SCHOOL OF LOCK!




★ アー写!
一郎先生、新しいアーティスト写真公開になりましたね。
走り幅跳びみたいな連続写真、かっこいいです。
ああいう写真のコンセプトはどうやって決めているのですか?
こひつじちゃん
女/17歳/千葉県




山口「新しいアーティスト写真……"アー写"って言われるやつですね。これは(「新宝島」や「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」などのMVを手がけた)田中裕介監督がアートディレクターになって下さいまして、作りました。エドワード・マイブリッジっていう古いカメラマンがいて、その人が連続写真で人間が跳ぶときにどういう風になっているのかを分析したものを撮っていたのよ、昔は映像がなかったから。それを参考にして、今回『魚図鑑』という図鑑的な要素を踏まえて、魚を分析するっていう意味も込めてこういうアー写にしたわけです。ひとりひとりの連続写真とか、いろんなバージョンがあるんですよ。これはいろんなところで発表していけたらと思っています。」

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今回の授業は、サカナクション先生のベストアルバム『魚図鑑』に収録されている楽曲を、山口一郎博士が解説していきます。
先週は、[ CD:DISC 1 浅瀬 ]に収録されている楽曲を解説しましたが、今回は[ CD:DISC 2 中層 ]を紹介していきます。『魚図鑑』付属のブックレットには掲載されていないエピソードもありますので、お楽しみに。

前回の授業は [→コチラ (2018年3月22日の授業)]

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「えーっとですね、SCHOOL OF LOCK!の音学室からお届けしています、"音学"の授業、サカナクション評論家の山口一郎博士です。お元気ですか、皆さん。私は元気です(笑)。さて、サカナクションのベストアルバム『魚図鑑』が発売されて、先週はDISC 1の<浅瀬>について掘り下げていきましたけど……浅瀬なのに深く掘り下げたっていうのは、これは別にジョークを言っているわけではないんですよ、その辺は誤解しないでほしいなって思うところ(笑)。このベストアルバムは、CDのDISC1が<浅瀬>、DISC2が<中層>、DISC3が<深海>という風に分かれているわけです。今回は、中層に収録されている曲についてお話ししていきたいと思います。今日も、せっかく目の前にサカナクションの生簀が広がっているわけですから、釣り糸をぴゅっと垂らして、中層に潜んでいるサカナクションの曲たちを釣り上げていきたいと思いますよ。」

「さあ、どんな魚が釣れるかなー……」

■ サカナクション / 三日月サンセット




「はい、これは「三日月サンセット」ですね。この曲を作った時は、サカナクションの山口一郎くんは、警戒した猫のような目を毎日していて、ギラギラ……日本の音楽シーンにはこんな曲がなきゃだめだって偉そうなことを思って、「こういうのを主流にしていきたいんだ!」「もっといい曲があるだろう!」と思っていたわけですね。なので、この曲を出した時はある程度自信があったわけ。だけどね、デビューアルバム(『GO TO THE FUTURE』)にも関わらず、1800枚しか売れなかったの。1800枚しか売れなかったことに愕然としたんだねー。だけど、この曲を出したときにいろんな人が反応をしてくれたんですねー。FPMの田中知之さんとか、m-floの☆Taku Takahashiさんとか、妻夫木聡くんとか……当時、この曲を聴いて反応してくれたんです。無名の、北海道の田舎者が集まったバンドの曲を東京の人が感度よく反応してくれているというのは、ある種、メジャーっていうのは人に届ける手段としてはすごいことなんだなっていうのが分かったような曲ですね。なので、この曲から始まったのは、僕たちにとってよかったんじゃないかと思うねー……。」

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「さあ、次はどんな曲かな……釣竿をぴゅっと……そうすると聞こえてくるわけだねー……」

■ サカナクション / ワード




「これは「ワード」だな。この音の立ち上がり方は「ワード」だ。この曲はね、実は僕が全然売れていない頃……全然だめだった頃、お金がなかったんだ。その頃にビクターの人が助け舟を出してくれたの。YUKIさん……元JUDY AND MARYのね。そのYUKIさんがソロで曲を出すってことになって、インディーズの人から曲を集めているから、楽曲提供をしてみないかって言われたの。僕は、これはきたと、採用されたらしばらくスタジオ代は払えると思って、絶対に応募しますって作ったのがこの「ワード」だったんです。これは、YUKIさんが歌ったらいいだろうって思ってつくったの。YUKIさんが "僕は" って歌うの素敵やなーって。だけど、見事落選してサカナクションの曲になったわけですね。実は、自分用に書いたんじゃないけど、自分のために最終的には使われるようになったっていうちょっと異色の曲なので思い出深いですね。そういうイメージで聴いていただけたらと思います。」

「さて、次にかかる曲はどんな曲かな……」

■ サカナクション / ネイティブダンサー




「これは「ネイティブダンサー」って曲ですね。実はね……でもこれは『魚図鑑』に書いてるんだよなー……いろいろと詳しい事(笑)。そこに書いていないうんちくをちょっと言うと、この曲は登戸(神奈川県川崎市)の家で作ったんだけど、僕はアコースティックな雰囲気の曲から突然ダンスミュージックに変わる曲にチャレンジしたかったの。みんな知ってるかな……ファットボーイ・スリム(Fatboy Slim)っていう人の、「Right Here, Right Now」っていう曲があるの。あの曲は、ストリングスっぽいものが入ってから、いきなりダンスミュージックに変わるわけ。そういう要素がある曲を作りたいって、なんとかフォークとダンスを混ぜたいと思ってつくったのがこの曲なのね。」

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「さあ、次はどんな曲がかかるかな……」

■ サカナクション / エンドレス




「はい、これは「エンドレス」っていう曲ですね。この曲は本当に大変だったね……歌詞を書くのが本当に辛かった。なぜかっていうと、東日本大震災の影響をもろに受けていた頃だったんですね。「ルーキー」っていう曲をリリースするタイミングで、ちゃんと、今この時代に音楽をやっているっていうことは、この気分を、この時代をしっかり表したアルバムを作らないといけないと思って『DocumentaLy』というアルバムを作ったわけです。その中で「エンドレス」っていう曲は、振り返ったときに、「こんな事が起きたんだ」、「こんな事を思ったんだ」、「こんな連なりがあったんだ」って、未来にそんな風に感じてもらえる歌にしたいと思って取り組んだんですけど、なかなかこれは苦労して……完成しなかったですね。これが完成した時のDVDがあるの。この歌詞が出来るまでの映像のボイスメモみたいなものをつなぎ合わせたものがあるんだけど、恥ずかしいけど、書き上げた時に僕は泣いているのね。それも見てもらいたいなー。」

「サカナクションは深く深く、知れば知るほど味が出てくる……噛めば噛むほど濃い魚の味が出て、熟成されればされるほど臭いも強くなってきていい香りがしてくるからね……、さあ次。」



「これは、「なんてったって春」だね。これ、聴いてて……「ポゥ!」って言うんだよ、これ。あ、口でじゃない、口じゃないですけどね(笑)。これを入れるか入れないかで揉めたんだよね。『魚図鑑』に書いていない話をすると、僕は下北沢に住んでいたわけ。それまでは登戸っていう、東京と神奈川の間だったわけ。だけど、下北沢に引っ越すといきなり街中なの。どかんといきなり都会の中で起きた春。それに僕は感動したの。"風が強いな、春。"とか、"みんなスカートをおさえているな。"とか。"春は雷がなるんだな。"とか。都会の中で見る春に僕は感動したんです。赤いつつじの花がバーッと咲くんです。まだ冬の気配がするのに……北海道なんて、雪が溶けて、雪が残っている中に見えるふきのとうとかだから。それが、街中につつじがバーッと咲いているのを見ると、なんだか不思議だなって思って、これを歌にしようと思って作ったのが「なんてったって春」。」

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「じゃあ、そろそろ最後の1匹を捕まえてアルバムをリリースしようかなと思いますね……」

■ サカナクション / 目が明く藍色




「はい、これは「目が明く藍色」という曲なの。この "目が明く藍色" という言葉は10代の頃からあったの。それは、僕が夢の中で知らない女性に「一郎くん、目が明く藍色よ。」って言われたんです。そのとき、夢で見た事をメモにとる習性があったの。だから目が明く藍色をメモに取っていたわけ。いつかこの"目が明く藍色"っていう言葉を曲にしようっておもっていたんです。それが『kikUUiki』というアルバムで、「アルクアラウンド」という僕たちのヒットソングが生まれた後に、僕たちが本当に好きなものを歌にしようって完成させたのが「目が明く藍色」なんです。目が "明く" ……は、元々は "開く" だったの。目が開く藍色だったのを、サカナクションのプロデューサーである野村達矢氏が、「こっちの "明く" の方がいいよ」って言ってくれたわけ。それでこの "明く" に変えたわけです。実はね、この歌詞の一部分を縦読みにすると僕の遺書になっているの。そういったこともこの曲には隠されているんだな。まだ聴いたことがない人は聴いてみてもらいたいと思う。ミュージックビデオも素晴らしいんでね。」

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そろそろ今回の授業も終了の時間になりました。

「なかなかサカナクションのことを深くサカナLOCKS!で話すことってあんまりないの、実は。リリース時期くらいは、サカナクションのことを話すっていうのもいいんじゃないかなとも思ってやらせていただきました。いかがでしたでしょうか。サカナクションのベストアルバム『魚図鑑』に収録されている曲を釣り上げて解説するという解体ショーをお届けしましたが、CDの形態によっては、"深海" に潜む魚もいるわけだなー。その完全生産限定プレミアムBOXは、在庫切れが多い。素材にこだわりすぎて部材がないっていう……これしか作れませんっていう分しか作らなかったからね。転売とかも早速出始めているけど、お店に行ったらあるから。お店で購入してください。深海の一番底には、「グッドバイ -binaural field recording-」も収録されています。これは、公園で僕とモッチ(岩寺基晴先生)が横で歌っているっていうのをバイノーラルで体験できるっていう……『魚大図鑑(完全生産限定プレミアムBOX)』にしかついてこないから。購入して聴いてもらえればと思います。」

サカナクション先生、ベストアルバム、リリースおめでとうございます!

サカナクション先生のベストアルバム『魚図鑑』の特設サイトは[→コチラ]