第511回 冬のスリップ事故対策

2025/01/23
1年を通して最も寒いこの時期。
クルマの走行で気をつけなければいけないことの1つが路面の凍結です。
積雪がない地域でも朝早い時間帯などスリップ事故の危険はあります。





日本自動車ジャーナリスト協会の会長で
以前、氷上でクルマを走らせる実験をしたことがある
日本自動車連盟 交通安全委員会 委員 菰田潔さんによると
アイスバーンは、スケートリンクと同じようなもの。

乾いた路面であれば、急ブレーキを踏むとABSが作動して約40mで止まります。
ところが、ツルツルの氷の上では、性能がいいスタッドレスタイヤでも
摩擦力は小さくなりブレーキの効きは悪くなります。

かつて氷結した沼で100km/hで走るクルマの急ブレーキテストをしたところ
何と300mも進み、菰田さんでさえ驚いたことがあるそうです。
ここからはブレーキをかけて停まろうとしても停まれないという状況に
陥らないような運転をすることが大切だとわかります。





道路がアイスバーンになる状況や場所を覚えておきましょう。
まずは積雪がなくても外気温3度以下で路面が凍る可能性が高くなるデータがあります。

路面が凍結しやすい場所としては、1つは橋の上。
地熱が届かず、橋の下を風が吹き抜けるため
冷やされて舗装道路の表面の水分が凍ることがあります。
手前が乾いた路面だったとしても要注意。

また、トンネルの中は温度が低くなりにくいのですが、
入口や出口付近は、トンネル内の湿気が外気温が低い影響を受けて
凍ってしまうということもあって注意が必要です。
確実に先の方まで路面を見て、車のスピードを落とすことが安全に繋がります。

それから、山道では北斜面もずっと陽が当たらないので
路面温度も低く、凍ってるかもしれないと想像して車を走行させて下さい。





道路の凍結が考えられる状況でどんな運転を心がければいいか。
直線の道路を走っていて先行車がある時は車間距離を2秒取るのが世界標準ですが
それよりも長い時間の間隔をとって、自分がスリップしたり前のクルマがスリップしても
事故を回避できる確度を高めましょう。

また、カーブでの冬のスリップ事故にも要注意です。
カーブでの事故はスピードを出しすぎて外側にはみ出してしまうケースが多数。
そうならないためには、直線を走行中にしっかりスピードを落とすこと。

カーブに入ってからスピードを落とそうとすると
タイヤのグリップは曲がる」とブレーキで止まる力の両方を使うことになり
滑りやすい路面ではグリップが限界を超え、滑ってしまいます。

直線の内にブレーキでしっかりとスピードを落として
カーブに入るところではゆっくりとハンドルを切る。
出口が見えたらゆっくりアクセルペダルを踏んでいき
タイヤのグリップを分散して使うようにすることが大切なポイントです。





冬のスリップ事故対策は、まずは路面の凍結を予測する。
その上でスピードを出さず、前のクルマとは間隔を空けて、
ハンドルを急に切るような状況をつくらない。
充分に気をつけてハンドルを握って下さい。