2019年7月17日

東京、山の手の水害 土屋信行さん(8)

今週も「リバーフロント研究所」土屋信行さんのインタビューです。
河川や治水に詳しい土屋さんに「水害への備えや避難」について伺っています。

今日は、東京の地形と水害について。
山の手と下町。二つのエリアに分けて、地域の歴史を紐解きます。

◆山の手は「昔川だった道路」が一番危ない
東京は大きく分けると山の手と下町に分かれています。大きな川として、江戸川、荒川、多摩川がありますが、いずれの川も山の土砂を運んできて、それが溜まって豊かな湿地帯を作った歴史があります。豊かということは、そこでたくさんのお米がとれるということ。氾濫するというのは必ずしも悪いことばかりじゃなくて、肥沃な土砂を平地に運んでくる。そこでお米を作れば豊かな実りが約束される低平地となる。それが下町です。
一方山の手がどうやって形成されたかというと、富士山と箱根の山の火山灰が降り積もってできた土地です。いわゆる「関東ローム層」という、水が浸みこみやすい土が重なってできています。埼玉県東部から千葉県北部一帯にかかる下総台地も同じ。ここに降った雨はほとんど大地に浸みこんでしまうので、川が形成されないんです。川というのは、浸みこみ切れない水が集まってきて「水道(みずみち)」をつくったもの。山の手のほうはほとんど大地に浸みこんでしまいますが、たまに大きな雨がふるとちょっとだけ川筋ができる。それが神田川や妙正寺川や善福寺川など小さな川です。でも昔と違うのは、ここにたくさんの人が暮らし始めて、武蔵野台地をコンクリートとアスファルトで覆いつくしてしまった。だから雨が降っても水が浸みこまないんです。でも、たくさんの雨が降ると、先祖返りして、行き場所を失って水が集まってくるのは結局、昔川だった場所にある道路。だから、山の手は「昔川だった道路」が一番危ないんです。



東京の山の手の危険地域。ここでも地名がヒントになります。「千川通り(せんかわどうり)」など、通りに「川」がついたら要注意です。また交差点の名前に「橋」とついていたら、そこも以前は川の上に橋がかかっていた証拠。つまり水が集まる場所です。「場所の歴史」と水害は、切っても切れない関係にあるようです。

パーソナリティ 鈴村健一

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