『卒業ソングの名曲「なごり雪」のカバーを聴き比べ!』

SCHOOL OF LOCK!

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聴取期限 2020年3月7日(金)PM 11:27 まで



山口「はい、授業を始めますから席についてください。」

江島「Twitterを開いている生徒はTwitterを一度閉じなさい。Instagramを開いている生徒は、サカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。」

山口「今回も副担任の江島先生と一緒にお届けします。」

江島「はい、副担任の江島啓一です。」

山口「それでは、授業内容を黒板にお願いします。」

江島「はい。」

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山口「まもなく卒業シーズンがやってきますね。今回は、卒業ソングのひとつ、イルカ先生の「なごり雪」の授業をお届けしたいと思います。お前、知っているか?」

江島「聞いたことあるよ。」

山口「これは僕が小学校5年生の時に初めて弾き語りをした曲なんです。人生で初めてですよ。」

江島「初めてのカバー?」

山口「そう。もともと、1974年……今から45年以上前にリリースされた、かぐや姫っていうフォークグループの楽曲です。それをイルカ先生がカバーしたのが1975年。そこから数多くのミュージシャンがカバーしてきた日本の卒業ソングのひとつ……これ、卒業ソングなんだね。俺はもうちょっと恋愛の曲なのかなと思ってたけど……ませてたから(笑)。」

江島「ふふふ(笑)。」

山口「ちなみに、イルカ先生の「なごり雪」の編曲は、松任谷正隆さんですから。」

江島「そうなんだ!知らなかった。」

山口「そうですよ。知らなかったかね。45年も前にリリースされた曲なのに、生徒の皆さんも聞いたことがあると思う。何かと流れているし、誰かがカバーしていたりするからね。私もね……この間ちょっと弾いてみたら、忘れちゃってたけど(笑)。」

江島「ちょっとちょっと、思い出してください(笑)。」

山口「ふふ(笑)。思い出せるくらいです。小学校5年生で「なごり雪」を歌うっていう変な違和感に、当時、実家は喫茶店をやっていたんだけど、そこの皆さんには好評でしたよ。」

江島「え!お客さんに聴いてもらっていたの?」

山口「そう。親父が『おい、お前ら。息子は、ギター弾いて「なごり雪」を歌うんやぞ。みんな聴いたってくれや。』って。だから「はい。」って。」

江島「そういう感じでね(笑)。」

山口「卒業ソングって、今と昔ではぜんぜん違うと思うんです。僕は曲を作る人間なので、お前みたくドラムをポコポコ叩いているだけの人間じゃないから。」

江島「うんうんうん、はいはい(笑)。(聞き流す)」

山口「世の中的なことをちゃんと俯瞰で見ながら考えているんですけど、昨今の別れと我々の時代の別れの種類は違うと思う。転校とか、恋愛の別れもそうだと思うけど、僕らの時代はインターネットがなかったし、持っていてもPHS(携帯電話)とかだったでしょ?小学校の頃なんてPHSすらなかった、家の電話だったじゃない。」

江島「そうだね。」

山口「だから、誰かが転校すると、"今生の別れ" だったじゃん。」

江島「電話番号変わっちゃうしね。」

山口「そう。お別れ会は切ない想いだったでしょ?」

江島「切ない想いだった。」

山口「僕もね、小学校6年生の時にすごく好きになった子がいたのよ……今、何してるのかなー……彼女が中学校1年生の時に転校することになったの。僕はすごく好きだったし、向こうも僕のことを好きだったと思う。別に言わなかったけど。で、友達が、「山口、あの子転校して、違う中学校に行っちゃうんだよ」って聞かされて……俺、行ったもんね。家の前まで。」

江島「会いに?」

山口「うん。転校するっていう春休みに。ピンポンは押さなかったけど、家の前まで行った。」

江島「会えたの?」

山口「会えなかった。」

江島「会えなかったんだ……」

山口「もう、春休みに入ってから転校するって知ったから、お別れもちゃんと言えないまま……それっきりじゃん。「外に出てきてよ」ってメールすることも出来ないし、「頑張ってる?」って連絡することも出来なかったけど、今は、SNSだったりLINEだったりがあるから、別れといっても、"繋がっているけど連絡を取らない"っていう別れでしょ?」

江島「そうだね。」

山口「だから、卒業の別れや重みも今と昔では違うから、この「なごり雪」っていう曲の響きも、今の人たちと僕らでは違うんじゃないかと思う。」

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山口「私たちが知る、今生の別れの時代に作られた別れの曲「なごり雪」は、今まで本当にたくさんのミュージシャンにカバーされてきたんですね。今回のサカナLOCKS!は、僕の思い出の曲でもあります、「なごり雪」聴き放題の授業を……なごり雪ざんまい!」

江島「(笑)」

山口「(両手をパンとやって……) 雪ざんまい!」

江島「ははは!(笑) 見せてあげたいわ(笑)。」

山口「初めてやったわ(笑)。では、江島副担任、頼む!」

江島「どの曲がいいんだろうなー……(リストを見ながら)カバー曲がいっぱいある。例えば、岡村靖幸さん。」

山口「おー、岡村さんの「なごり雪」!次は?」

江島「松浦亜弥さん。」

山口「あやや!?ズバッとホリデイ?」

江島「ははは(笑)。次は、徳永英明さん。」

山口「わー、透明感ありそう。あとは?」

江島「平原綾香さん。」

山口「あー、綺麗だろうねー。」

江島「あとは、坂本冬美さん。」

山口「演歌!」

江島「で、中森明菜さん。」

山口「これはドキドキするね。」

江島「次は、五木ひろしさん。」

山口「はぅ〜〜〜(小節を回すモノマネ)」

江島「ふふふ(笑)。で、秦基博さんと元ちとせさんの共作。」

山口「あー、なんか想像できるね。」

江島「あとは、ORIGINAL LOVE。」

山口「田島(貴男)さん!これは気になる。」

江島「次は、河村隆一さん。」

山口「おー。歌い上げる系なのかな。」

江島「次は、PENICILLIN。」

山口「わー、懐かしいねー。PENICILLINもやってるんですね。」

江島「そして、クリスハートさん。」

山口「クリスハートさんねー。」

江島「あと、X JAPANのToshiさん。」

山口「これは気になるね!」

江島「で、最後はもう人ではない……初音ミク!」

山口「人以上だよ。人以上人間未満だな。」

江島「どれが気になりました?」

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山口「まず僕が聴いてみたいのは、徳永英明さんかな!」

江島「おー。」

山口「ミュージックステーションで、僕、隣の席に座りましたから。」

江島「そうだねー。」

山口「不思議な光景だったんです、あの時。「忘れられないの」で出演した時だったから、僕は杉山清貴さんのコスプレのような衣装の横で、徳永英明さんのとこに座るっていう……超異様な光景だったのよ。だから、忘れない。徳永英明さん、大好き!聴いてみよう!」




山口「リバーブ多めだね。」

江島「(イントロから)ぜんぜん違うねー。」

山口「(♪時計を気にしてる〜を聞いて) 時計、気にしてるわ……」

山口「でも、オリジナルに忠実な方ですね。ちょっとハスキーになるところがいいんだよねー、声を張った時にね。これはコントロールできない味だよね。」

江島「いいねー。」

山口「これが、ひとつの基準になるよね……"雪ざんまい"の!」

江島「雪ざんまいのね(笑)。なごり具合はどのくらいなの?」

山口「なごり具合は……これはもう、100%じゃないですか?」

江島「お!」

山口「イルカさんも大満足!そもそも、イルカさんもカバーなんだけど(笑)。かぐや姫も大感動!……勝手に言ってる(笑)。」

江島「予想ね(笑)。」


山口「じゃあ、次ね……中森明菜さん、行ってみようかな。これもまた独特のボイスだからね。しかもこれは2009年の曲だから、結構ハスキーな感じですよ、多分。」

江島「なるほど。」

山口「聴いてみましょうか。」

♪ なごり雪 / 中森明菜

山口「おー。やっぱり、(中森明菜さんの楽曲らしい)クラシックギターのこの感じを入れてくるね。」

江島「おー。」

山口「テンポが速いね。大人な雰囲気。イルカさんとは違う、都会の「なごり雪」だよね。ちょっと大人な……BARで「なごり雪」って感じ。」

江島「アダルトなんだね。」

山口「アダルティだね。でも、ちょっと前向きなんだよね。」

江島「確かに。」

山口「これ、なごり具合で言ったら……80%かな。まあまあ。」

江島「結構ななごり具合だね。」

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山口「じゃあ、次いこうか。ちょっとこの辺で変えていこうか。」

江島「変えていこう。」

山口「……松浦亜弥!めっちゃホリデイな「なごり雪」が聴けるかもしれないですよ。」

♪ なごり雪 / 松浦亜弥

山口「……あれ?」

江島「めっちゃホリデイじゃない。」

山口「めっちゃホリデイじゃないねー。」

江島「卒業ソング感があるよ。」

山口「やっぱ、「なごり雪」っていう曲の完成度と、雰囲気にみんな持っていかれるんだね。」

江島「あー、引っ張られているんだ。」

山口「専門的な話をすると、Aメロの終わりしなのコードがメジャーで終わっているから、切ないんだけどちょっと前向きになるから、歌い方でそのニュアンスをどう出せるか出せないかで、この曲の切なさ具合が変わるのよ。」

江島「先生!」

山口「すごい難しいのよ。だから、あややが歌うと……なんか人懐っこくあややって呼んじゃったけど(笑)。あややが歌うと、キュン感が出るよね。メジャーな歌い終わりでの歌いやめ方が、キュンになるんだよね。」

江島「そもそもの、イルカ先生のはどうなんですか?」

山口「イルカ先生のトーンがカラオケずれしていないから……しゃくらないで、ふっと落ち着くから、メジャーのところでも哀愁が出る。」

江島「あー。」

山口「そうやって意識して聴いてみ?……なんか分かる?」

江島「ニュアンスが出るね。」

山口「ちょっと合唱コンクールっぽくなるっていうか……。」

江島「ほー……。」

山口「よく出来た曲なんですよ。歌い手さんによって、キャッチー度だったりが変わるよね。」

江島「切なさだったりね。」

山口「これは、なごり具合で言ったら……まあ、イルカ具合で言ったら30%。」

江島「イルカ具合!?」

山口「イルカ具合で言ったら30%くらいですけど、なごり具合で言ったら、まあ……60〜70くらい。雰囲気を壊さないようにしようっていう、尊敬の念を感じるよね。」

江島「なるほど。忠実系ね。」

山口「うん。なごりイルカの2つのエッセンスが……」

江島「なごりイルカって言いました?(笑)」

山口「なごり具合とイルカ具合は、ショートケーキで言ったらイチゴと生クリームですから。それを、チョコに変えて、ラズベリーに変えるっていうことは難しいんだと思うよ。」

江島「あー、なるほどね。」

山口「でも、まだ可能性はある。なごり具合とイルカ具合を壊している曲があるかもしれない。」

江島「ぜんぜんなごってない人もいるかもしれない。」

山口「調べてみよう!」

江島「誰だろうなー……」

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山口「あ、初音ミクとか、結構いっちゃってるんじゃない?」

江島「どんな感じなんだろう?」

山口「グリットに沿った感じの……」

♪ なごり雪 / 初音ミク カバー (melodylights作)

山口「(イントロを聞いて) あれ……!?」

江島「結構なごってますよ、先生!」

山口「嘘やろ……!」

江島「大分なごってるんじゃないですか?」

江島「ちなみに、この初音ミクの曲は、melodylightsさんが作ってYouTubeに上げていたものを、許可を取って流させてもらっています。」

山口「むしろ、寄せているよね?……メカイルカじゃん!(笑)」

江島「(笑)」

山口「メカゴジラみたいな……メカイルカだよ!」

江島「忠実系じゃないですか?」

山口「おー。なるほどね。これは……山口的な批評をするならば、「なごり雪」という曲が持つ哀愁だったり、別れのセンチメンタリズムを、初音ミクというデジタル的なもので歌うっていう……つまり、メカイルカを再現するっていうことには、いろいろな表現が内包されていると思う。つまり、感傷的なものっていうのは、人間から生み出される歌声だったり、リズム以外のものでも表現できるのかっていうチャレンジ精神が入り込んでいるよね。そういったアート作品という側面もある。つまり、AIが作り出した音楽に人間は感動できるのか否かっていう……」

江島「そんなに深いんですか、このカバーは!?」

山口「いや、あると思う。その観点はあると思う。大げさに言うとね。」

江島「でも、僕は哀愁を感じますよ。初音ミクさんに。」

山口「感じる?……僕、感じないな。あの……哀愁を出そうとしているっていう意気込みは感じるけど、本当の哀愁は感じないな。」

江島「そこね……そこは難しいなー、確かに。」

山口「多分、現代の子たちは、こういうものに対する抵抗がないというか……要するに、第一世代だから、ここから入っているから、この表現方法に対しても感情の起伏を生み出せるっていう。これは、僕たちが理解しようとしても出来ないことだから、そこに対して理解しても、同調しなくていいとは思う。」

江島「なるほどね。」

山口「これはもう……奥が深すぎたね、今日は。」

江島「すごいですねー。「なごり雪」1曲でこんなに楽しめるんですね。」

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山口「じゃあ、最後に……僕らのスター、岡村靖幸さんの曲を聴こう。岡村さんはやってくれていると思う!」

江島「どのくらいなごってるのかな?」

山口「なごり具合をはちゃめちゃにしてくれると思うよ、ファンキーに!聴いてみたい!」

江島「聴いてみよう!」




山口「いいねー。」

江島「おー(笑)。」

山口「こういうのを待ってたねー。」

江島「全然コードが違うよ。」

山口「あー……これはね、伊勢正三さんに対しても、かぐや姫に対しても、イルカさんに対してもリスペクトを感じながら、岡村靖幸という「なごり雪」を完成させているよね。」

江島「うん。」

山口「だけど、イルカ感っていうよりは、玉置浩二感がある(笑)。」

江島「(笑)」

山口「イルカ度は5%くらいだけど、玉置浩二度は70%くらいきているかな。」

江島「結構高いね(笑)。」

山口「なごり具合は、5……10くらい。」

江島「うん、うん。」

山口「新たに加わった、玉置浩二度が高くなってるけど。」

江島「それがオリジナリティに繋がってるってことかな?」

山口「すごいよ。それが岡村靖幸度合なんだと思う。これがある種、本当のカバーですよ。勉強になりましたね、今日も。」

江島「はい!」

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さて、卒業ソングの名曲「なごり雪」のカバー聴き比べ、
そろそろ授業終了の時間となりました。

山口「江島先生、カバーってあんまりやったことないだろ?」

江島「ないですよ。アマチュアの頃に、コピーバンドはやってたけど、カバーはない。」

山口「僕は、仕事でやっていますから。「風をあつめて」を、オロナミンCのCMでやりました。」

江島「やりましたねー。」

山口「今回は、サンボマスターのカバーアルバム『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』で、私1曲カバーをやりました。黒瀧(節也)さんと一緒にダブルネームでやりましたけど……僕的には(オリジナルと)全然違うよ。」

江島「サンボ度低めってこと?」

山口「サンボ度低め。このサカナLOCKS!でもいつかオンエア出来たらいいなと思います。サカナクションでも今後カバーをやる機会があるかもしれないですから。」

江島「やりたいです。」

山口「勝手にやったらいいじゃないのよ。」

江島「ちょちょちょっと!(笑) 一緒にやりましょうよ、一緒に!」

山口「ふふふ(笑)。」




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