2012年6月13日

6月13日「福島のペットレスキュー(3)」

作家の森絵都さんは、福島第一原発事故で取り残された動物たちを保護する「ペットレスキュー」というボランティアを半年間にわたり取材。
そこで見た事実を著書「おいで、一緒に行こう」で発表しています。

避難先がペットを飼えない環境で、せっかく再会できた愛犬と一緒に暮らすことができないという辛い場面を目の当たりにしながらも、森さんは昨年5月から冬まで、この活動を取材しています。

◆日数が経つほど、状況は厳しくなっていった
 これだけ取材が長引くとやめられなくなる。(預かりボランティアが保護していた犬)カイとおばあちゃんの再会を見て、こんな悲しい場面で終わらせられない。もう一度圏内を見ておこうと思った。
 冬で植物も枯れ、犬猫の数も減少。2日回っても保護できない。犬も近づいてきてくれない。餌はまけても手が出せず、助けられない。猫も減って捕獲器にかからない。弱って痩せている動物が増え、冬の寒さにやられていく、命の気配が薄れていた。
 この冬を超えられた動物は少ないかも知れない。ただ、救助隊は雪が降っても、雪の上の足跡を見て、動物たちがまだ生きていると知り、やめられないと思う。手を差し伸べることで、その一匹の運命が変わる。一匹でも残っている動物がいる限り、彼女たちはあきらめないと思う。


ペットレスキューを続ける個人のボランティアの方々は、冬の厳しい寒さの中でも活動を続けたそうです。
ただ、元々は人に飼われていたとしても、日数が経つと動物たちは野生化することも考えられ、もう保護すべきではない、という見方もあります。
この見方について、森さんに伺いました。

◆動物たちが圏内で生きていること
 いま圏内に留まって、人間を警戒している、自分たちで生きている動物たち。最初は保護しなければいけない存在だと思っていたが、犬や猫はこの震災、原発事故から発生した状況を、自分たちのこととして対峙して考えているのではと思った。
 正しいかは分からない。彼らはボランティアが餌をまいて生きている。彼らが自分たちの生を謳歌していたとしても、ボランティアが圏内に入ることで生きている。
 自分たちだけで生きているわけではない。それは押さえておかないといけない。




ペットレスキューのひとつ、福島県南相馬市にある猫のためのシェルターでは、ペットフードなどの支援も受け付けています。
詳しくは下記ブログをご覧ください。
【シェルターを主宰する中山ありこさんのブログ「ねこさま王国」】
【福島の被災猫たちのシェルター「にゃんこはうす」】

【森絵都さんの著書「おいで、一緒に行こう」特設サイト】

2012年6月12日

6月12日「福島のペットレスキュー(2)」

福島第一原発事故によって、飼い主から引き離され、取り残された数多くの犬や猫などのペットたち。
作家の森絵都さんは半年間、そうした動物を保護するペットレスキューというボランティアを取材。そこで見た事実を著書「おいで、一緒に行こう」で発表しています。

ペットレスキューという活動は、一般の方が個人の意思で行っています。ですからその活動には限界があります。
森さんは、そんな状況で行われる活動には、様々な葛藤があった、と話しています。

◆ペットレスキューの葛藤
 飼い主から餌を置いてあげてと頼まれ、捕獲器を仕掛け、次の家に餌をまき、戻ってきて捕獲器を確認、と行ったり戻ったり。保護を頼まれていない猫だとしても、弱っていたら放っておけない。保護したいが面倒をみられる枠は限られている。その葛藤は常にある。
 保護するべきか、リリースするべきか。そこで毎回向き合う葛藤、ストレスがある。



現在、南相馬市には、保護した猫を一時的に預かるシェルターが、ペットレスキューのメンバーによって設置、運営されています。
ただし、ここのキャパシティは60匹。限界があります。
一方、この春に原発周辺地域も出産のシーズンを迎え、一度減った動物たちが増え始めているという状況もあるそうです。

保護した動物はシェルターのほか、「預かりボランティア」が預かる場合もあります。
これは、元の飼い主や里親が見つかるまで、動物を一時飼育するボランティアのこと。
ただ、仮に飼い主が見つかっても、必ず引き取られるとは限らないと、森絵都さんは話しています。

◆預かりボランティアと飼い主
 最初に同行取材した昨年5月末、20km圏内の小高地区で甲斐犬模様の犬(カイ)を保護、預かりボランティアの石川県夫妻が保護した。震災で夫妻も何かしたいと考え、預かりボランティアになった。
 飼い主をずっと探していたが、時間が過ぎ、飼い主が見つからないなら自分たちで飼おうと決意。しかし数週間後に飼い主が見つかった。カイをクルマで本当の飼い主のところまで連れて行くと、最も可愛がっていたおばあちゃんが泣き崩れ、カイは本当の飼い主、預かってくれた夫妻どちらにも懐いていたため、嬉しそうだった。
 結局元の飼い主は犬を飼える環境ではないため、夫妻はカイを連れて帰ることになり、元の飼い主のおばあちゃんは、カイと別れた後も、その場から動けずにいた。誰もがいたたまれない気持ちになった。



南相馬市にある猫のためのシェルターでは、ペットフードなどの支援も受け付けています。
詳しくは下記ブログをご覧ください。
【シェルターを主宰する中山ありこさんのブログ「ねこさま王国」】
【福島の被災猫たちのシェルター「にゃんこはうす」】

【森絵都さんの著書「おいで、一緒に行こう」特設サイト】
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パーソナリティ 鈴村健一

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