「『音楽の聴き方が分からない』という生徒への、音楽との向き合い方。」

SCHOOL OF LOCK!


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聴取期限 2021年9月3日(金)PM 10:00まで




音を学ぶ「音学(おんがく)」の授業、サカナLOCKS!。今回は、[サカナLOCKS!掲示板]に生徒から届いた書き込みをもとに授業を進めていきます。音楽の聴き方についての授業です。


初めて聞いた音楽に対してのアプローチの仕方

一郎さん初めまして。21歳の大学生男です。
僕は音楽を聴くのが大好きで、よくSpotifyなどで新しい音楽を探し続けています。
だけど、僕は音痴なので楽器を弾いたこともなく、コード進行などの知識もないので、新しい音楽に対してアプローチの仕方が分かりません。
よく、この歌のここのコード進行がいいよねや、AメロからのBメロへの移りがいいなあなどの感想を耳にしますが、僕にはそんなことが全く分かりません。そんな僕に新しい音楽に対するアプローチの仕方を教えて欲しいです。

くしゃみ2
男性/20歳/福岡県


山口「音楽が大好きだけど、詳しいことはよく分からないと。論理的なことはよく分からないから、新しい音楽に対してどうアプローチしていくか、そのアプローチの仕方を教えてほしいってことですね。でも、音楽が大好きでSpotifyも使っているってことは、いろんな音楽を探れているってことだよね。直接話してみようかな。」

SCHOOL OF LOCK!


山口「もしもし。」

くしゃみ2「もしもし。」

山口「くしゃみ、書き込み見たぞ。音楽を聴いたり探したりするのは好きなんだよな?普段どんな感じの音楽を聴いているの?」

くしゃみ2「そうです。普段は……サカナクションも聴いていますし、スピッツだったりB'zだったり。最近見つけたのは、踊ってばかりの国っていうバンドです。」

山口「じゃあ、結構昔の曲も新しい曲も満遍なく聴いているって感じなの?」

くしゃみ2「そうですね。」

山口「それは、どういう風に出会っているわけ?」

くしゃみ2「B'zは友達の紹介で、あとは、自分でサブスクだったりYouTubeで探しています。」

山口「そんな中で、くしゃみが抱えている悩みっていうのを改めて教えてください。」

くしゃみ2「音楽の知識が全くないから、コード進行だったりメロディのことが分からなくて。そのせいなのか、うまく咀嚼できない時があって。音楽好きなのにうまくできない自分が嫌になったりするので、一郎先生にアプローチの仕方を教えてもらいたいと思っています。」

山口「あー。それは、音楽を聴いていて、これの何が良いのか分からないってこと?それとも、良いなって思っていてもなんで良いのかが分からないってこと?良さが理解できないことが悔しいってこと?」

くしゃみ2「どちらもですね。」

山口「例えばどのミュージシャンからそれを感じたりするっていうのはある?」

くしゃみ2「結構、自分の好きなアーティストが何の音楽を聴いているのかを調べるのが好きで。一郎先生がプレイリストを出していたじゃないですか。それでBibioを聴いても全然理解できなくて……」

山口「(笑)」

くしゃみ2「なんでだろうなって。一郎先生が言っているから多分良い音楽なんだろうなって思うけど、自分は全然咀嚼できなかったというか……うまく理解できなくて。」

山口「例えば、音楽を聴く上で、このコードからこのコードに移る飛躍はめちゃめちゃおしゃれだなとか、自分が聴いていてここで裏切られたのがおしゃれだなっていうのって、音楽をやっている人間であってもそうじゃなくても、結構高度な聴き方だと思うんだよね。」

くしゃみ2「そうなんですね。」

山口「くしゃみは、音楽の聴き方はどういう感じなの?歌詞がメインなの?それともメロディーがメインなの?」

くしゃみ2「あー……曲だったり、歌詞もあるし、あとは世界観とか。」

山口「その世界観っていうのは、アーティストの雰囲気も含めてってこと?」

くしゃみ2「そうですね、アイデンティティとか。」

山口「どんな人かも含めてってこと?」

くしゃみ2「そうです。」

山口「なるほどね。先生は、もちろん歌謡曲みたいなものを聴いていた時期もあるのよ。例えば、槇原敬之さんの「どんなときも。」とか、LINDBERGとか、米米CLUBとか。そういうのを聴いていた時は、先生は歌詞とかよりもメロディーだったんだよね。なんでかっていうと、先生は小さい頃から洋楽を聴いていたから……The Beatlesとか。だから、歌詞よりもメロディーとか、雰囲気みたいなところで音楽をたどっていく中で、最終的に日本の歌謡曲でもメロディーを聴くようになっていったわけ。そこから、フォークソングも好きだったから、歌詞の世界観っていうものもあったりとか、自分がバンドをやったり音楽を作ったりしていくうちに、それをどう融合していったらいいのかっていうことをやっていくようになって、音楽ってこんな風に作られていくんだっていう深い部分を知っていって。じゃあ自分が人に音楽で反応してもらうためにはこういう戦略が必要だなっていうことも分かっていったっていうルーツなのね。」

くしゃみ2「はい。」

山口「今、先生は音楽を始めて20年以上経っているかな……その20年以上経って感じるのは、音楽ってやっぱり気分なのよ。匂いと一緒。」

くしゃみ2「あー。」

山口「例えば、めちゃめちゃ景色のいいところにくしゃみが行ったとするじゃん。すごい景色がいいなって思うところで、そこがすごいどぶ臭かったらその景色は台無しじゃない?でも、そこでお花のいい香りがしたらその景色が違うものに見えるじゃん。音楽も、その景色を見た時に演歌が流れていたら別のものになるじゃん。だから、音楽って自分の気持ちをコントロールするツールにもなりうるのよ。」

くしゃみ2「たしかに。」

山口「くしゃみは恋愛したことあるか?」

くしゃみ2「しています、今も。」

山口「振られたこともあるか?」

くしゃみ2「振られたこともあります。」

山口「振られた時ってすげー悲しいじゃん。もうこの世の絶望みたいな感じになるだろ?その時って、くしゃみはどんな音楽を聴きたいと思う?」

くしゃみ2「やっぱり、寄り添ってくれるような……」

山口「和らげてくれる方がいい?」

くしゃみ2「はい。」

山口「そうなるとさ、自分の今の感情に対して、和らげてくれるようなメロディであったり、世界観であったり、そういうものの音楽のストックを作っておきたいと思わない?」

くしゃみ2「あー、作っておきたいですね。」

山口「あと、夜なんとなく寂しい時とか、どうしようもなく孤独を感じたりするときに、それを忘れさせてくれるものを聴くのか、考えさせられる感情に持っていくために音楽を聴くのかっていう部分でも音楽のセレクトって変わるじゃん。そういう風に音楽を選んでいくと、別に歌詞はいらないよなっていう時もあるじゃん。」

くしゃみ2「たしかに……自分がどう感じるかですよね。」

山口「そう。歌がない音楽って考えると、EDMとか、盛り上がる音楽っていうものを想像しがちだと思うけど、そうじゃなくて、ジャズとか、フュージョンとか、ポストロックとかもあるけど……自分の感情をちょっと違うところに連れていってくれたり、自分の感情を増幅してくれる音楽っていうのがいろいろあって、先生がいつも気分を構成する上ですごく助けてくれていたのがBibioだったのよ。」

くしゃみ2「そうなんですね。」

山口「だから、今年21歳のくしゃみの感情にあの曲……Bibioの「Haikuesque (WXAXRXP Session)」っていう曲が合わなかったとしてもそれは不思議じゃなくて。自分の今の感情に寄り添える音楽を見つけるっていうことに理論的なものは何も必要ないのよ。理解する上で。」

くしゃみ2「あー……感情的にっていうことですか?」

山口「そう。自分のことを知る上で音楽ってどういう聴き方があるのかって考えていくと、いろんな聴き方があるし、歌詞の中で新しい自分を発見できたとか、こういう歌詞を書く人が素敵だって感覚もあるだろうけど、旋律であったり、世界観みたいなもので自分の感情を補強してくれるものを探すっていう探し方をするのは、今の年齢くらいから出来てくるんじゃないかなって気がするけどね。」

くしゃみ2「やっぱり、年齢とかも大きくあるんですか?」

山口「ある。それはすごくある。歳をとっていくと、聴きたい音楽のBPMが下がっていくよ。ゆったりしていく。」

くしゃみ2「あー。」

山口「くしゃみは今一人暮らし?」

くしゃみ2「いえ、今実家です。」

山口「一人暮らしをしたらまた変わるよ。」

くしゃみ2「環境とかもあるんですね。」

山口「うん。環境もあるし、くしゃみは今恋愛しているって言ったけど、例えば好きな子が家に来るってなって、音楽をかけようってなった時に、部屋の空間を作る上でこの曲をかけようとか、こういうプレイリストを作ろうってなったりするじゃん。」

くしゃみ2「します。ドライブする時とか。」

山口「そうそう。だから、一緒にいる人と同じ気分になりたいって思う上で音楽ってすごい重要だったりするよね。そういうセレクトをしていくと変わっていくと思う。そういうことを繰り返していくと、音楽の理論であったり……例えばここまではこのミュージシャンのルーツを感じるなとか、ここから飛躍していて、ここからがすごく新しく感じるなとか、それがコード進行の違いなのかなとか、このメロディーに対してこのコード進行って新しいなとか、いろいろ分かってきたりするのよ。でも、それは別に分からなくてもいいし、正直。自分に寄り添うか寄り添わないかってだけだからさ。」

くしゃみ2「あー。」

山口「すごい重要なのは、毛嫌いしないことだよね。やっぱり自分で選んでいくと、想像通りの自分にしかなれないんだよね。自分に対して驚く瞬間って、想像していない自分が現れた時じゃん。そういう瞬間が人生の中でいっぱいある方が充実すると思うんだよね。だから、そういう経験は、自分が選ばないものを吸収していかないと、想像しなかった自分にはなれないんじゃないかなと思う。チャレンジしていった方がいいかなって気がする。」

くしゃみ2「はい。」

山口「自分が好きなものには必ず何か理由があるわけ。」

くしゃみ2「気付いていないだけで。」

山口「そう。気づかなくてもいいし。探す必要もないんだけど、でも、気づけることもあるわけ。それがまた面白いところだったりすると。」

くしゃみ2「あー。」

山口「で、自分が歳をとって聴く音楽が変わるっていうのは、音楽がずっと好きだったら変わっていくのよ。もちろん、今くしゃみはサカナクションを好きでいてくれて、サカナクションが変化していくじゃん。その変化をしていく上で、昔そんなに好きじゃなかったけど今好きな曲ってない?」

くしゃみ2「あります。サカナクションで一番好きな曲になったんですけど、「マッチとピーナッツ」が。最初は、アルバムが出て一回全部聴いて、「マッチとピーナッツ」はそんなに……変なタイトルだなってくらいにしか思っていなかったけど、Daft Punkだったり、いろいろ手を出し始めてもう1回「マッチとピーナッツ」を聴いたら一番好きになりました。」

山口「おー。ルーツが分かると聴き方が分かるじゃん。そうやって、歳をとるたびに音楽の趣向が変わっていくし、自分の好きなミュージシャンが変わっていくことでそれが後から理解できるようになっていくっていうのが音楽の面白さだからさ。」

くしゃみ2「はい。」

山口「だから、くしゃみは全然間違った聴き方をしているわけじゃなくて、理論的なことが分からなかったりしても全然構わないし、自分が好きなミュージシャンが好きな音楽を理解できなくても、全然それでいいのよ。」

くしゃみ2「大丈夫なんですね。普通なんですね、それ。」

山口「大丈夫。全然普通。こういうルーツがあるんだっていう情報として知っておけばいいのかなとは思うけどね。」

くしゃみ2「ルーツを知っておけば、いろんな音楽を聴いているうちに……」

山口「そうそう。……どう?話してみて、悩みは解けた?」

くしゃみ2「解けました。理屈で詰めようとしていたけど、感情で聴いていいんだなって。一郎先生に改めて言われたから、もっと今より音楽を楽しめそうな気がします。」

山口「うん。ちょっと寂しい時とか、なんか変な気持ちになる時があるじゃん。そういう時に寄り添う音楽を見つけられると、また聴き方が変わると思う。こんな聴き方ができたんだとか、自分のこの心を引っ張ってくれるんだ……とか。」

くしゃみ2「タイミングなんですね。」

山口「うん。タイミング。センチメンタルって、音楽を広げてくれるからね。サカナクションはそういう時にすごく合うよ(笑)。」

くしゃみ2「本当にサカナクションが大好きで、一郎先生とこうやって話しているのも緊張するんですよ。」

山口「ただの音楽好きのおっさんだよ(笑)。長い付き合いになると思うよ、サカナクションと(笑)。」

くしゃみ2「最後まで追い続けます。」

山口「うん。くしゃみもいろんな音楽を聴いて。自分の生活に音楽が常にあるのってすごく素敵なことだから。音楽を楽しんでください。」

くしゃみ2「楽しみます。」

山口「うん。じゃあまた質問があったらいつでも書き込みください。」

くしゃみ2「ありがとうございます。」

山口「ありがとう、じゃあな。」

くしゃみ2「さよなら。」


今回の授業も終了の時間になりました。

山口「くしゃみは真面目な音楽ユーザーだね。結構考えすぎちゃうところもあると思う。音楽を好きでいると、自分が好きなミュージシャンが聴いている音楽が理解できないことが不安だとか。そんなのあるあるだから。あるあるだし、自分の感情を知る上でも音楽っていいツールになると思うんだよね。ぎゅっと聴き込む音楽があったり、ただBGMとして流しておく音楽があったり、いろいろあると思うので、いろんな音楽の聴き方を試してみたり、調べてみたりしたらいいんじゃないでしょうか。」

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