今回の授業は、生徒から[サカナ掲示板]に届いたSOSに応えていきます!
こんな書き込みが届きました。
★助けて下さい!
一郎先生こんばんは!
早速ですがですが相談です。私、小学校の頃からほぼサカナクションの曲しか聞いてこなかったんです。しかも流行りとかどうも興味がなかったらしく何が流行っているとか全然わからないんです。そのせいか周りの人達と音楽とかの話が合いません!最近それを実感するばかりでどんどんどんどん寂しくなってきます。サカナクションを友達に広めてみようと思ってもどんな人に勧めるべきか分からず、流行りの曲を聞いてみようと思ってもどんな曲を何から聞くべきか分からず右往左往しているんです。どうしたらいいですか?助けて下さい!!
ちなみに私サカナクションの本当の魅力に気づいたのが1年半くらい前だったんです。ずっと聞いていたのもただふわーっと聞いているだけでした。(もっと早く気づきたかった)ごめんなさい!次のアルバム楽しみにしてます!
女性/15歳/山口県
山口「これはね……非常に興味深い!非常に興味深い症状だな。つまり、彼女はサカナクションしか聴いてこなかったがために、サカナクションの世界だけが音楽だと思い続けてきて、中学校に上がってみたら、サカナクションを知っている人が周りにいなかったっていう(笑)。「あれ……私の世界ってマイノリティ……?」っていうこの現象。こういう現象が起きるほど年数を重ねてバンドをやっているから、同じ悩みないし、近い悩みを持っている生徒は他にもいるはずだと思う。電話してみましょう。」
山口「もしもし。サカナクションの山口一郎です。」
ろんきち「もしもし。ろんきちです。」
山口「ろんきち、サカナクションを知ったきっかけは何ですか?」
ろんきち「小学校の頃、母がサカナクションのアルバムを買ってきて、車の中でずっと聴いていました。」
山口「何のアルバム?覚えてる?」
ろんきち「6枚目の……」
山口「はいはい。サカナクションの『sakanaction』か。サカナクション以外の音楽はそこからあまり聴いてこなかったの?」
ろんきち「いや、流れていたんですけど……あまり聴いていなくて。外をぼーっと眺めていることが多くて。」
山口「(笑)」
ろんきち「うちの家族はみんな流行っているものとかにあまり興味がない感じの人たちなので、何が流行っているのかとかあんまり話さなかったんです。」
山口「あー。ろんきちは音楽を聴く場所っていうのは家が多かったってこと?」
ろんきち「いや、車の中で流れている音楽を何回も何回も聴く感じでした。」
山口「ほうほう。今、中学生?」
ろんきち「中3です。」
山口「ちなみにさ、ひとりでも「サカナクション私も好き!」っていう人いた?」
ろんきち「あ、塾の先生が……」
山口「ははは!(笑) 塾の先生がサカナクション好きだった?」
ろんきち「はい。」
山口「ちなみに、ろんきちはサカナクションが好きなの?好きになったの?」
ろんきち「めっちゃ好きです。」
山口「ははは(笑)。それは嬉しいねー。」
山口「サカナクション以外の音楽で好きな音楽はあるの?」
ろんきち「あー……米津玄師さんの「春雷」が好きです。」
山口「はいはい……ろんきち、多分、性格は暗いよな?」
ろんきち「(笑)」
山口「暗いものに惹かれる傾向にないかな?サカナクションを好きな人って、性格が暗いとかじゃなくて、心の中の影の部分を愛している人が多い気がするんだよね。米津くんを好きな人にもそういう傾向があるよね。」
ろんきち「あー。」
山口「だから、底抜けにぱーんと派手に明るいものよりも、どこか影を感じるものに自分を投影しやすいっていうか……そういう感じがするけどね。」
ろんきち「クラスの人にすごく米津さんが大好きっていう人がいるんですけど、その周りの人と比べてみたらめちゃくちゃはしゃいでいる感じの人ではないなっていうのは思います。」
山口「(爆笑)……さすが、冷静だな。いいぞー。」
ろんきち「(笑)」
山口「先生も、実は中学校の頃とか高校生の頃もそうなんだけど、自分が本当に好きだと思っていた音楽を周りと共有できなかったんだよね。同じように好きだっていう人はいなかったし、小学校の頃なんて特に、みんな光GENJIとか……今でいう、嵐みたいな……そういうものをみんなが好きだっていう中で、先生は友部正人っていう、暗いフォークシンガーの音楽が好きだったり、イルカさんっていうフォークシンガーだったりとか、そういう音楽をひたすら弾いて歌っていたから。やっぱり共有できなかったんだよね。でも、光GENJIの曲を聴いてみたり、他の人の曲もみんなが聴くから自然に聴くと、その中で自分が好きなものが何曲か見つかったり、自分が好きなミュージシャンが1人、2人……ってわかってくるんだよね。この曲だけ好きとか、そういうのが見えてきて、自分の傾向が見えてくるっていうか。」
ろんきち「ほー……!」
山口「周りと共有したいっていう気持ちがあるんだったら、聴いてみてって言ってみてもいいと思うけど、入ってくるものも、何でもいいからとりあえず自分の中に通してみて、引っかかるものがあったら、"この人が好き"っていうよりかは、"この曲は好き"、"この曲は好きじゃない"とかを振り分けてみると、もっといろんな音楽が見つかっていくきっかけになると思うね。」
山口「ちなみに、サカナクションで好きな曲は何?」
ろんきち「「蓮の花」の、"苦しむ僕を引っ張り上げてよ"のところが……」
山口「ははは!(笑) 芥川龍之介だな。」
ろんきち「すごい……沁みます……。」
山口「ふふ(笑)。そっかー。そうだなー……でも、小学校の頃にサカナクションを聴き続けていて、今サカナクションがすごく好きだっていうのは、サカナクションってある種ちょっと大人の人が聴く音楽だと言われているんですよ。世の中的には。」
ろんきち「へー……!」
山口「でも、ろんきちは15歳でそこに食い込んでいるわけ。つまり、中学生でありながら、もう社会人並みの音楽知能指数を持っているっていう考え方ができないこともない。だから、いろんなものを聴いても理解できるはず。」
ろんきち「その……具体的に誰を聴いたらいいっていうのはありますか?」
山口「ほー……ちょっと待てよ……」
ろんきち「誰から聴いたらいいのかっていうのが……」
山口「あー……そういうことね。でも、中学生に何をおすすめするかって結構面白いね。」
山口「スピッツは?」
ろんきち「……わからないです。」
山口「あのね、スピッツは『ハチミツ』ってアルバムから聴き始めたらいいと思うよ。」
■ スピッツ / 涙がキラリ☆
山口「『ハチミツ』は、1995年のアルバムなんだけど。先生たちが高校生の時かな……このアルバムはきっと好きだと思う。」
ろんきち「聴いてみます。」
山口「聴いてみて。あとね……そうだな……小沢健二、オザケンさん。『LIFE』とか。」
■小沢健二 - ラブリー
山口「これ……本当に好きだったな、先生。小沢健二さんの2枚目のアルバムで、1994年に発売されている。先生たちの世代の青春だよね。スピッツも小沢健二さんもね。サカナクションが理解できているなら、オザケンさんの世界観もスピッツの世界観も理解できると思うな。良いよ、本当に。」
ろんきち「ほー……!」
山口「先生が小学校とか中学校、高校の時に影響を受けたのは、小沢健二さん、スピッツ……あと、ユニコーン。」
ろんきち「ユニコーン?」
山口「ユニコーンっていう……奥田民生さんってわかる?」
ろんきち「……。」
山口「わかんないか。あのね、ユニコーンっていうバンド。先生がすごく好きなのは、「デーゲーム」っていう曲。あと、「すばらしい日々」っていう曲。」
■ ユニコーン 『すばらしい日々』
山口「これはね、めちゃくちゃかっこいいんですよ。歌詞の世界観はまだろんきちはわからないかもしれないな。会社員とか、新入社員とかの感じ……大学生、社会に出たての人たちがぐっとくる感じなんだよね。でも、多分聴いたら分かると思う。」
ろんきち「はい。」
山口「あと、なんだろうな……あと……90年代の洋楽だと、やっぱりOasis。「Wonderwall」っていう曲。」
■ Oasis - Wonderwall (Official Video)
山口「これも懐かしいねー……これはすごく影響を受けたね。僕らの世代はみんな、ロック好きは絶対聴いていたって感じかな。あと、ちょっと変則的で、苦手な人も多いが、僕らの時代では伝説的だったRadioheadだよね、オルタナの巨匠。Radioheadの『OK Computer』っていうアルバムがあるんだけど、僕はそのアルバムに影響を受けて「目が明く藍色」っていう曲を作ったんだよね。」
ろんきち「あー。」
山口「「Paranoid Android」っていう曲があるんだけど。」
■ Radiohead - Paranoid Android
山口「これも聴いたり歌詞の訳を見たりするのはおもしろいかもしれないね。これはもう、研究するために聴いていた感じだったけど。」
山口「これくらいかな。」
ろんきち「聴いてみます。」
山口「聴いてみて。で、どれが自分に刺さったか。結構今のはスタンダードパターンだから。もうちょっと難しいのでも大丈夫って言ったらまた教えるからさ。ふふふ(笑)。」
ろんきち「ありがとうございます。」
山口「でも、今目の前にある新しいものだけじゃなくて、音楽を探す時にルーツを探っていくっていうのもきっと音楽の聴き方のひとつとしてあると思うんだよね。そこを調べていくっていうのも、音楽を探す遊びとして見つけてみると面白いかもしれない。是非自分が好きな音楽を見つけてくれたら嬉しいなと思います。」
ろんきち「はい。」
山口「でも、本当にサカナクションを応援してくれてありがとうございます。」
ろんきち「いえいえ……」
山口「これからも聴いてもらえるように頑張るので。ライブも遊びに来てくださいね。」
ろんきち「はい。」
山口「それじゃ、またね。バイバイ。」
(♪友部正人「まちは裸ですわりこんでいる」が流れてきて)
「今回の授業も、そろそろ終了の時間になりました。……って、友部正人!(笑) まちは裸ですわりこんでいる……この表現に僕は小学校時代、「美しいな。こんな風に言葉を使いたいな。」って思ったんですよ。そんな小学生だった僕、6年ぶりにアルバムを出します。でね、アルバムが出るということもあり、このサカナLOCKS!……4月でひょっとしたらみたいな判断が協議されているということで……。今回はここまで。」