「発売まであと1ヶ月。コンセプト・アルバム『アダプト』を語る。」

SCHOOL OF LOCK!


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聴取期限 2022年3月4日(金)PM 10:00まで




音を学ぶ「音学(おんがく)」の授業、サカナLOCKS!。
サカナクションが現在、行っている2つのシリーズで構成されるプロジェクト───第1章【アダプト】"適応" / 第2章【アプライ】"応用"。その第1章を総括するコンセプト・アルバムが、3月30日にリリースとなります。今回は、そのコンセプト・アルバム『アダプト』について、山口一郎先生が語っていきます。


山口「はい、授業を始めますから席についてください。Twitterを開いている生徒はTwitterを閉じなさい。Instagramを開いてる人はサカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。」


ショック!

最近、行く先々で「ショック!」が流れてます!!
コンビニだったり地元のスーパーで買い物中に流れてきて、イントロからテンションぶち上がってしまって、1人でショックダンスを堂々と踊っていたら、周りのお客さんに見られてすごくショックでした、、。

こもちゃん大好きひーちゃん
女性/17歳/山形県


「ショック!」に毒されてますねー。ショックダンスは、どちらかというと"ワカチコ"だからね(笑)。あれが流行ると、世の中的にはショックダンスが流行っているっていうより、ワカチコがまた流行ってるって言われると思うのでね。ワカチコダンスとショックダンスの違いを解説したいと思う。みんな多分ワカチコになっちゃってるだろうから。ショックダンスは、斜め上を見ながら脇をしめる感じね。斜め左、斜め右って見ながらショック、ショック……ってやらないとショックダンスにならないので気をつけてくださいね。」

「リリース自体が久々だっていうのもあるんですけど、ラジオで流れたり、○○ランキング1位とか、そういうのが久々だなーと思って。リリースするってこういうことだったなっていうのを思い出してきていますけどね。僕らがリリースするのが遅いのもあるんですけど、時代が変わっていっているのをリアルに感じ取れるので、僕が感じたことをいろいろお話しできたらいいなと思っています。」

「僕たち私たちサカナクションは、(このアルバムにおいて)音楽専門誌のインタビューを一切受けておりません。なぜかというと、この『アダプト』っていうプロジェクトについて音専誌の1回のインタビューで語り尽くすっていうのが無理だろうなって判断をしていて。ストーリーを追ってくれている人は分かってくれると思うんですけど、ただ1枚のアルバムがリリースされるって感覚でいられると非常に誤解を生んでしまう作品なんですよ。なので、今日はこのアルバムってどういうものなのっていうのを説明するっていうところから始めていきたいと思います。」

「このアルバムは、コンセプト・アルバムって呼んでいるんですけど、言い方を変えるとハーフアルバムです。1枚のアルバムを半分に割った作品だと考えてもらえたらありがたいですね。普通は2枚組になったり、1枚にまとまったりするんですけど、僕らはレコーディングや制作に非常に時間がかかったりするし、このコロナ禍っていう期間があって、この期間の中をコンセプトにしているので、今なおコロナが続いている中で、おさまるのを待ってから作品を作り始めるとすごく長い時間がかかってしまうし、古くなってしまうっていうのもあって。僕らはコロナ第一期って呼んでいるんですけど、この第一期で感じたことをまずまとめて、活動してきたこともふまえてこの作品を作ったって感じなんですね。」

「実はこのサカナクションのコンセプト・アルバム『アダプト』を語る上では、オンラインライブ→リアルライブ→リリースという、順序が違っていること……普通は、シングルを出して、アルバムを出して、ライブをして、オンラインライブをするっていう流れなのを、僕たちはオンラインライブをやってからリアルライブをやって、リリースをしたという順番が変わっているっていう事象が『アダプト』のコンセプトであって、CDの作品自体がコンセプトっていうわけではないんですね。だから、現象自体がコンセプトなので、その一部としてこの『アダプト』っていうアルバムがあるんだと考えてもらえたらありがたいかなと思っています。残りのハーフアルバムは来年発売されます。それは『アプライ』っていうタイトルで……『アダプト』は"適応"って意味なんですけど、『アプライ』は"応用"って意味です。『アダプト』でコロナ禍に適応していったこと、そして『アプライ』で応用していくっていうコンセプトにして2つにわけているんですね。」

「今回、通常盤に関しては破格な値段になっています。初回盤とかファンクラブ限定盤とかいろいろあるけど、CDだけコレクションしたいっていう場合は、通常盤の安いものを購入していただけたら嬉しいなと思います。プロジェクト自体をもっと詳しく知りたいっていう方は、初回限定盤であったり、ファンクラブ限定盤についてくる分厚いブックレットがあるんですよ。それを読んでいただくと更に情報が分かりますし、かつ、ファンクラブの年会員になると、『アダプト』についての雑誌が送られてきます。スタッフであったり、いろんな人たちの『アダプト』についての解説がついてくる本が送られてくるので、更に知りたい人は深く入っていただけたらと思います。なので、情報を手に入れるレイヤーみたいなものを作っていくっていうことも、『アダプト』を表現していく上でのコンセプトになっているんですね。知ろうと思えば知ることができる、作品として捉えようとすれば捉えられるというものですね。いろんな側面を持つ多面的な作品になっています。収録曲は、今回のツアーで披露されたものプラス2曲くらいだと考えてもらえたらと思います。14曲入りのアルバムを半分こして7曲になっているっていうイメージですかね。そういう考え方で、今レコーディングしている最中なんですけど、その中でも皆さんが聴いたことがない楽曲も収録されるようになるかなと思います。」

「自分たちの作品について語っていく上で、どうしてもアルバムという括りで話をしなくてはいけなくなるんですけど、こういう時代で、皆さんCDで音楽を聴く人って本当に少ないと思います。僕自身も気合入れて聴くときにしかCDで聴かないですし、そうなるとLP(アナログレコード)になっちゃうというか。海外だとCDの売り上げよりもLPの売り上げの方がまさっている時代になっていて、日本という国はCDがまだ比較的売れていて、世界で1番売れているのかな。そういう国なんですね。だから、CDっていうものがこれからどうなっていくのかっていうところを見ていかなきゃいけないと思うんですけど、ある種コレクション要素になっていると思うんですよ。グッズ化していると思うんですね。今、逆転現象が起きているんですけど、昔はデジタルで聴くと音が悪いからCDで聴きましょうって考え方でした。録音した音源をCD用にデータを圧縮していますからね。それが、5Gが出てきてインターネット回線も早くなって、Wi-Fi6が出てきて……ってなると、圧縮しない状態でデータで配信することもできるようになってきているんですね。つまり、データの方が音として良いんじゃないのっていう時代がきて、5年たたないうちに必ず入れ替わると。じゃあ、CDって何なのかって、存在としての意味が変わってくる気がします。」

「僕らが昔から考えていたのが、CDの普通のパッケージにCDだけ入れて、ちょっと歌詞カードつけて出すのはもうやめようよと。もっとフィジカルとしての価値を高めようと。つまり、コンセプトっていうものを、アートワークであったり、そういうものに対して盛り込んでいこうと。ミュージシャンごとに、ファンの人たちが欲しいと思うもの、アートワークやフィジカルとしての価値を高めていこうと。いろんな人がやっていたけど……例えば、ゲスの極み乙女。がCDにバームクーヘンを付けたり、OKAMOTO 'Sが本を付けたりとか。そういう風に時代は動いていくだろうなと。その中で、僕たちはコンセプトを伝える上での作品として1枚のリリースになりますんで、お金がない人は無理して購入しなくてもいい形になっています。いつも自分が使っているサブスクリプションで聴きたいっていう人はサブスクリプションで聴いてもらえたら良い。サカナクションを応援したいっていう人はCDを買ってくれたらいいっていう、あくまでもグッズのような感覚になっています。なので、レコードショップとかもこれからどういう風にこの時代を乗り越えていくのかっていうのが議題になっていくと思うんですけど、我々がCDを買ってくださいっていうのはレコードショップの方に対する思いが強いんですね。レコードショップの人たちを応援したいと。ですが、僕らだけではどうも出来ない時代の流れっていう中で、レコードショップの存在がどういうものになっていくのかっていうのを応援したり提案したりする中で、僕は、レコードショップはキュレーションをしていくべきだと思います。深く入り込まないと手に入らない情報であったり、アイテムであったりが、レコードショップに行くと手に入れられるような空間になっていくべきだと。音楽のアイテムを手に入れたり情報を手に入れる場所になっていくべきだっていう考えもあって、僕らはこういうやり方をしています。初回限定盤とファンクラブ限定盤にはライブ映像も特典として付いてくるんですけど、そういう部分では、映像のクオリティも担保していかなきゃいけないし、僕らは、作品としてCDを手に入れることは、映像作品を手に入れて欲しいっていう気持ちが強いので、この映像作品は見てほしいなって思っています。」

「楽曲に関してなんですけど、『アダプト』(適応)していこうとしているコロナ禍での葛藤みたいなものを1曲1曲に物語を込めて作っています。全曲解説みたいなことは、自分のSNSなどで今後やっていくだろうと思っています。音楽専門誌で今まで語ってきたことを、自分のメディア……このサカナLOCKS!や、SNSで語れる時代が来たので、その情報を手に入れてくれた人たちがそれぞれ咀嚼して感じてもらったことを直接僕らとコミュニケーションするっていう形になると良いんじゃないかなと思っています。ですが、ライブに来てくれた方、ライブを一切観ていない方、どちらの人たちにも今回アルバムに収録されている7〜8曲は、きっと刺さるというか……先ほどメッセージをくれた、こもちゃん大好きひーちゃんさんのように、刺さっていく楽曲がそれぞれにあると思いますので、サブスクリプションでまず聴いてみて、プロジェクトを知って応援したいなって思ってくれたらCDを手に入れてくれたら嬉しいなと思います。」

「ただ、CDを買わないと応援したことにならないのかっていう意見もあると思うんですけど、そんなことは全然なくて。例えば、InstagramとかTwitterで、サカナクションのこの曲が好きって発信してくれるだけでもサポートになるんですよね。僕らもシングルを出さなかったりハーフアルバムにした理由っていうことのひとつとして、コロナ禍でみんな経済的に困窮していっていると思うんですよ。アルバイトをしている人が仕事がなくなったり、職を失っちゃった人もいるだろうし。そういう中で音楽からできるだけ離れないでほしいっていう気持ちがあるので、CDの価格帯を抑えるとか、なるべく音楽に対して出資する部分を狭めて、極力ライブで音楽を表現する部分に気持ちを持っていってもらいたいっていうことで、CDを買わない分ライブを観てもらったり、フィジカルとしてライブ映像を手に入れてもらったり、サブスクリプションで古い曲をたくさん聴いてもらったりするっていう状況にしたいという気持ちもあります。」

「僕はいろんな時代の音楽が、どんな時にどういう風にムーブメントしていったのかっていうことを勉強する機会があって。ずっと勉強してきた中で感じるのは、時代の境目だったり、何か大きな出来事があった時には、必ず何か新しいジャンルであったり、新しいものが音楽の中で生まれるんですね。新しいものが何なのかっていうところは定義が非常に難しいんですけど、必ず何かが発生しているんです。じゃあ、このコロナ禍でどういうものが生まれるのかっていうのを注視して、自分がミュージシャンをやっている中で出来ることを考えたときに、やはり、システムのアップデートっていうのがこの時代の中で起きるべきことなのかなっていうのを感じ取りました。今回、ややこしい形でリリースになったり、追いかけていない人にとっては難しいかもしれないんだけど。僕らなりのシステムのアップデートを……今ある概念を壊す、つまり、パンク精神やロック精神を持って、今あるものを壊して新しいものを作る。それをシステム上でやろうとしているっていうことも、コンセプトとして受け取ってもらえたら嬉しいなと思います。」

「僕は今、このサカナLOCKS!でも、裏側をたくさん話していると思うんですけど……音楽業界の裏側だったり、お金のことだったり。お金の話をしすぎて、『お金のことばっかり話しすんな山口一郎』ってつぶやきもたまに見かけるぞ(笑)。でも、そういう部分を知ってもらうことで、みんなが疑問に思ったり、どういう風に音楽が届いているかを知ってもらうっていうのは、これからの時代の音楽の進化のためにも必要だと思うんです。そういう部分を含めてちゃんと話して理解してもらった上でクリエイティブしているんだって……そういうミュージシャンが1組くらいいてもいいかなって。これは僕だけの考え方じゃなくて、チームサカナクションとして考えていることです。僕らは5人だけではなくて、それ以外の人たちがいるからこそ、サカナクションっていうものが成立しているんだっていうことの明言だと捉えていただいていいのかなと思っています。みんなの仕事を伝えたいっていうことも、この時代の中で、我々の作品をリリースする上でのコンセプトになっています。皆さんがこのCDを購入してくれること、手にとってくれること、予約してくれることで、我々の血となり骨となり、次のサカナクションにアップデートしていくんだっていうリアリティを伝えていけたらと思っています。」


今回の授業も終了の時間になりました。

「たまにはね……たまには、こういう真面目な話を(笑)。本当は、陽気なおじさんな側面もあるけど、本当は音楽のことを考えている真面目なおじさんなんだっていうことも生徒諸君は分かっておかないと!多面性を持っているところを感じてもらえたらと思っています。コロナがまだまだ猛威をふるっていますけど、コロナだから生まれたことっていろいろあると思うんです。自分が変わったなって思うこと、もう元に戻れないなって思うこともあると思います。でも、それを経て日々を過ごしていって、未来に繋げていくっていうことが人類にとって普通のことだと思うので。負けずに、自分の中で消化して、新しい世界に適応(アダプト)していきましょう。

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