2012年2月24日

2月24日「福島県双葉郡川内村 遠藤雄幸村長インタビュー(3)」

福島第一原発から30キロ圏内にある福島県双葉郡川内村は、1月31日に遠藤雄幸村長が「帰村宣言」を出し、「村に戻れる人から戻る」という基本方針の元、帰村を開始しました。
いま川内村は、役場機能を郡山の仮設庁舎から村へ戻し、学校や診療所を再開する4月へ向け、準備を進めています。

ただ、約2900人の村民のうち、村に戻ったのはまだ250人〜300人。
村の外で避難生活を続ける方の不安を解消するには、まだ多くの問題が残されています。

遠藤村長にお話しを伺いました。



遠藤村長が机の引き出しに忍ばせている、一通の手紙があります。

《千葉県に避難している女子中学生からの手紙》
 村長さん、私は川内村が大好きです。
 大好きな大好きな川内が、なんで、こうなってしまったの?いつも、夜、寝る前に、泣いてしまいます。
 千葉の人は、とても優しいです。こないだも友達と一緒に東京ディズニーシーに行ってきました。
 とても楽しかったです。でも私の川内に戻りたいと言う気持ちは、絶対に変わりません。絶対に!!
 川内、自分の故郷を捨てるなんて、、、絶対にしません。
 これは私の考えですが、大人になったら、川内の「ゆふね」で働いて
 大好きな川内村に住みます。まだまだ先は長いですが、川内に住むことは、絶対に変えません。
 田舎に帰りたいです。村長さんお願いします。



◆遠藤村長“手紙は応援歌そのもの”
 子どもたちは純で無垢。大人が何をやっているのか、何をやろうとしているのか、(大人の)後姿を見ながら考えていると思う。今は色んな保障で、雇用保険や損害補償で仕事がなくても生活している。日中、お父さんやお母さんが借り上げアパートや仮設にいる。子どもたちにどう映っているんだろう。子どもたちは気づいているし感じている。少々辛くてもリスクがあっても、大人の我々ができることをやろうという姿を見せるべきではないか。
 不安の中で育った子どもたちは、その家にとっても村にとっても不幸なことだと思う。そういう子どもたちは将来 川内村に戻ってこない。だとするなら福島で生きる、川内村で生活すると決めたら、津波で命を落とした家族や子どもたちを考えると、生きている喜びを伝えていく。一緒にいる家族の大切さを、しっかり伝える。こういう姿を子どもたちに見せてほしい。
 今こそ手紙を頂いた子どもにしっかり応える絶好のチャンス。今度の震災で生き方まで、価値観まで変わってくる。
 何が大切なのかということ。村って何のために存在するのか。自治体ってどうして存在するのか。除染してお金かけて苦労して、元の生活に戻るにはまだまだ時間がかかる。
 どうしてこんなに辛い思いをしながら川内に戻るのか。川内村の存在って何か。考えさせられた。故郷に戻るって理屈じゃないと、つくづく思う。

2012年2月23日

2月23日「福島県双葉郡川内村 遠藤雄幸村長インタビュー(2)」

福島第一原発の事故による全村避難から10か月。
原発から30キロ圏内にある福島県双葉郡川内村は、1月31日に遠藤雄幸村長が「帰村宣言」を出し、「村に戻れる人から戻る」という基本方針の元、帰村を開始しました。

そして現在、川内村は村民 約2600人のうち、250人ほどが村に戻っていますが、大半の方は、今も村外の仮設住宅などで生活を続けています。また、村にはまだ子どもは一人も帰っていません。4月から帰るという子もいるようですが、それもごく一部に留まる見込みです。
遠藤雄幸村長にお話を伺いました。


◆親御さんが抱える不安
 低線量とはいえ、20年後30年後にどんな健康に及ぼす影響はどうなのかという心配。専門家の間でも低線量被ばくには意見が分かれるところ。学校が戻った時に、戻る人が少なく、複式学級になってしまうのではという教育面の不安。そんなことはさせない。1人でもその学年の先生をつけることでクリアする。
 浪江や富岡、大熊に高校があり、バス通学をしていた。そこは壊滅状態。いわきにサテライトが出来ている。高校卒業するまではこちらにいたいという人もいる。放射線への不安だけでなく、子供の将来や教育環境が、戻りたい気持ちにブレーキをかけている部分がある。



川内村では今週から、学校などの除染で出た汚染土を仮置き場へ移す作業も始まり、学校の再開へ、準備が進んでいます。
しかし親の不安を解消するには、様々な課題をクリアする必要があるようです。

そして、村で人が生活を続けていくためには、もう一つ大きな課題があります。


◆雇用や除染の問題
 働く場所がないと帰れない。雇用は解消されつつある。学校跡地に50人規模の製造業が手を挙げている。水耕栽培でも10人から15人の雇用の確保になる。
 産業構造でいうと畜産林業。経済側面だけでなく文化そのもの。目の前に畑があれば手入れをする、田植えをする。
 経済活動だけではない。避難していると、朝起きた時に、「さあ今日は何やるか」と考える。これは不幸。役場で働く我々はいい。避難している人は朝起きて何をするかがわからない。家に戻れば、畑があれば体が動く。ひとつの運動。
 森林の除染は時間がかかる。木を伐採すればよいものではない。森林の機能は経済だけでない。災害の防止、遊びの空間、山のめぐみ、キノコがとれ、景観となり、観光となる。すべての木を切るという行為は自殺行為。公益的な機能を維持するためには時間がかかる。



川内村は、森林の除染作業、働く場所の問題、そして子どもと親の不安を一つ一つ、あらゆる手立てを講じて解決しようとしています。
ただそれでも、郡山市の仮設住宅で暮らす村民の心境は複雑です。
村民の方にお話を伺いました。

◆川内村民の複雑な心境
 ・診療所にお医者さんが帰ってくれば。年寄りだから。川内のお医者さんが帰らなければ私たちは帰らない。
 ・中学1年生。なるべく村に帰りたいがお兄ちゃんの高校があるから残念。
 ・農家。帰ったってしょうがないでしょ、今の状態では。だからいるだけ。何にもできない。田んぼも畑もできない。除染もしてもらったって帰ったってどうしようもない。その後のことがはっきりしていないから。辛いです。夢にも見ます。




明日も、川内村・遠藤雄幸村長のインタビューをお届けします。



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パーソナリティ 鈴村健一

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