芸術の秋。山口一郎先生が感じる身近な芸術とは?

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聴取期限 2020年10月23日(金)PM 22:00 まで





山口「Instagram Liveとかで使うミキサー……YAMAHAの。YAMAHAのミキサーってスマホみたいなサイズじゃないじゃないですか。雑誌1冊分くらいの。箱にも入っていたんですよ。……なくなったんですよね。家にあったのに。」

職員(カヲル先生)「えー!」

山口「僕、3日くらい前から持病の群発性頭痛がまた発症しちゃって。あれ、とんでもない痛さなんですよ。小人が目の裏にいて、針で、えいっえいっ……って自分の心臓に合わせてチクチクしてくるみたいな痛さなんですよ。それが3日くらい前から発症していて……で、僕、(Instagram Liveの)セッティングしないんですよ。

レコーディングエンジニアの浦本(雅史)さんとか、マネージャーのサバちゃんとか、ヒグマとか。エジー(江島先生)が来たらエジーとか。みんなでバーっとセッティングして、準備できたらあーだこーだ言って始めるんですけど。一応、ボックスを作ったんですよ。全部そこに入れておけば、そこをパカンと開けたら始められるよっていう箱を作っておいたんです。

無印の、白い。なぜか無印は小・中・特大って言い方をするんですけど、特大はお店に行かないと買えないんですよ。なので、中をオンラインで買ったんですよ(笑)。」

職員「(笑)」

山口「それをとりあえず置いておいて、みんなここに入れておけば大丈夫だぜーっていう風にしておいたんですよ。僕は、ボックスを作るところまでで仕事は終えているから(笑)。

それ以降の話は、あなたたちの管理の問題で、ミキサーを買ったり、道具を揃えたり、環境を作るのは僕がやるから、後のことはあなたたちのことだから、僕は知らないよと(笑)。」

職員「(笑)」
山口「結局、ないってなったんですよ。ないってなって、ないままなんですよ、今も。」

職員「今も?」

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山口「今も。でもね……管理の問題じゃないですか、これ。」

職員「最後に片付けた人の問題でしょ。」

山口「そうそう、そうなんですよ。最後に片付けた人の問題なんですけど、僕の家に置いてあるものじゃないですか。だから、なくなったら僕の管理が悪いみたいなオーラをちょっと出してくるんですよ。」

職員「(笑)」

山口「これってすごい複雑な気持ちに僕はなったんですよ。群発性頭痛っていう、5大痛い病気って言われている中のひとつに入るくらいの痛みとこれから1ヶ月、へたしたら3ヶ月間、この忙しいスケジュールの中で向き合っていかないといけない状況が始まったばかりの中……

それが始まっちゃったっていう初日に、いきなり、ミキサーがない、それが見つからない……その管理が悪いのは俺だみたいな(笑)。そういう空気になっちゃったんですよ。でも、なんとか乗り切ったわけですよ。Instagram Liveも頭痛の発作も起きずに。……で、まだミキサーがないんですよ。」

職員「えー……」

(♪ピンク・パンサーのBGMが流れてきて……)

山口「また買えばいいんですよ、別に。なくなったんだったら。同じの買えるから。けどね……誰のせい?(笑)これ、誰のせい?」

職員「これを解決しないことには次に進めないのね。」
山口「そう、次のは買えない。だってね、また買ってね、またなくなった時にね、誰が持って行ったとか、どこに持って行ったのとか……何か原因があったわけじゃない、絶対に。あの……僕のせいにされてるから。」

職員「(笑)」

山口「僕も基本、なくすから。……なくすのよ。」

職員「なくすねー。ああいう、ケーブルとか機材とか。」

山口「ケーブルとか機材だけじゃなく、結構大事なものもなくすの。税金関係のものとか、書類とかね。なくしちゃうわけ。」

職員「あー、大事。……洗濯機見た方がいいよ。俺ね、この前家でケーブルなくしたの。やっぱり同じようにね、家族を疑ったのよ。……乾燥がかけられた状態で出てきたの。洋服と一緒に洗濯しちゃってたの。」

山口「あー、ある。……けど、ミキサーは、洗濯機には絶対にない(笑)。」

職員「(爆笑)」

山口「それは、絶対にない!(もしあれば、)それは完全に僕のせいですよね(笑)。……みんな、群発性頭痛って調べてみ?マジで苦しいよ。今話した内容はね、その苦しい中で起きたことだと思ってね。それで今の話を聞くと深みが増すから(笑)。」

山口「はい、授業を始めますから席に着いてください。Twitterを開いている生徒はTwitterを一度閉じなさい。Instagramを開いている人はサカナLOCKS!の[ インスタアカウント]をフォローしなさい。授業が始まりますよ。それでは、今夜の授業内容を黒板に書きます。」

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山口「今回は、身近なアートにまつわる授業をしていきたいと思います。芸術の秋ということで、アートの授業をお届けしていきたいんですが……アートって、僕あんまり言葉として使いたくないというか……何でもアートだとか、何でもアートにすればおしゃれだなとか、かっこいいなとか、そういうのを言いたがりだし、言いがちだと思うんですけど。そういう意味で、僕はアートっていう言葉とはちょっと距離を置いているんですけど。

アートって何なのかっていうのは僕にもよくわからないんですが、芸術を英語にしたらアート。なんていうのかな……野球で言ったらヒットですよ。日本語にすると安打ね。安打をヒットって言っているようなもんなんですよ。……この話はやめようか?何でも野球にしたがりだから(笑)。だから、アートは芸術を英語にしただけなんだよ。芸術って言葉を英語にしてアートにすると、ちょっとおしゃれになるのかなと思う。

けど、そもそも芸術とは何なのか、アートとは何なのかっていうのを簡単に言ったら、表現者がいて、表現したものに対して、受け取り側が精神的にとか、社会的にとか、哲学的に何か良い感覚を得られる……新しい感覚を得られたりする。その相互関係を芸術、アートと定義するならば、山口一郎先生が自分の身近にある芸術やアートとは何なのかっていうのをちょっとお話できたらなと思っております。」

「例えばね、美術館にあるような絵だったり、彫刻だったり、現代アートで言ったら、美術館にはいろいろありますけど、ごみが落ちているのかなって思ったらそれが作品で、拾っちゃったら大変……みたいな、そういったいろんな表現方法やジャンルがある中で、ちょっと距離を感じるアートもあるけども。みんなが身近にあるものの中にも、ひょっとしたらアートっていうものが隠れているかもしれない。だから、今日は私、山口一郎が、身近にあるアートを探す、アート探偵!(笑) 」

「……アート探偵、山口一郎!!」

(♪ピンク・パンサーのBGMが流れてきて……)

「(キャラに入って) どうも。アート探偵、山口一郎です。芸術の秋がやってきて、また俺の季節がやってきたな……さてさて。……あれ?これ、泥棒の音楽ですよね?!(笑)」

(♪ピンク・パンサーが止まって)

「これ、探偵じゃないですよね?(笑) ちょっと今うっかり乗っちゃったけども。なんか、しゃべっていて盗みに行きそうな雰囲気になったけど(笑)。身近なアート探偵、山口一郎。今回は皆さんの身近にあるアートを探しに行きたいと思う。どれどれ……」

「まず、そんなアート探偵、山口一郎が身近に感じているアートのひとつが、スニーカー。NIKEとかaddidasとか、古き良きもの……例えば、昔出て、もう手に入らないとかっていうヴィンテージ……そういう価値が高くなっているスニーカーとかはいっぱいあるけど、それってアートかっていうと、ただ古いもので数がないから高くなっているとか、そういったことで、それをアートと呼ぶにはちょっと違うのかなって思うんだけど。

先生がすごく大好きなファッションブランドで、メゾン マルジェラ(Maison Margiela)っていうブランドがあるんですよ。そこのスニーカーを先生はひとつ持っている。どんなスニーカーかというと、普通のぺったんこなスニーカーなんだけど、それに落書きがいっぱいしてあるんですよ。右足にも左足にも……こうやってね、今先生は履いているんだけど。ボディは普通のマルジェラっていうブランドのベーシックな形なんだけど、これにいっぱい落書きがしてあって、これを誰が落書きしたかっていうと、メゾン マルジェラのデザイナーチームの人たちが一人一人落書きしてあるの。だから、このスニーカーはこれしかないんですよ。要するに、プリントじゃなくて、手書きで落書きしているから。」

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「それがどういうことかっていうと、僕が勝手に解釈したのは、メゾン マルジェラって元々、マルタンマルジェラ(Maison Martin Margiela)っていう名前だったんですよ。マルタンマルジェラって、マルタン・マルジェラっていうデザイナーの名前がそのままファッションブランドの名前になったわけですね。ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)みたいなもんですよ。で、マルタン・マルジェラがマルジェラを離れちゃったんですよ。

音楽でいったら……平井堅さんが"平井堅"を出ちゃったみたいな感じ(笑)。平井堅は"平井堅"っていう名前だけ残して、平井堅は"平井堅"じゃなくなっちゃったの。……意味分かるかな?(笑) ファッションブランドにはそういうことがよくあるわけ。ブランド名だけ残してデザイナー本人はいなくなっちゃうけど、違うデザイナーが入ってそのブランドを残していくっていう。平井堅さんが"平井堅"を辞めたんだけど、田中さんが平井堅に入って、平井堅を引き継ぐ……みたいなことが起きているわけ。

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それで、マルタン・マルジェラは、マルジェラを抜けちゃったわけですよ。辞めたわけ。でも、マルジェラっていうブランドは残っていて、今はジョン・ガリアーノ(John Galliano)っていうデザイナーが入ってマルジェラを引き継いでいるんだけど、ブランド名が変わって、メゾン マルジェラっていう名前に変わったんですよ。つまり、チーフがいなくなっちゃったけど、その下にはたくさんデザイナーがいて、チームだけ残ってマルタンだけ抜けちゃったっていうことになっているわけですよね。

ジョン・ガリアーノっていうデザイナーは、もちろんマルジェラに入ったけど、ウィメンズ(レディース)のデザインはやっているけど、メンズの方はマルタン マルジェラのころのチームが残ってやっているっていう噂なんですよ。で、今回のスニーカーの話に戻るんですけど。」

「何人もいるデザイナーが一人ずつここ(スニーカー)に書いているっていうことは、今のメゾン マルジェラのデザインっていうのはたくさんのこういう人たちが手がけて行われているっていうひとつの証拠というか、ある種の印になっているスニーカーだと僕は思ったんですね。非常にこのスニーカーは高かったです。なんでかっていうと、これはサインだから。しかも、チーム全員のサインだから、いっぱいあるわけないじゃない。みんな、知ってるか?

サイン書くのってすっごい大変なんだよ。サイン500枚とか書いたら、本当に最後の方はわけわかんなくなってくる。でも、スニーカーに一人ずつデザイナーが書いているってことは、世界にそんなにないと思う。しかも、メゾン マルジェラの今のデザイナーたちのメッセージをひとつひとつ丁寧に描いたもの。これは非常に価値があると思うんですよね。これを飾るのではなくて、僕は履いているんだけど。それは僕の中で、ただ靴を買うっていうことだけじゃなくて、作品を買うっていう感覚でスニーカーを買ったわけですね。

つまり、僕の中での身近なアートとしてひとつ手に入れて、アートって飾っておくものも多いんだけど、僕は敢えて使うものとしてこのスニーカーを買いました。確か、すごい値段だったよ……すごかったよ。いくらだったかな……リッケンバッカー(ギター)買えるよ。YAMAHAのミキサー、6個は買える!(笑)」

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「そう考えると、諸君。皆さんの中にもそういった、お金ではなく、希少価値でもなく、思いであったり、物事が起きた中での現象としてのものってないかな?僕ね、そう思って身近なアートを思い浮かべると、卒業アルバムっていうのがあると思うんですよ。卒業アルバムって、その年に卒業した人しか持ってないじゃないですか。

東京のマンモス中学校とかだったら想像できないけど、僕が育った北海道の小樽とか、そんなに大きくない街で、クラスが2〜3クラスしかなかったりすると、60冊しかないわけじゃない、その卒業アルバムって。世界に。その60人しか持っていなくて、最後のメモ書きみたいなところに、友達だったり、みんなで"また会おうね!"とか、書いていたりするじゃない。今はそういうことやっているのかな?僕の時代はそういうのがあったんですよ。

それって、すごく価値があるものな気がするんですね。他の誰かにとっては価値がないものでも、自分たちにとってはすごくレアだし価値があるし、自分の生きてきた物語の証なわけだから。価値があるものだと思う。」

「そう考えると、自分にとっての芸術だったりアートだったり、良い瞬間みたいなものはたくさんあると思うので、美術館に行って良い作品に触れるとか、そういったことだけじゃなくて、自分が生きてきた中で、どんなものが芸術として考えられるのか、アートなものはあるかな……って考えてみたりするのはいいのかなと思う。なくなったYAMAHAのミキサーも、作品だと思えばね(笑)。」

今回の授業も終了の時間になりました。

「アートって言葉はあんまりみんな使いすぎないほうがいいと思うぞ。なんでもアートって言うといい顔はされないと思う。ただ、アートっていうものを怪訝に思ったり、距離があるものだと思わずに、先生がさっき話したような、自分の中だけで特別なものを探すっていうことも面白いことかなと思う。例えば、サインくださいって言われたりするんですよ。

それは、僕がその人のためだけに書いたものだから、そこに何か意味が生まれたりとか、それを誰かにプレゼントしてあげるとか、特別な時間を使うっていうことも大事かなって思ったりする。ただ、みんなにとってのアートっていうものと、アーティストが思うアートっていうものは多分違うから、一概にこうだ僕が言うのもかっこ悪いんだけど。僕自身もアーティストって言われるわけよ。僕は嫌なのよ。

ミュージシャンだから。アーティストって、アーティストだから。僕はアーティストなんかじゃなくて、音楽好きな兄ちゃんで、ただのミュージシャンだから。アーティストって呼ばれるには時間がかかるかなって思っています。みんなも、芸術の秋を機会に、アートについていろいろと考えてみたりするのは良いかなと思います。」

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