「サカナクション『SAKANAQUARIUM アダプト TOUR』を振り返って」

SCHOOL OF LOCK!


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聴取期限 2022年2月11日(金)PM 10:00まで




音を学ぶ"音学"の授業、サカナLOCKS!。
今回は、日本武道館 4DAYSを終えファイナルを迎えた、サカナクション『SAKANAQUARIUM アダプト TOUR 』を一郎先生が振り返っていきました。
(2/6まで武道館公演のアーカイブ配信が行われているので、興味を持った生徒はぜひチェックしてみてください!)


山口「はい、授業を始めますから席についてください。Twitterを開いている生徒はTwitterを閉じなさい。Instagramを開いてる人はサカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。」

「サカナクションは、有観客ライブツアー『SAKANAQUARIUM アダプト』が始まったのは去年の12月なんですけど、約2年ぶりで。世の中的には2021年から2022年でライブをやっている人たちはコロナ "2周目" らしいんですけど、僕らはコロナ禍で初ツアーだったので1周目だったんですけど、本当に独特な雰囲気で、お客さんが全員マスクをして声を出せない状況っていう中でどうコンサートをみんなが楽しむのかっていう状況は初めてだったのでドキドキしたんですけど。いろいろと演出であったりスピーカーであったり、サカナクションらしく赤字覚悟の大盤振る舞いでやりました。」

「僕ら的には成功だったかなと思っているんですけど、まず武道館4DAYSでファイナルを迎えたんです。4日間も武道館でライブをやることって、人生これで最後かなって思うんですけど。武道館って非常に難しいって言われているんですね、ライブを演る人からすると。形状がライブ向きじゃないから音の反響とかもすごいし、スタンド席にそりたつ壁のようにお客さんがいる景色は、武道館で初めてやるミュージシャンにとっては、やりにくいって言われているんですけど。今回、4日間もやったので武道館の建築の構造とかも把握したから、僕にとって庭のようなものになったんですよ。下手したら泊まれるくらい(笑)。宿泊できるんじゃないかってくらい分かってきたので、もし後輩のミュージシャンで初武道館の人がいたりしたらいろいろ教えてあげようかなって勝手に思ったりしているんですけど。」

「オンライン配信があったからカメラとかいっぱいあったんですけど、内情を撮るドキュメンタリーカメラが入っていたんですよ。ドキュメンタリーを撮影しているカメラマン3人いて、同じ部屋にいて僕を2人が撮ってるんですよ。これいる?みたいな(笑)。違う角度のカメラが2台入っている必要ある?っていうようなことにもなってました(笑)。」

「実際、今回のツアーは独特で、まず最初にオンラインライブをやってからリアルライブを行っていったわけですが、オンラインでしか表現できないこと、そういうライブをコロナ禍でやろうという上で (オンラインとリアルライブで) 同じセットリスト……ちょっと違うんですけど、それでリアルライブツアーをやると。リアルライブを観にきてくれた人の中にもオンラインライブを観てくれた人が多くて、リアルとオンラインの差異みたいなものも体験してもらえたんじゃないかと思うし、僕ら的にもオンラインの表現もリアルの表現もどっちも面白いし、追求していくべきものだなっていうのも実感しましたね。特にリアルライブの素晴らしさっていうのは我々も分かっていたし、改めてやって再確認できたんですけど、オンラインの可能性……これからテクノロジーは進化していきますし、いろんな技術も出てくる中で、オンラインを使った音楽表現っていうのは欠かせないものになっていくだろうなっていう確信もありました。あと、チームが増えるっていうのもいいですよね。そういう表現をする上で新しい人が自分たちの中に入ってくるっていうのは、僕ら15周年目ですけど、なかなかないんですよ。それが増えたっていうのは結構刺激的だなと思いました。」

「今回のツアーの後半にはオミクロン株が大流行してきて、実際、武道館で4日間もできるかどうか分からないっていう状況ではあったんですけど、ここは結構僕ら的にもセンシティブに考えていて。チケットを取ったけどこういう状況になって手放したいっていう人もたくさんいたんですよね。なので、僕らはチケットトレードシステムっていうものを導入しているんですけど、チームと相談して、「こういう状況だから行くのやめたっていう人がいたらトレードに出してください」と。トレードが成立しなかった場合は普通だとチケットを買った人負担になっちゃうんですけど、成立しなかった場合は我々運営で買い取りますっていう風にしたんですね。そうすると結構トレードが出て、武道館は4日間SOLD OUTしていたんですけど、武道館の初日と2日目は4分の1くらいの人がライブに来るのを諦めたみたいでした。その代わり、チケットが取れなかった人が取れて、来る予定じゃなかった人が来れたりもしたので、僕ら的にもチケットトレードシステムって比較的新しいシステムだから、ユーザーファーストなシステムを考えなきゃいけないなと思っていて。実際、武道館3日目の前日の夜にシステムのトラブルがあったりもしたので、Instagram Liveをやって、チケットシステムの効率的なもの、いい方法はないかっていうのをリサーチしたりしてコミュニケーションをとったりもしたんですけど。そういう甲斐もあって武道館4日目は無事SOLD OUTしました。僕ら、1公演で2回SOLD OUTしているんですよ。つまり、1回SOLD OUTした上でトレードが出てしまったんだけど、そのトレードも全部売れたので、2回SOLD OUTしているんですよね。なんかこう……プロ野球の珍記録みたいなのあるじゃないですか、1打席2三振みたいな……ロック界の珍記録、1公演で2回SOLD OUTっていうのも思い出に残りました。」

「(武道館公演は)オンライン配信もしたんですけど、僕がライブのMCで話した内容についてDMとかをいただいたりしたんです。今回リアルライブに行く予定だったのに、なくなくチケットトレードに出して自宅でオンラインライブを観ますっていう人が結構いたんですね。僕がMCで、こういう状況にも関わらずライブに来てくれてありがとうございます……みたいなことを言ったのに対して、"諦めて自宅で観ている人のことをもうちょっと考えて発言してください" と言われたり。僕らからしても新しい経験なので、どこに自分の感情を持っていって、誰に対して気をつけなきゃいけないのか、気にしなきゃいけないのか……が、本当に難しかったですね。このコロナ禍でライブをやられているミュージシャンの方たちってMCで何を語るかが1つ重要な要素になっているんじゃないかと思うんですけど、僕もそういう風に周りのミュージシャンから言われていたんですけど、こういうことかっていう気持ちになりました。」

「ただひとつ思ったのは、何が正しくて何が正しくない、って……当たり前ですけど、自分で決めることしかできないじゃないですか。自分が決めたことと他人が決めたことの意見が違うっていうのは当たり前で、自分と違うから、周りと違うから悪いんじゃなくて、双方に認め合う、理解し合うのがより大事な時代になってきたなって思うし、実際、音楽っていうものはコロナ禍で必要あるかどうかっていう議論がされるところまで行ったわけじゃないですか……ライブっていうものも含めて。文化っていうものが経済にどんな影響を与えるのかっていう数字とかは出せないけど、でも確実に必要としている人たちがいて、そういう人たちの中でさらに歪みあったりすると、どんどん斜陽になっていくし、いろんな考えがあっていいんだっていうことを、せめて音楽が好きな人たちの中だけでも担保しないといけないんじゃないかなって。その考えをまず自分が持って、それを、僕らの音楽が好きでライブに来てくれている人たちの中で楽しんでいけたらいいんじゃないかなって気がしましたね。」

「アダプトツアーをやりながら、コロナ禍で僕らもどんどんアダプト(適応)していって、最初は音楽でアダプトしようと思ったけど、それがシステムのアダプトにも感じて。今度はリスナーと自分たちの関係性みたいなところまでもアダプトしかけているというか、どんどん成長していってるなっていう感じがありましたね。あと、ホールツアーもやりたいなと思っちゃったんですよ……アダプトホールツアー。(現在のサカナクションが行なっている大型プロジェクトの第2弾)『アプライ(応用)』プロジェクトは来年になるので、今年1年はこのアダプトっていうものをどんどん適応していって。コロナ自体が今年1年こういう状況が続いていくだろうなって思うので、コロナが続いている間、どんどん新しい適応をしていかなきゃいけないというところで、今年1年はアダプトのホールツアーをやろうかなと思ったりして。で、来年はアプライの "応用" の方に移行していこうかなと思っています。」

「……なんか、久々にあれだね。真面目な話……こんなに真面目に話しちゃっていいのかな(笑)。久々のリモートだから……リモートの方が得意だと思っていたのに、適応していたはずが適応外になっちゃった(笑)。慣れってやっぱりあるね。(いつもは同じスタジオ内にいる、カヲル先生こと)諏訪さんの笑い声が聞こえないっていうこともある。プロ野球選手も大変だね。客の応援がないと燃えてこないっていうのはあるね(笑)……諏訪さんがお客さん扱いになっちゃってますけど(笑)。」


「でも本当によかったです、ツアーを無事に終えて。……どうだったんですかね、観に来てくれた人たち。僕が一個だけ絶対に叶わない夢があるんです。僕が例えアラブの石油王になろうが、元ZOZOの前澤さんになろうが、絶対に僕が一生叶えられない夢っていうのがあって……それは『サカナクションのライブを観ること』なんですよね。だから、観てみたいなーって思いましたけどね。一生観られないですからね。誰か変わってくれないかな(笑)。海外のミュージシャンには、リハーサル専用のミュージシャンがいたりもするらしいですよ。本人は本番しか出てこなくて、リハーサルでその人が演奏して歌って、彼が大丈夫なら僕は大丈夫って。」

「今年はフェスも出ていこうと思っているので、フェスにもどうアダプトしていくかっていうのも考えようかなと思っています。(現場の)話を聞くと、スピーカーに対してはそんなにコロナの影響は出ていないらしいんですけど、正確には分からないですけど、照明とか演出系に関しては縮小気味な傾向があるって言っていましたね。我々がもしヘッドライナーで出させてもらえるのであれば、ヘッドライナーでしか使わない照明とかを持ち込んじゃおうかなって。ズルしちゃおうかなって思ってます。そういうピンチをチャンスに変える作戦は、フェスでもやっていこうかなと思っています。」

「あとひとつね、今回のツアーで弊害が起きました、私に!なんと……クレジットカードが止まってます(笑)。びっくらこいたわ。クレジットカードが止まったらびっくらこくわ、そりゃ。いきなり使えませんって言われちゃったんだから。何年ぶりだろ、クレジットカードが使えませんって言われたの(笑)。昔はよくありましたよ、アルバイトしていた頃とか。いきなり言われちゃってちょっと恥ずかしかったんですけど。なんでかっていうと、今回ツアーで舞台とライブを掛け合わせた演出をしたんですよ。役者さんもステージに出てライブをやるっていう、特殊なコンサートだったんです。だから役者さんが2人ツアーに帯同してくるわけです。音楽のツアーを回るなんて初めてじゃないですか、そういう人たちって。だから、少人数ではあるけど、ごはん食べに5〜6人で行くじゃないですか。そうすると私は長(おさ)だから、どうぞどうぞって感じで、調子こいて奢っちゃうわけよ。で、ツアーは全部2DAYSなの……初日終わった後と2日目が終わった後っていうのがあるわけ。たまに、前乗りして前の日の夜もあったりするのよ。だから、1公演で3回とかあるわけ。1回5〜6人の食事を3回奢ったりしてるわけ。それで全国を回っていくと、そりゃ限度額いっぱいになるよね(笑)。気づいたら限度額いっぱいだったの。よく、ミュージシャンっていうのは信頼がないから銀行でお金を借りられないとかいう話を聞くんですよ。言うてもこちとら紅白ミュージシャンだぞと。そんなことあるかーいって思っていたんですよ。だから、じゃあクレジットカードの限度額を上げようと。今のこの期間だけでも限度額を上げようと思って、全然いけるっしょって気持ちでカード会社に連絡したら、『お客様のご希望には添えません』って連絡がきたんです。なぜか理由は書いてないけどね。君は何を言っとるんだと思って、じゃあもうアップグレードしてやろうと。クレジットカードの番号変わろうが関係あらすけと。じゃあアップグレードしますって送ったんですよ。そしたら『お客様のご希望に添えません』って。……限度額を上げることもできないしカードをゴールドにすることもできない。どういうことだと。それで、調べたんですよ。自分のプロフィールみたいなやつがおかしなことになっているんじゃないかと思って。そしたら、職業欄のところに"HMV小樽店 アルバイト"って書いてあった(笑)。」

(♪「ショック」のサビが流れてきて……)

「(歌って踊りながら……)ショック〜ショック〜♪ わはははは!(爆笑) 当時アルバイトしていた時に作ったクレジットカードだから、職業欄がアルバイトのままになっちゃってたのよ。失敗したわ……。それで多分、アルバイトの風情が何言ってんだっていうのではねられちゃったんだよ。失敗したわ(笑)。そういう経験もあったツアーでございました。」


今回の授業も終了の時間になりました。

「このあとは、3月30日にコンセプトアルバム『アダプト』がリリースを控えておりますので、ぜひそのアルバムも聴いていただけたらと思います。そしてこの物語はまだまだ続くんです。いろいろややこしい部分もあったりするけど……今回のチケット問題のこととかもそうですけど。全てのことに対して一緒に適応していこうと。是非いっしょに適応していきましょう。」

「サカナLOCKS!も適応していかなきゃダメですよね。リモートが続くのであればリモートならではのことをやっていきましょう。ここも含めてアダプトですから。サカナLOCKS!も含めてプロジェクトの一員ですから。考えていきたいと思っていますよ!」

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