2013年2月7日

2月7日 被災地の医療の現状、放射線の影響〜南相馬市立総合病院・原澤慶太郎医師(4)

今週は、福島県・南相馬市から、被災地の医療の現状をお伝えしています。

南相馬市は、現在も一部の地域への立ち入りが制限されています。こうした地域では、病院が移転や閉鎖を余儀なくされ、震災前から医療現場が抱えていた問題に、追い打ちをかけています。

南相馬市立総合病院の医師・原澤慶太郎さんに伺いました。

◆看護師が足りない
お年寄りは南相馬に全部帰ってきたと考えるとユーザー数は変化していない。その中で、看護師の数が足りない状況が続いている。医師は、県外、県立医大からも来たため、14人から20人前後に増えているが、看護師は増えない。南相馬市立総合病院は、3階から6階まで病床が4フロアあるが、看護師の数が足りないため、5階まで、4フロア中3フロアしか開けられていない。ベッド数は看護師の数で規定されているため、看護師の数が揃わないと、病院にベッドがあっても稼働させることが出来ない。募集はかけているが、若い女性の看護師はあえて南相馬を選ぶことはなかなか難しい。40才〜50才で一度リタイアしたベテランの方々に来て頂くというのも一つの方法ではないかと思っている。


また原澤さんは、「患者は大勢いるが、これ以上 負担を増やしてしまうと、看護師がやめてしまう。一人やめると他の看護師の負担がさらに増える。負の連鎖が起こるため、無理はできない」とも話しています。

一方、開業医、つまり町の診療所の負担も深刻です。

◆地域医療へのしわ寄せ
南相馬に残った開業医たちにしわ寄せが来ているのは事実。(放射線の問題で)小高地区の住民が鹿島地区に移転しているため、南相馬市の北側3分の2に、人口がシフトしている。そのため開業医の先生たちにしわ寄せが来ている。非常に外来は混んでおり病院待ち時間も問題になっている。産婦人科も足りないし地域で開業医をしている高齢の先生方も、患者数の増加を受けて「ちょっとしんどい」と話している。小児科は子どもが減ったため閉院。震災の混乱の中で、一部の方々に仕事が押し寄せ、それが続いている。



地方の医療従事者不足は、被災地だけではなく高齢化が進む日本全体が考えなければいけない問題です。明日は、南相馬市の若い女性への放射線教育など、今後の取り組みについてお伝えします。

2013年2月6日

2月6日 被災地の医療の現状、放射線の影響〜南相馬市立総合病院・原澤慶太郎医師(3)

今週は、福島県・南相馬市から、被災地の医療の現状と放射線問題の今について、お伝えしています。

南相馬市立総合病院の医師、原澤慶太郎(はらさわ・けいたろう)さんは、仮設住宅で暮らす2500世帯全てを訪問し、現在も往診を続けています。休暇を利用して、仮設の集会所でお年寄りの健康相談もボランティアで行っています。こうした活動を通じて見えてきたのが、住民たちの心の問題です。

◆「寄り添う」という医療
心の問題は多岐にわたる。津波でご家族を亡くされた人もいれば、漠然とした放射能の不安に怯えている方もいる。自宅の放射線量が高く帰宅のメドすら立たない人もいる。母親の中には、「ここで本当に子どもたちを育てて良いのか」と悩んでいる方もいる。私たちは線量データの集積、内部被ばく検査の結果から、南相馬市で子どもを育てることに全く問題は無いと考えているが、こうした問題は今後も続く。
我々医師は、心のケアという形でそうした方々に寄り添うしかない。多くの方が、コミュニティの繋がりと、被災体験を共有することで乗り越えてくことができるが、我々がやるべきことは、鬱の方々を専門医につなぐこと。僕らがサポートすれば心の問題を乗り越えられそうな人を見つけてあげないといけない。


また、こうした心の問題は女性よりも男性の方が、顕著だと言います。

◆女性は強いが、男性は…。
お父さんたちの方が助けてもらうのが下手だと思う。自分から「助けてくれ、困っている」と言いにくい。仕事で一家を支え、お米など人の口に入るものを作っていた男性が、仕事を全て失い、アイデンティティが傷つけられている。一方女性はたくましく、一種の才能のようなものがある。集まって楽しそうにする力が女性にはある。では、どうやったら男性が出てきてくれるのか。何人かの男性から「日曜大工みたいなことならやってもいいぞ」という話があったので、地元工務店、木工所に掛け合い、場所・指導を提供してもらう形で毎週日曜日に“大工仕事をやる会”を1月から実施している。阪神淡路大震災の時、高血圧や糖尿病をもつ高齢の男性がコミュニティから孤立してしまい、孤独死に至るというケースがたくさんあった。同じ過ちを繰り返さないためにも、早い段階からそうした男性に関わりたい。


男性の心のケアを目的としたこの取り組み、“引きこもりのお父さんを引き寄せようプロジェクト(HOHP・ホープ)”は、当初は日曜大工講座からスタートして、将来的にはデザイン家具の販売を目指すということです。

明日は、南相馬市立総合病院をはじめ、被災地の医療現場が抱える、看護師不足などの問題についてお伝えします。
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パーソナリティ 鈴村健一

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