2012年9月19日

9月19日「宮城県気仙沼・西舞根地区。防潮堤建設の問題」

宮城県気仙沼市・唐桑半島の付け根にある「舞根地区」でホタテや牡蠣の養殖などを営む、畠山信さん。
NPO法人「森は海の恋人」の副理事長も務めています。


畠山さんが暮らす西舞根の住民たちは、その8割が高台に移転することを選択しました。
地盤沈下の結果、元々暮らしていた土地は干潟や湿地帯に生まれ変わりましたが、海の生き物が戻ってきたこの干潟を地元の方は受け入れ、「みんなで守る場所にしよう」と考えています。

しかしそんな中、地元の想いを無視した計画が持ち上がりました。
大規模な防潮堤の建設です。

畠山信さんにお話しを伺いました。


◆「海と生きる」を理解していない
 防潮堤の問題は去年の秋くらいに、国から突然降ってきた。被災地沿岸部に今までより高い堤防を全面的に作るという計画。ただ、津波を経験して学んだのは、人工物では何も守れないということ。堤防で固められていた場所もすべて津波で壊れた。作っても意味はないし、そんなものは必要ないという考え方。
 気仙沼市の復興のキャッチフレーズは「海と生きる」。意味の深い言葉ですごく好き。だが防潮堤の計画を立てた人間はここに住んでいない人間。ライフスタイルを理解していない。
 舞根地区だと9.9mの堤防で囲う計画。電信柱+2〜3mの高さ。この集落に住む人たちは全員「そんなものいらない」と言っている。守るべきものは、命や公共施設らしいけど、我々は高台移転する。守るべきものは津波が被る場所にはない。海が見えるこの景観が大好き。景観を壊すものは必要がない。
 震災後に西舞根地区は被災地で初めて、防潮堤の計画撤廃の要望書を、住民100%合意の元、宮城県知事、気仙沼市長あて両方に提出した。


受け取った気仙沼市長は、「西舞根地区は高台へ移転するため、生命の危険性は低い」として、計画の撤廃を表明しました。
しかし、行政の様々な力が作用して動き出した計画は止めるのが難しいと、畠山さんは感じています。

◆行政の問題
 先日、宮城県知事がこの西舞根集落を視察。気仙沼市長が「この集落には、住民の要望も出ているので、防潮堤は作らない方針で進めます」と県知事に説明した。県知事はノーコメントだった。一言くらいあるのかと思ったら「次に行きましょう」と行ってしまった。かなり強硬な姿勢。
 国の管理者は国交省。国交省としては「当然住民の意向に沿う形が望ましい」と言っている。一方の宮城県は、国の予算をもう取っちゃっている。使わないといけない。ひっくり返すのは難しいようだ。県はノーともイエスとも言っていない。


コンクリートの堤防ができれば、海と山は分断され、生態系のバランスが失われ、せっかくできた干潟にも影響が出るおそれがあります。

畠山さんによれば、地盤沈下で出来た干潟にはメダカ、カニやエビ、アサリだけでなく、カレイやヒラメの稚魚、そして環境省が絶滅危惧種に指定する方針のニホンウナギも確認されています。


【NPO法人 森は海の恋人 Official Website】

2012年9月18日

9月18日「宮城県気仙沼・西舞根地区。高台移転への課題」

宮城県気仙沼市・唐桑半島の付け根にある「舞根地区」で牡蠣の養殖などを営む、畠山信さん。
NPO法人「森は海の恋人」の副理事長も務めています。


畠山さんの住む西舞根地区では、全52戸中44戸が流され、自宅を失っています。
しかし住民の多くは海を恨むことなく、海が近い高台へ集団で移転することを選択しました。

畠山信さんにお話しを伺いました。


◆ひとつ進み始めた
 気仙沼・西舞根地区では、津波が来たところには家を建てられない決まりがあるので、標高40mくらい・集落の中の小高い丘に高台移転しようとしている。32戸、震災前の8割。先月から移転先の測量調査が始まり、ボーリング調査も始まったので、やっと未来に向かって動き始めたという感じ。平成26年度中には造成が完了。そこからは個人で家を建てるという流れになる。
 今まで何一つ進まなかった、やっと一つ進み始めた。先が全く見えないのはストレスだったので、肩が軽くなった。気持ちが浮いたり沈んだりしなくて済むという一つの落ち着きがある。



高台移転の土地造成に着手した気仙沼市の西舞根地区。
土地が決まれば、その後はそれぞれ自己負担で家を建てなければなりません。
自己負担を少しでも軽くするため、資金の充てにしているのが、もともとあった宅地の買い取り額ですが、課題は多いようです。


◆宅地買い取りの問題点
 高台移転に関しては、宅地の造成(インフラ整備)までは国費負担。そこに建てる家は個人負担。
 幾ら掛かるのかが胆になってくる。津波が来たところの土地を売りたいが、行政の買い取りは宅地のみ。畑や庭は買い取りの対象にならない。宅地は点在しており、それを買い上げると虫食いの行政の土地が出来てしまう。その管理はすごく大変。まとまっていればいいが、点在は行政の負担になる。そこからどうするかが決まっていない。




移転先に家を建てるには資金が必要なので、もともと住んでいた土地を国に買い取ってもらいお金を工面したい。ただ、国が買い取るのは「宅地」。庭や畑は買い取ってくれない…という現状なんです。

昨日、この西舞根地区の浸水地域にできた干潟を残そうという話をお届けしましたが、そうなると、新しく生まれた干潟も国が買い取る土地とそうでない土地がまばらに出来てしまうことになります。
浸水地域の土地利用、住宅再建の資金となる土地の買い取り、こうした声に応えるには、行政の柔軟な対応が必要です。

一方畠山さんは、他の地域で高台移転を検討している方のために、手間のかかる役所への申請の「フォーマット作り」も進めているということです。


【NPO法人 森は海の恋人 Official Website】
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パーソナリティ 鈴村健一

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