「一郎先生が、ツアーをやりながら感じていることを話しました。」

SCHOOL OF LOCK!


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聴取期限 2021年7月2日(金)PM 10:00まで




山口「最近『NF OFFLINE』で全国を回っているじゃないですか。(※一郎先生がひとりで各地をツアーするファンクラブの全国ツアーの真っ最中)。疲れて気分が落ちているのもあるんですけど、意見とかに結構引っ張られたりとか、メンバーなしで僕一人でやっているので、いつもより重みがあるというか……自分次第みたいなところが多くて。けっこう体調的にもどんよりしていて。」

職員(カヲル先生)「うん。」

山口「写真撮影をOKにしているんですよ、今回のライブ。お客さんはビデオを撮ろうが写真を撮ろうがOKですよ、ってしているんです。本番中は画面が明るくなったりして、演出の邪魔になっちゃうから撮影はやめてねっていうことは言っているんですけど、邪魔にならない時に撮って。っていう感じで、ファンクラブのイベントだし、自己判断に任せているんですよ。」

職員「なるほどね。」

山口「で、やっていると、"ネタバレやめてください!" っていう意見がTwitterですごい出るんですよね。そういうのを見ちゃったり、あと、今回のツアーでは各会場で限定のInstagramアカウントを作っているんですよ。そのアカウントは、会場にいる人しかフォローできなくて、ライブ中はInstagram Liveをそのアカウントから配信したり、ライブ後にはそのアカウントでグリーティングイベントをやる。そのために作っているんですよね。そうすると……友達がライブ会場に行っていて、その友達をフォローしているから、ライブに行っていない人のインスタにおすすめでそのアカウントが出てきちゃって、たまたま見たら僕が歌っていた……みたいになって、それで、やめてください。って言っている人もいて。」

山口「もうそれは……仕方がないじゃないですか。そういうところまで気をつけていたら、何もできない……何もできないわけじゃないけど、全員に対してすべて公平にするっていうことは、この世の中で無理だと思うんですよ。例えばそれが命に関わることとか、人生を傷つけることであれば、僕らも徹底的に気をつけるけど、ライブの内容を覗き見ちゃったとか、誰かのインスタの写真でちょっと知っちゃったことで、目くじら立てて言う時代じゃない気がするんですよ……僕的にはね。」

職員「そうだね。」

山口「ちょっとメンタル的に落ちているから、言い方がちょっと強くなっちゃうところもあるかもしれないんだけど。」


山口「悪意があるものはだめだと思う、確かに。」

職員「全部バラしてやるぜ、みたいなね。」

山口「そうそう。あと、録音してみんなにシェアしようとか。そういうのはちょっと良くないじゃないですか。そうじゃなくて、"めちゃくちゃライブが良かった" とか "ライブに行けて最高!" っていう気持ちをシェアしようとしてアップしちゃっている……っていうのは、愛がある行為じゃないですか。それは良しとしましょうよと。」

山口「オンラインライブとリアルライブを両方やってきて、オンラインライブはオンラインライブの感動があるんですよ。リアルライブは言わずもがなリアルライブの感動があるんです。そこの感動の違いをもうちょっと現実的なことに置き換えてイメージしてもらいたいんですよ、僕は。SNSでチラッとみた情報によって、リアルライブの感動が薄れるわけがない……それは違うものだから。分からなくもないんですよ、その気持ちも。チラッとでも見たくないとか、どんな曲をやったのか知りたくないとか。」

職員「うん。」

山口「ネタバレのOKラインはいろいろあると思うんです。"こういう曲順でこう演りましたよ" っていうことを、発信している側がみんなに言わないでほしいだろうなって思っているなら言わない方がいいだろうし。あと、次に来る人たちのことを考えて "曲順は知らない方がいいな、言わない方がいいな" ……っていうのは、なんとなく分かるじゃないですか。けど、文章で、こんなライブだったとか、こんな演出があったとか、写真OKだよって言われた会場でステージの風景が写っているとか、関係者が動画を撮っていたとか……そんなのいいじゃんと。それを見たからって、次にリアルライブに来る人は、リアルで観ちゃったら、そんなことはどうでもよくなるくらいいいライブをやるからって。むしろ、それで楽しめなくなるライブなんて、それはミュージシャンの力不足だと思うし。感動の種類がそもそも、オンラインとリアルのライブで得られるものが違うから。」

職員「そうだね。」

山口「藤原ヒロシさんが出演してくれたんですよ、福岡の時にゲストで。その時に、僕の歌っている姿があまりにも感動してくれたらしくて、"ライブが良かった" って動画を撮影して、藤原さんのInstagramにアップしたんですよ。」

職員「2階席から撮っているような動画がありましたね。」

山口「そう。藤原さんって、そもそもそういうことをしない人なんですよ。褒めてくれないし、そんなに。何かに感動したって動画を挙げるようなことをするような人じゃないんですよ。」

職員「そうなんだ。」

山口「なのに、そうしてくれたっていうことは、つまりめちゃくちゃ感動してくれたわけじゃないですか、藤原さんが。で、どちらかというと藤原さんが動画をアップしたことって日本国内のマーケットに対するアプローチじゃないんですよ。グローバルなんですよ。ヨーロッパや中国とか、アジアとか、そういう世界の人たちが、サカナクションっていうバンドがいるんだって、あのSNSの投稿で知ってくれるわけですよ。それって結構僕ら的には大きいことだし、それに対して "ネタバレやめてください" って言うのって……上手く説明できないんですけど……」

職員「そうですね……」

山口「今の時代に適した感覚でいないと、リアルライブ自体も行えなくなる。プロモーションもできないし、すごく拘束された状態でしか出来なくなっちゃうんですよね。そもそも今回の『NF OFFLINE』に関しては、僕らが壮大なネタバレを『NF OFFLINE FROM LIVINGROOM』でやっているわけですよ、すでに。だから、そんなにオンラインで見かけちゃったものに対して、まっさらな状態で観たかったって言う人は、そこまで徹底したいんだったら、SNSを遠ざけましょうっていう。」

職員「それは自分で努力するしかないですね。」

山口「そういう時代だから。SNSっていうものがこんだけ日常にあるわけじゃない?こんだけある中で、何も入ってこないようにするなんて無理ですよ。自分が好きなミュージシャンが何かをアクションしている時に、その情報を遮断することを、周りに強制するのは無理な時代だと思う。」

職員「うん。」


山口「僕、この間カバーしたんですよ。ライブで。他のミュージシャンの曲を。で、"カバーした" っていうことが世の中に出ちゃうなって思ったから、出たら聴きたいってなるじゃないですか。」

職員「聴きたくなるねー。」

山口「僕も、「忘れられないの」向井秀徳さんがライブでカバーしてくれた時に聴きたいって思ったし、スピッツ「新宝島」をカバーした時に聴きたいって思ったんですけど、聴けないじゃないですか……後から知ったら。だから、めっちゃYouTubeで探しましたもん(笑)。めっちゃ探しましたよ、聴きたいから。上がってなかったけど。いや、めっちゃ探すでしょ!聴きたいんだから。」

職員「(笑) まあ、探すよねー。」

山口「探す、探す。だから、多分探す人いるだろうなって思ったんです、噂が流れたら。だから僕は、「誰かYouTubeに勝手に上げたりすればいいのに」っていうことを言ったんですよ。だから、もし上がっているものがあるとしたら、僕が増長させてしまったところもあるんだけどね。今、この話を知った人で、そうなの!? 聴きたい!ってYouTubeで調べる人もきっと何人かいるじゃん。だからね、その辺は寛容にならないと、時代に合っていかなくなると思う。で、本当に何も情報なく観たかったら、その期間SNSから離れるとか、予防線を張るとかしないと厳しいんじゃないかなって思うけどね。」

職員「うん。これがまた、ちょっとだけややこしいのは、ミュージシャンによってとか、各ライブによって違うじゃん、当然。動画撮っちゃだめなライブも当然あるし。」

山口「そうそう。本番中に撮るのは良くないと思う。演出に影響があるし、こっちは生で歌っているんだから、撮るよりも生で観ている方が絶対に気持ちいいはずだから。邪魔になるじゃない、画面が明るくなったりして。それは良くないっていう僕らのルールはある。だけど別にトークの時に撮っても全然良いと思うし、それをInstagramやTwitterにアップするしないは自由だと思う。行ったよって自慢したい気持ちも分かるし。で、その人が1本ツイートしたり写真を上げてくれるだけで、僕ら的には広告的価値があるから。サカナクションに興味がない人たちに対するアプローチになるから。ただその写真を見たことによって、こんな衣装だったんだ、ライトはこんなのがあるんだ、ステージはこうだったんだって……それが分かっちゃったからって、ライブに来たらどうでもよくなるから。それ以上のライブを提供するっていうことをモチベーションにしているので。」

職員「うん。」


山口「もちろん、いろんな意見があっていいと思う。嫌だっていう人がいるのも分かるし、別にいいよっていう人がいてもいいと思うけど、そういうのが嫌だっていう人は、それを阻止するにSNSから離れるべきだと思う。それくらいの時代になっちゃっているから。」

職員「それを認識しないとってことですよね。」

山口「そうそう。」

職員「あと、『だったら、サカナクションの方でオフィシャルでここまではOK、ここまではNGっていうのを文章で出してください!』っていうのも、言わなくていいからね、みんなね。自分たちで考えるってことね。」

山口「そう。自分たちで考える。」


山口「あと、SNS上で、ネタバレやめましょうよってことをきつく言うことも……そんなに怒らなくていいじゃん。自分が好きなミュージシャンのライブについて否定的なことを言うのは、そのミュージシャンに対してもすごくマイナスだと思うんですよ。自分は応援しているのに、そのライブのマナーが悪いって言うことをつぶやくっていうことも。だって、そのミュージシャンの音楽は素晴らしいって思ってくれているわけでしょ。それを守ろうっていうことに対して攻撃的になっちゃったりすると、逆に傷つけていることになるっていう。だからすごく矛盾を感じるんですよ、本当に。」

職員「なるほどね。」

山口「それが、スポーツとかで、試合結果とかだったら、言わないでって言う気持ちはわかるけどね。」

職員「ははは(笑)。それもね。」

山口「それは、なんとなく分かる。だから、僕は中日ドラゴンズが好きだから、試合結果を知らないように一切見ないようにしてるし。そうやってみんなが懸念していることを全くのゼロにしようと思っていたら、本当にめちゃくちゃ、がっちがちに固めたルールの中でしかライブやSNS投稿、プロモーション方法もとれなくなってくるんですよ。っていうことは、サカナクションに興味がない人にサカナクションのプロモーションが出来なくなるわけ。」

職員「そういうことだね。」

山口「だから、非常に難しいんですよ。それをやっていこうとすると……そういう時代じゃないから。」

職員「うわー……なんか、生簀の中で魚を囲って弱っていく姿が浮かんだので。怖い。」

山口「まさにそういうこと。」

職員「そこだけの世界ってことね……生簀の中で私が愛でている世界で、その魚が弱って死んでいく。でも、私はその魚のことを愛でているっていうことになっちゃう……ってことだよね、極端な話だけど。」

山口「そう。例えば僕らがヨーロッパツアーに行ったとするじゃないですか。で、ヨーロッパでライブをやっているのをみんなが動画に撮ってアップしていることに対して、ネタバレやめてくださいって外国人に言うかな…… "海外とは文化が違うんだ" とか "サカナクションが海外に知られていくのが嬉しい" って気持ちにきっとなるじゃん。」

職員「本当だ。」

山口「でも、オンラインってグローバルだから、すでに。だから、その感覚でいいんですよ。知っちゃったらライブがつまんなくなることはない。なる人もいるかもしれないけど、その人が想像しているよりつまんなくはならないよ。」

職員「そう思いますよ。」


山口「予告編だと思いましょうよ、映画の。映画って予告編があるじゃん。あれってもうネタバレでしょ、ある意味。だから、いろんな人から見たドキュメンタリーな予告編だと思えばいいんじゃないかなって思う。」

職員「それは面白いね。」

山口「で、悪意があるものに対しては指摘するべきだと思うけど、全員が全員オンラインリテラシーがあるって思っちゃいけないし。まず。オンラインリテラシーっていうのも人によって違うから。」


山口「……でもね、今日僕がうわーって話したこの内容に対していろいろ意見や議論はあると思うけど、ステージに立って僕らが歌っているっていうリアルみたいなものは、その場に来ないと分からないから。いくらSNSでチラッと見たりしても、15秒見ちゃったり、開いちゃってパッと消して、でも見たくなかったって思ったとしたとしても、大丈夫。それ以上に、リアルってすごいから。」

職員「うん。」

山口「あと、今回のライブに関しては、ファンクラブ限定で、Zepp Tokyoでさえ600人強しかいないんですよ。600人くらいしか見られなかったライブ、それを観て喜ぶ人もいるっていうことも意識しなきゃいけないなって思う。あと、僕が撮影OKって言っているんだから、まず。でも誤解する人もいる……"演奏を撮ってもいいんだ”とか "いくら上げてもいいんだ" って思う人もいたらだめ。僕は「演奏中は邪魔になるからだめ」って言ってるんですよ。あと、全部録音してアップするのも悪意がある。セットリストも言わない方がいいじゃん、あの曲やったよって。でも、ちょっと動画を撮ったり写真が上がったりしているのに対して……その人が舞い上がってやってしまっていることに対しては、「楽しかったんだね、よかったね」って気持ちを上に持ってきてほしいなって思う。」


(♪校内放送で「蛍の光」が流れてきました。)

山口「……あら?(笑)」

職員「あれ?何ですか、この音は。」

山口「あれ……元気なかったのに、ネタバレについての議論を白熱しすぎて元気が出てきた上に、今日の授業を台無しにする雑談で終わるやつになっているじゃないですか!」

職員「マジで、すごいあったまってきてるよ、今(笑)。」

山口「まあ、悪意がないものは寛容になっていかないと、どんどん閉鎖的になっていくし。そもそも、音楽とかミュージシャンに興味がない人に伝えていかなきゃいけない時代なのに。でも、いろんな意見があって、議論するのも大事だと思うけど……とにかく、SNS上で人に優しくなりましょうよってこと。」

職員「はい。」

山口「はい。……ということでね……これで終わっていいのかな……(笑)。」

職員「……やったな。久々にやったな、これは(笑)。」

山口「久々にやらかしたなー。終了の時間になってしまいましたけどね。ちょっと今日は、僕も疲れているっていうことを加味して聴いてもらいたいと思っております。」

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