故20件あたりに1件が死亡事故になっているわけです。
この割合は飲酒運転以外の交通事故に対して8倍以上。

飲酒終了から5時間以上経過した後の死亡事故も発生しています。
個人差はありますが、一般的には500mlのビールを飲むと、  
体内でアルコールが分解されるのに4時間かかるとされています。

車を運転する予定がある時は、運転する時間から逆算して、
飲む量や飲み終える時間を調整する必要があります。
飲酒運転による悲惨な事故を無くすため、
飲酒運転の危険性を社会で共有していくことが重要です。

交通事故は当事者にならなければ「他人事」かもしれません。
しかし、交通事故を呼び込むような行動をしてしまったら
次の瞬間には加害者になっても被害者になっても「他人事」ではなくなります。
そうなって、後悔をしている人は全国にたくさんいます。

「春の全国交通安全運動」を1つのきっかけに、
さらに交通事故の少ない社会を築いていきましょう。




今年も「春の全国交通安全運動」の期間になりました。
平成29年は今日 4月6日 木曜日 から15日 土曜日まで。
今週と来週は、その大切なポイントを追跡します。

お話は警察庁 交通局 交通企画課 中島篤司さん。

今回の「春の全国交通安全運動」の運動の基本は
「子供と高齢者の交通事故防止〜事故にあわない、おこさない〜」。
次代を担う子供の命を社会全体で守ることが重要です。
新年度が始まる時期、子供も交通ルールや交通マナーをしっかり習得することが大切。

この春から「新たに小学校や中学校に通う」
「転校してこれまでとは違う環境で学校に通う」
という児童・生徒も全国にたくさんいるなか
気をつけなければいけない数字もあります。

中島さんによると、15歳以下の交通事故死者数は10年前からおおむね半減。
しかし、昨年も74人の尊い生命が交通事故で奪われています。
そのほぼ半数が歩行中の事故によるものであり、
中でも小学1年生、2年生の児童が多く被害に遭っています。
歩行中の死傷者では7歳が全年齢層の中で突出して多いのです。

また、小学生全体の歩行中事故を見ますと、
横断歩道や道路を横断中の事故が多く発生しています。
ドライバーの方は、歩行者が横断しているときや横断しようとしているときは、
横断歩道の手前で一時停止して道を譲るなど、
歩行者を守る安全運転の徹底を中島さんは呼びかけました。

そして、子供が交通事故に遭わないために保護者にできることは何か?
いままで一人で道路を歩くことが無かった子供が慣れない道路を歩いたり、
時には一人で歩いたりすることになるといった環境の変化や、
友だちと一緒に楽しく歩いていて周りが見えなくってしまったり、
つい駆け出して車の前に飛び出してしまったりといった精神的な未熟さが、
子供が遭遇してしまう交通事故の原因になります。

そこで、いちど登下校や友達の家に遊びに行くときに通る道路を、
保護者の方には子供と一緒に歩いてほしいと中島さんはおっしゃっていました。
その際、交通量の多い交差点等危険な箇所があれば、
道路に飛び出さないなど注意すべきことを具体的に指導する。
また、判断力を養うために子供のすぐ後ろを歩く。
子供が自分で考え、危険を予測し、行動する状況を見守りながら、
丁寧に指導してあげていただきたいということです。

子供をはじめ何の罪もない交通弱者が、
悪質な交通違反を犯した運転手が起こす交通事故で
命を落としてしまうニュースは無くなりません。
自動車等を運転しながらのスマートフォン等の操作や注視、
運転中のカーナビゲーション装置等の注視は非常に危険。
画面に意識が集中してしまい、周囲の危険を発見することができず、
事故につながりますので絶対にやめるようにしましょう。

例えば、時速60キロで走っている場合、車は1秒間におよそ17m進みます。
携帯電話に着信があって、手に取り、画像を確認しようとするのに3秒かかるとして、
時速約60キロであれば、その間に約50m進むのです。
スマートフォンのゲームをしながら運転するという行為は言語道断ですが、
携帯電話を操作するちょっとした動作でも、それがいかに危険か認識して下さい。



もうすぐ新年度。
初々しい新入生が小学校に通い始める季節です。
可愛い子供たちの命を守るために交通安全の気持ちを引き締めましょう。

今回、取材したのは茨城県 つくば市にある
一般財団法人 日本自動車研究所 安全研究部の大谷亮(おおたに・あきら)さん。、
教育心理学的な観点から交通安全教育を研究している方です。

教育現場では「交通安全」に割く時間が少ないのが現状。
大谷さんは子供の年齢に合わせた交通安全教育のアプローチ方法を考えました。
どんなものかというと・・・

【小学校 低学年】


低学年生には交通安全の基本「止まること」「見ること」を教えます。
ただ、そこは低学年生、いきなり全てを教えても理解できません。
そこで「習得しにくいところ」を集中的にやります。
小学校低学年生は「右・左・右・うしろを見る」と教えると言葉通りに見ますが、
大切なのは動作をすることではなく、動作の背景に潜む危険を回避すること。
首をふった方向に車がいたかどうかを確認することを教えます。
低学年生には繰り返してそれを教えることが大切です。

実験のために「交差点」を学校につくり
見通しの悪いところに車の設定のプラカードを置いて
その絵をしっかりと見ることを伝えてみると
実験後の低学年生は右・左・右・うしろを見る時間は長くなり、
視界に入った対象物を判断できるようになりました。
前述のアプローチは成功していると裏付けられたのです。


【高学年】

高学年生になると低学年の安全安全教育には慣れてしまいます。
そこで教師として低学年生に交通安全を教える役割演技法という手法をとります。

いきなり低学年生教えるのは難しいもの。
そこで、まずは数回の集団討論。
「どうやって教えればいいか」「何を教えればいいか」
「交通事故はどのようにして起きているのか」を議論させ
ある程度の技量や低学年生への接し方を身につけた後で役割演技法を行います。
そのメリットは以下のようなもの。

? 低学年に教えることで自分の行動を客観視できるようになる

? 他者の気持ちがわかるようになる
  ドライバーの気持ちになれるというような応用性があります

? 教えるという行為によって自覚が芽生える


高学年の集団討論からの役割演技法の実験は既にひと段落。
プログラムとして提案できる結果を得ているそうです。
低学年向けも45分で出来るプログラムとしてまとめられています。

子供は1度や2度の交通安全教育では教えられたことを忘れてしまいます。
時間のない学校という枠組みを超えて、
こうした交通安全教育プログラムが地域などで行われれば、
子供が被害者となる交通事故を減らす一助になることでしょう。
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