2013年9月12日

9月12日 海と陸をつなぐ場所、防潮堤を考える(7)

引き続きテーマは「防潮堤」です。今日は「土木・工学」の視点から、防潮堤について考えます。お話は、九州大学大学院(工学研究院環境社会部門)准教授、清野聡子さん。河川や海岸の生態工学が専門で、被災地の防潮堤の建設について、支援/アドバイスを行っています。清野さんは、「自然は最大の防災施設」だと言います。

◆自然は最大の防災施設
例えば砂浜だと、波打ち際があって、砂の乾いているところがあって、砂丘があって木とかが生えていて、砂丘を越えるとちょっと低いところがあるとか、「海辺の凸凹」というものがある。それ自体が、海の波だとか津波を、砂丘がブロックしてくれるという感覚が昔はあって、砂丘を壊し始めたのは戦後のこと。戦前までは、砂丘が自然の地形として、波の勢いを鎮めてくれたり、ブロックしてくれるということがわかっていて、だからこそ砂丘に松を植えたり、竹を置いたりした。
昔の人は「線」で壁にするのではなく、海の波がどう消えていくか、水位がどう上がっていくかなどをよく見ながら考えて、海辺の地形を使っていた。逆に「コンクリートの壁で守ります」となってから、ぎりぎりまで開発しちゃっていいんだ、ということになって、全国から砂丘が消えていった。
例えば鎌倉の海岸の砂丘に道路を作る前は、夏目漱石の小説などにも出てくるが、(人々は)砂丘の裏に住んで、海に行くときは必ず砂丘を超えていく。砂丘を超えたら、わーっと海が広がっていくという。開放感もあって。そういう立体的な海への感覚があったのが、海岸道路を通して海を見ながらドライブみたいな(一種欧米風の)感覚が、もともと日本人が持っていた海岸への意識を低くしちゃっているところがある。だから、干潟とか砂浜とか砂丘とか、トータルに見て防災効果もあって、でも普段は遊びにも漁業にも使えるというところを、かなり単目的で観るようになってしまった。


砂浜にコンクリートの壁を置く「防潮堤」は、「線で守る」というやりかた。一方、干潟や砂浜、砂丘を含む、「海辺の地形全体を生かした津波対策」を、清野さんは、「面で守る」と表現していました。「線で守る」から「面で守る」へ。防潮堤を考えるうえで、今後、新たな「キーワード」となりそうです。

2013年9月11日

9月11日海と陸をつなぐ場所、防潮堤を考える(6)

今朝も、東日本沿岸で進む巨大防潮堤計画を受けて、津波工学の専門家の意見を、お伝えします。

「東日本大震災による津波は、2つの津波が重なったもの」「水の重さ・流れの速さが、津波の破壊力に関係している」

東北大学・災害科学国際研究所 副所長、今村文彦教授は、今回の津波で分かったことを、そう説明しています。では、こうした分析結果をもとに考えられる、命を守るための防潮堤とはどんなものなのでしょうか。

◆多重防御・複合的な防潮堤
東日本大震災で大きな被害を受けたわけだが、そこの復興の一つとして防潮堤が建設される。これは「レベル1」という50年から150年のあいだに来る津波の高さを対象としている。
これを超えるようなものは防ぎきれない。これが「レベル2」の考え方。代表的な構造物はコンクリートで、その耐久性は50年から100年。一度作ればそのあいだは機能するがそれ以降は作り変えなければいけない。防潮堤というのはその高さを越えなければ100%守ってくれるものだが、一旦越えてしまうと非常に大きな浸水を起こし被害を拡大してしまう。
今回のように途中で壊れてしまうと、逆に漂流物になって被害を受けてしまう。大切なのは津波の高さを軽減するだけでなく、津波の到達時間を遅らせてあげる。それによって我々が避難する余裕・時間がかせげる。丘みたいなもの。場合によっては森のような植生でも良い。ただ、木も強さに限界があるため、植林する場所が重要。ちょっと小高くしてあげる。木の根が張ることで、全体に津波の力に対して強くなる。今回の津波では立派な松の木も破壊されてしまったのは、根が50センチ程度と浅かったから。低いところに植林されているので頑張りがなかった。海岸からくる津波に対して高さがあり、抵抗があるものを多彩に配置することで少しずつ巨大津波を軽減することが大切だと思っている。


今村さんがおっしゃっているのは、複数の津波対策を組み合わせる『多重防御』という考え方です。そして、その多重防御一つとして今村教授は、「小高い丘になった森」を挙げています。番組で以前紹介した、「森の防潮堤」という取り組みも、その一つです。

また、「多重防御」という意味では、避難の仕方・ルール作りといった「ソフト面」がより重要になってくる。大事なのは、命を守ること。防潮堤に頼りっきりになるのではなく、襲ってくる災害から、どうやって離れるか。逃げるか。これが重要になってきます。
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パーソナリティ 鈴村健一

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