第359回 電動キックボードの交通安全

2022/02/18
都市部で電動キックボードに乗る人が急増。
それに比例して事故や危ないシーンも増えています。
街で危ない利用を見かけたことがある方も多いでしょう。

先月下旬、警視庁が2021年に東京都内で起こった
電動キックボードを当事者とする交通事故の発生状況を公表しました。

これを受けて、今週は交通問題を中心に執筆しているジャーナリスト
中島みなみさんにお話を伺い「電動キックボードの交通安全」についてお伝えしました。





前述の警視庁発表によると2021年に東京都内で起きた
電動キックボード関連の交通事故は68件。
そのうち人身事故が18件。物損事故50件でした。

当事者は若い層に多く、68件中、20代が36人。
30代が19人。40代6人。その他 7人です。

電動キックボードは立ち乗りのオシャレ感や
歩くには少し遠い距離で利用するには手軽な乗り物。
ヨーロッパの都市部で広がって日本でも話題となり年々増えています。

2020年に大学構内での実験から始まったシェアリング事業者の電動キックボード拠点は
わずか2年で東京・大阪・神奈川・京都・福岡など全国の主要都市に広がっています。
去年の個人所有の車両販売台数は約5000台になりました。





そんな状況の中で、どんな事故が起きているかというと
例えば、昨年6月に大阪で女性に衝突したひき逃げ事故がありました。
被害者の女性は首の骨を折る重傷。
運転していた男性は運転免許証は持ってたものの
歩道を車道なみの時速30kmで走っていました。

同じ6月には東京の新宿でも無免許で赤信号を無視して
タクシーと衝突する事故が起きました。
この電動キックボードを運転した女性は無免許でした。





こうした状況を生んでしまっている原因の1つは
利用者が登場した電動キックボードの規則を正しく認識していないこと。
それには無理からぬ、混沌とした理由もあります。

電動キックボードは基本的に運転免許保持者が原付バイクと同じルール。
原付バイクと同じ安全装備と安全性能が求められます。

しかし、電動キックボードのシェアリング車両では
国内展開を目指したい事業者の働きかけにより最高速度が時速15kmに抑えられました。

その一方で道路交通法の特例でヘルメットの着用が義務ではなく任意となったり
一方通行を逆走できたり、大きな交差点で二段階右折をしなくてもいいなど
大幅に緩和された特例が認められているのです。

こうした車両によるルールの違いは、
この春にも国会に提出される道路交通法改正案で統一される見込みですが
今は個人所有とシェアリング車両では交通ルールが違うことに注意して下さい。





2021年の東京都の電動キックボードの交通違反摘発数については
個人所有よりもシェアリング車両のほうが少ないという結果が出ています。

全体で207件のうちシェアリング車両の違反は55件でした。
これは事業者が利用前の登録で免許証を確認したり
動画で道路交通法のルールの理解度テストを設定しているためだと考えられます。

しかし、去年8月には渋谷区でシェアリング車両を酒気帯びで運転した人が
救急車に追突する物損事故も起きました。
結局は運転する人の自覚が重要だということですね。





環境に優しく、ちょっとした移動に早くて便利
いい季節なら気持ちいいし、オシャレでもある電動キックボード。
ただ、今は多くの人が見かけると眉をひそめる存在になってしまっています。

利用する人はクルマやオートバイと同じように
交通ルールと交通マナーを守り、有意義に使いましょう。