『授業の感想を書き込んでくれた生徒と話しました。』

SCHOOL OF LOCK!


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聴取期限 2021年5月21日(金)PM 10:00まで




山口「いやー、緊急事態宣言が延長になり、名古屋と福岡も追加になり……ライブは原則無観客ということになるのかなと思いきや、音制連と音事協とACPCっていう音楽の事業団体が、今までのライブでクラスターが出ていないとか、お客さんと主催者が協力し合ってイベントが実現できているっていうことを伝えてくれて、原則5000人までの会場キャパシティ半分でのライブは開催していいよっていう形に緩和されたんです。リスナーと主催者が協力し合うっていうことがみを結んで、実際に国の政策にまで届いたっていうのは、すごく良かったなと思って。ここで気を緩めるんじゃなく、引き締めながらやっていけたらいいなと思っています。」

職員(カヲル先生)「うん。」

山口「僕らも『NF OFFLINE』っていう、私のファンクラブ限定のアコースティックライブをZeppで行う予定だったんです。開催していいっていうことだったんですけど、我々的には延期することにしました。やっぱり、やるにしてもやらないにしても、どっちの方がワクワクするかなっていうことを基準に判断しようかなと思ったんですよ。延期にする部分でのワクワクってどんなものがあるかなって考えた時に、いろんなアイディアが出てきたんですよ。僕だけじゃなく、チームサカナクションの仲間からも。どうワクワクするものを見つけたかっていうと、『NF OFFLNE』っていうZeppで開催する予定だったライブって、コロナ禍でInstagram Liveでみんなと繋がっていたことが僕の支えになっていたし、その光景をライブハウスで観てもらおうというもので。僕の部屋のセットを作って、いつもこんな感じのところでやっていたんだよってアコースティックで歌っていくっていう設定だったんですよ。だったら、延期になった分、先に"ONLINE"をやろうと。『NF OFFLINE ONLINE』(笑)。」

職員「うん……ん?」

山口「そもそも我が家でInstagram Liveしていたことを客観的に観てもらおうっていうのが『NF OFFLINE』のテーマだったから、じゃあ、オンラインでInstagram Liveをやっている光景を外から観てもらおう……ややこしいでしょ?」

職員「はい(笑)。」

山口「つまりは、いつもInstagram Liveをやっている部屋のセットを作って、Instagram Liveをやっていた姿をリアルで観てもらおうっていうのが『NF OFFLINE』っていうライブのコンセプトだったんだけど、」

職員「そこは理解。100%理解。」

山口「そこは理解できたでしょ?まず、僕の部屋からInstagram Liveをやるんですよ。で、その画面の横とか後ろとか部屋の角とかにカメラがあって、それを客観的に観れると。かつ、そこに演出もある程度入るわけですから。オンラインの表現だから。やり始める前も、後も、物語はあるじゃない?「さよならー!」って切った後に、ふっと素にかえっている姿とか、そういうのとかも演出をしてひとつの映画とかドラマを観るように、演出されたものを観れるっていうのをオンラインでやろうかなと。」

職員「なるほど。有観客のライブは違う日ってことですか?」

山口「そう。有観客は有観客で、Zeppでやります。」

職員「別日にそういうことをやろうとしているっていうことね。」

山口「そう。延期している間に、先にオンラインでやろうと。『NF OFFLINE』の始まりの物語をやろうかなと。だから、何も知らずにInstagram Liveを見ている人もいて、オンラインライブを観ている人はすごく演出されたものを観ているんだけど、Instagram Liveは1カメのものをただ見ているだけっていう。そういうことをやろうっていう話をしていたら盛り上がって、こっちの方がワクワクするなって。安心だし、ワクワクするし……そう判断しました。」

職員「はい。」

山口「実験的なことって、やっていくことで、それを観て新しいことを見つける人もいるかもしれないし、サカナクションはこれからもそういった選択をしていくんだろうなって思います。興味のある人は是非観てもらえたらと思います。」

■ NF OFFLINE 特設ページ [→コチラ]

山口「はい、授業を始めますから席に着いてください。Twitterを開いている人はTwitterを閉じなさい。Instagramを開いている人は サカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。今夜のサカナLOCKS!は、またリモートでお届けしています。音質とか良いと思うんだけどな、今までよりも。詳しくはいつかまた解説できたらと思っています。」


さて今回の授業ですが、少し前の授業で、一郎先生が『最近、音楽について思っていること』を話しましたが、その授業に出席した生徒から、感想が届きました。まずはその書き込みを紹介します。

悲し

今日の放送、悲しかった。
コロナ渦でのライブ、僕は複数行きましたけど、声出せないもどかしさはあるけど、どれも充分楽しかったです。好きなミュージシャンに会えて、その音楽にどっぷり浸かって踊って、やっぱりライブってすごい、楽しいって思えました。大好きなミュージシャンがステージから「ちゃんと伝わってます、ありがとう」って言ってくれたときは本当に涙が出そうになりました。
お金がない人はライブ行けないことに一度しようなんて提案をする人の音楽、これからどう信じたらいいか分からない。
音楽を売ってほしいです。
それだけでは足りない厳しい世界なんだろうとは思います。
でもミュージシャンとして、本当は最も先に出来ることがあるはずなのに、どうしてそんな提案なんだろう。
どうして独り言で済ませてくれなかったんだろうと思いました。

てるっぽう
男性/17歳/東京都


山口「これは、先々週の授業( [2021年4月30日の授業])で僕が言ったことですよね。コロナ禍の有観客ライブについて僕がいろいろ話していたんだけど、一生続かないという前提の考えとして、少ない人数にしてチケット代を倍にして、お金に余裕がある人が今のコロナ禍のエンターテイメントを回す。そして、誰でも体験できるような環境になったらまた価格を戻す。リアルに行けない人たちの気持ちをどう解消していくかを考えていくことがポジティブで建設的ではないか……っていうような。今言ったのはダイレクトな言い方だったけど、そんなニュアンスの話をしましたね。そういう話をしたことに対しての書き込みだったと思うんです。なるべく誤解がないように伝えたつもりではあったんですけど、てるっぽうがどういう風に僕の話を受け取って、どう思ったのかっていうのを直接話をしようかなと思います。多分、てるっぽうと同じように受け取った人もいると思うんだよね。そういう人たちにもちゃんと説明しなきゃいけないなって思うので、今日はどっぷり腰を据えて、真面目な放送になってしまうかもしれないんだけど、聞いてもらえたらと思います。」


山口「それでは、てるっぽうと話していきましょう。もしもし?」

てるっぽう(以下、てる)「もしもし、てるっぽうです。」

山口「書き込みありがとう。書き込みを見て僕もはっとしたんだけど、まずは、てるっぽうが僕の話したことで引っかかったところを聞かせてもらいたいなと思うんだけど……」

てる「コロナで音楽の業界がすごい大変になっちゃってるっていうのは想像でしか分からないんですけど……どれくらい大変かも分からないですし。でも、山口さんの言い方だと、なんだろう……挑戦とか実験、新しい試みっていうのはあるのかなって。確かにそういう新しいことをしようっていうのはすごく良いと思うのでバシバシやっていくのはすごく良いんですけど、なんか……音楽を聴くにあたって、個人的な僕の感情なんですけど、お金が障壁になっちゃったりするのは悲しいなって思って……」

山口「"お金がある人だけがライブを観られるようになればいい"って聞こえたってことだよね?」

てる「そういう感じになっちゃいますかね……もやっときた部分を要約するとそうなっちゃうと思います。」

山口「言いたいことはすごく分かるし、裏切られた感じがしたのも分かる。要するに、貴族の遊びにしようとしているってことでしょ?(笑)」

てる「そういう感じに思っちゃったんですよね……(笑)。」

山口「『おーい、お金持ちだけライブ遊びにこーい!』って言っているように聞こえたってことでしょう?(笑)」

てる「そうですね……そういう風にお金でお客さんを分けちゃうっていうのを、積極的にやっていっちゃうっていうのは悲しいって思って、そういう風に書き込みしました。」

山口「なるほどね……」


山口「書き込みにもあったけど、てるっぽうは実際にこのコロナ禍でもライブに何度か行ったんだ?何のライブに行ったの?」

てる「行きました。RADWIMPSとか、友達のライブとかにも3〜4回くらい行きましたね。」

山口「友達のライブっていうのは……」

てる「軽音部の。軽音部に入っているんですけど、友達のライブに行って。やっぱりみんなすごい楽しそうだし、RADWIMPSとか、秋山黄色さんのライブも行ったんですけど、声が出せなくても、やっぱり届くものがあるし。同じように音楽を聴いているだけでもこっちから届けられるものもあるんじゃないかなって思って……そうですね……ライブが好きです。ごめんなさい、ちょっと……どこにも辿り着いていないんですけど……」

山口「いや、分かる分かる。今みたいな環境でもライブっていうのは素晴らしいと感じるし、声を出せたりしなくても、ちゃんとミュージシャンとリスナーの関係は築けると思うっていうことをてるっぽうは言いたかったんだよね?」

てる「そうですね。」

山口「それはすごく分かるし、てるっぽうがそう受け取ったように、僕の言い方で同じように受け取った人もたくさんいるだろうなっていうのもあるから、僕も、もうちょっとちゃんと説明すれば良かったかなって思った。書き込みしてくれてありがとう。」

てる「いえ、ありがとうございます。」

山口「僕が何が言いたかったかっていうと、僕の仕事はミュージシャンなんだよ。例えば、てるっぽうの学校の先生がさ、学校にお金がないっていって、授業で100%教えなきゃいけないことを60%しか伝えられなかったとするじゃん。すると、てるっぽうは、もらった60が100だと思うわけじゃない。」

てる「そうですね。」

山口「音楽でも、僕はミュージシャンとして、例えば100のステージで伝えたいことを60でしか伝えられなかったとするじゃない。すると受け取る側はそれが100だって思うわけだよね。」

てる「はい。」

山口「それは、僕はミュージシャンとしてやっぱり出来ないなって思っちゃうんだよ。なんでかっていうと、人間って最初に触れる文化が音楽だと僕は思っててさ。お母さんが抱っこして子守唄を歌ってくれるところから音楽が始まるわけでしょ?授業でみんなで歌うことの楽しさを覚えたり、テレビで流れてくる音楽で感動したり、自分のすごく苦しい部分を音楽が浄化してくれたりするっていう経験をしていって、どんどん音楽を好きになっていくわけじゃない。その一端を担っている仕事をしている……僕は音楽のことを仕事だとは思っていないけど、そういうのを担っている人間として、完璧に伝えられないっていうことってすごい苦しいんだよ。」

てる「苦しい……」

山口「うん。もちろん、現状もチケットがちょっと値段上がってるじゃん。お客さんが少なくなることで。」

てる「はい、上がっています。」

山口「僕はそれがすごく問題だと思っているのよ。普通の状態以下のライブの値段が上がってるじゃん。」

てる「あ……そうか……」

山口「これって、僕らはリスナーに助けられているのよ。なんていうか……ただ、もらっているだけなの。助けられて、もらっているだけなの。僕らはみんなから大切なお金を音楽で自分たちに投資してもらって、もらうわけだから、100%自分たちが自信あるものを見せないと、ファンとミュージシャンの関係って簡単に崩れちゃうと思うんだよ。今はいいよ、今はいいかもしれない。けど、2年、3年って続いていくと、みんな心が離れていくと思う。コロナ禍だから、今までやってきたものを縮小して、双方が『ライブやってくれてありがとう』、『ライブに来てくれてありがとう』っていう関係性だけじゃなくて、『こういう時だからこんなことをやるよ、ワクワクしようよ』って。『みんな、これでワクワクした?』って、そういう関係でミュージシャンも向かっていかないと。だから僕は、そういう意味でチケットの値段の話はしたけど、今のディスタンスが保たれた状態で、例えば新しい音楽の楽しみ方を発明できたとしたら、ちょっと値段が上がっても良くない?」

てる「そうですね。」

山口「こういう時だからこそ、新しいことを発見しよう、発明しようって思うことは大事だし、お金をいただくなら、そういったエンターテイメントを返さなきゃいけないっていうことがまずひとつね。」

てる「はい。」

山口「で、僕がこの間話した内容の中で言っていたのは、じゃあ、ライブに行けなくなった人が出てくるじゃん。そういう人たちに違うコンテンツをミュージシャンとして作っていこうよって。それを同時にやっていこうと。今まで通りのライブがあって、かつ、オンラインであったり、SNSであったり、そういったもので誰もが楽しめるコンテンツを同時に作っていこうよと。」

てる「同時に……」

山口「それをやっていこうと。ステージで、いつもと同じことをただただ繰り返していくだけじゃなくて、それだけじゃなくて。自分たちのインプットのためにも、こういう時だからこそ、ピンチだからこそチャンスに変えるっていうかさ。そういうことをやっていかなきゃいけないと思う。」

てる「はい。」

山口「それに、このサカナLOCKS!っていう場所ってさ、てるっぽうみたく音楽が好きな高校生だったり大学生が聴いているわけじゃん。そういうみんなに、早く自分の気持ちを伝えられる場所なんだよね。もちろん、30分くらいしかないからさ、誤解されてしまうこともあるし、全部伝えきれない部分もあるけど、それってどんなこともそうじゃん。」

てる「そうですね。」

山口「だから、今回てるっぽうと話して、本当は僕はこう思っているんだよっていうことを伝えたいなって思ってさ。誤解を解きたいなって。」

てる「すごく良かったです。」

山口「分かった?なんとなく……僕が言いたかったこと。」

てる「分かりました。」

山口「誤解、解けたかな?」

てる「完璧です!もう!」

山口「はははは!(笑) 完璧かー。よかった……。誤解が解けたなら、またサカナクション聴いてな。ふふふ(笑)。」

てる「はい、聴きます(笑)。」

山口「ありがとう。じゃあ、また機会があったら話しましょう。さよなら。」

てる「ありがとうございます。さよなら。」


今回の授業も終了の時間になりました。

山口「てるっぽうみたく、書き込みをしてくれることで自分の間違いも気づけるし、こうやって誤解が解けると、それをこうやってみんなに伝えられる。それってすごくいいことだな……ラジオってやっぱりいいなって、サカナLOCKS!っていいなってすごく思いました。でも、いつの時代もロックって……ロックって言葉を使うのは恥ずかしいけど(笑)。ロックって、古いものを壊して新しいことを作っていくことだと思うんだよ。今の時代のロックってどういうものかなって……分かりやすく、ロックって言葉を使うけど……そこかなって思っているんだよね、いつもやろうと思っていることって。だから、その姿勢を丁寧に伝えていけるようにこれからも話していきたいし、音楽で実践していこうと思っています。」

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