「サカナクションMV対談!江島啓一×森 義仁」

SCHOOL OF LOCK!


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聴取期限 2022年8月19日(金)PM 10:00まで




音を学ぶ "音学" の授業、サカナLOCKS!。
お休み中の一郎先生に代わって、このクラスの副担任・サカナクションのドラム:江島啓一先生が授業を担当中です。

今回はゲスト講師に、映像作家:森義仁 監督をお迎えします。
サカナクションのミュージックビデオ「三日月サンセット」「ナイトフィッシングイズグッド」などを手掛けていたり、CMやドラマ、最近では、映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』の監督も務めています。実はサカナクションとはデビューの頃からのお付き合いだそうです。どんなお話が聞けるのでしょうか。


江島「はい、授業を始めますから席に着いてください。Twitterを開いている生徒はTwitterを一度閉じなさい。Instagramを開いてる人は、サカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。サカナクションのドラム、江島啓一です。今週も、もれなくゲストの方をお招きしてトークをしていきたいと思っています。」

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江島「今夜のゲストはこの方、映像作家の森義仁さんです。よろしくお願いします。」

森「よろしくお願いします。映像作家の森です。」

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江島「……ちょっと、"森さん"って呼ぶの慣れないんで、森ちゃんでいい?」

森「俺も、江島さんって呼んだことないんで、エジーで(笑)。」

江島「森ちゃんは、サカナクションのミュージックビデオ「三日月サンセット」「ナイトフィッシングイズグッド」の監督で、初期の頃のライブ映像の監督もやってもらったりしていました。他にも、CMとかドラマとか……何と、最近では映画を初監督されたと!」

森「ついに。そうですね。」

江島「何てタイトルでしたっけ?」

森「『ボクたちはみんな大人になれなかった』という。」

江島「Netflixとか、劇場で公開された。じゃあもう、映画監督ですね。」

森「そうですね。映画監督になりたくて、東京に出てきて……やっと。」

江島「最初はやっぱり映画監督になりたかったんだ。」

森「そうですね。映画監督から紆余曲折して、やっと映画を撮れたって感じかな。」

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江島「最初僕たちが出会ったのは、日本映画学校に僕の高校の同級生が入学したんですよ。その同級生が森ちゃんだったんだよね。そこで友達の友達として。まだ僕がデビュー前の話なんですけど。で、ミュージックビデオを誰にやってもらうかって話になった時に、デビュー前なので、映像を作っている人なんて全然知らないから、じゃあ森ちゃんに頼もうってなったのがきっかけだよね。」

森「最初、友達に誘われて下北沢のライブハウスに……結構小さいライブハウスに行って。サカナクションが全然デビューする前に。俺の友達のバンドかっこいいからさって感じで連れて行かれて。」

江島「かっこいいからさって紹介されたの?(笑)」

森「そうそう。でも、まあ……って気分で行って(笑)。でも、素直にかっこいいなって思って。そのライブ終わりで飲んだんかな?」

江島「飲んだと思う。何回か飲んでるよね、下北で。」

森「僕は僕でまだ監督じゃなくて、当時は映画の助監督っていう仕事をしていて。助監督っていう仕事をずっとやっていくのはどうなのかなって悩んでいる時期にちょうどライブを観て、何か作ろうよって盛り上がって。」

江島「今思い起こせば、よくある青春物の1ページみたいな……下北の安っすい居酒屋で、まだまだ何者にもなっていない20代そこそこのやつらが夢を語りながら泥酔する……みたいな(笑)。そういうのをやってたんだよね(笑)。」

森「本当にそう。」

江島「そんなこんなで、この「三日月サンセット」(の監督)を森ちゃんにやってもらったんだよね。」

森「デビューとか何も決まってなくて、とりあえず「三日月サンセット」良い曲だねって話になって、リード曲っぽい扱いもしていたりするから、何かあれで作らせてよって感じで、ショートフィルムみたいなのを作ったんですよね。自主制作で。それはサカナクションのメンバーも出ていなくて、「三日月サンセット」からヒントを得て……っていう感じのショートフィルムを作って。」

江島「完全に森ちゃんのポケットマネーで作ってくれたんだよね。」

森「そうそう。でも、10万円も持っていなかったってくらいの(笑)。」

江島「え、そんなもんで?結構何人か俳優さんも……」

森「松浦祐也さんっていう、『岬の兄弟』っていう映画とかに出ている主演の俳優の人とか、菊池亜希子さんっていうモデルで女優の人とか。あと、椿鬼奴さん。」

江島「椿鬼奴さんね(笑)。よく出てくれたね。」

森「それも、知り合いのつてで無理やりお願いしてって感じで。」

江島「あの映像は世に出ていないよね。どこに行ったんだろう……あるの?家に。」

森「出てないよね。いやー……どっかのハードディスクに入っていると思うけど(笑)。」

江島「ちょっと掘り起こして観たいし、みんなに観てほしい気も……1回確認してからだけど。」

森「観てほしい。ここまできたらやっと出せるかなって感じもするよね(笑)。それができたくらいの時に、メジャーって言葉は使っていなかった気がするけど、(サカナクションが)CDデビューするって話で、「三日月サンセット」でデビューするって聞いて。俺撮りたいって言ったし、多分サカナクションのメンバー的にも僕くらいしか知り合いいなかっただろうから(笑)。」

江島「そうね。それでやってもらったんだよね。」

森「そうそう。懐かしいですね。」





江島「このミュージックビデオ(「三日月サンセット」)が森ちゃん的にも映像を監督する初の作品だったんだよね?それまでは何をやっていたの?」

森「そうですね。映画の助監督っていう仕事をしていて。割と大きな映画から小さな映画まで、いわゆるアシスタントディレクターというか。」

江島「助監督って何をやるもんなの?」

森「いろんなやることがあるんやけど、映画の中の細かいことを調べて……時代劇なら、こういう時代はこういうことをしていましたとか、そういうことを調べて、役者の人に伝えたり、美術部に伝えたり、橋渡しみたいな仕事なんですかね?あと、現場の進行とか。分かりやすいのは、カチンコを打つとか。」

江島「あー、あれもやっていたんだ。カチンってカメラの前で。あれがカチンコっていうんだ。」

森「そうそう。最近使わなくなったけど。」

江島「最近使わないんだ(笑)。」

森「フィルムじゃなくなって。」

江島「え、フィルムの時はあれが必要で、デジタルになったらあれはなくなったんだ?」

森「使ってるけど、なくても成立するものになったんじゃないかな。」

江島「へー。じゃあ、元々は映画を目指していたわけじゃん?そのまま映画の方に行こうって感じじゃなかったの?」

森「いや、映画の方に行こうと思っていて、見習いみたいな形で……最初は映画もなかなか入れなくて。Vシネ(Vシネマ)とか……久しぶりにVシネって言葉を使ったけど(笑)。学生の頃に何でも手伝いみたいな感じで。1年くらいは良い映画の助監督とかに付けなくて、普通にバイトとかしていて。なんとなく映画の助監督の仕事を下っ端だけどやれるようになってきて。で、4年くらいした時にサカナクションと出会ったかな。」

江島「でも、ずっと映画を目指していたわけじゃん?そこにぽっと知り合いの知り合いのバンドがデビューするからMV撮ってって言われて……ちょっと違うじゃん、毛色が。そっちでデビューしちゃったら、自分の人生がそっちに行っちゃうっていう危機感みたいなのはなかったの?」

森「多少はあったけど……当時、CMとかPVのアルバイトもたまにしていたから、なんとなく、映画もCMもPVも現場自体は見てたんで。」

江島「じゃあ、そんなに遠い世界じゃないの?映像の世界で言うと。」

森「うーん……なんかね、近くて遠いみたいな感じ(笑)。やっていることはほぼ一緒なんですけど、撮影するって言うこと自体は。でも求められているものだったりしきたりが違うってことはあるから。いろいろクロスオーバーしてやれたらいいなって思っていたし、最終的に映画を撮りたいなっては思っていて。PVも当時好きだったんで。」

江島「でも、僕らのミュージックビデオを撮るってなった時、映画の助監督の仕事が重なっていたらしいじゃん。」

森「そう。すごいやりたい……阪本順治さんっていう監督の『闇の子供たち』っていう、割と重い……妻夫木(聡)さんが主演かな。その映画で、海外でタイロケの映画の助監督の仕事があって。監督も、内容的にもすごいやりたいなって思っていたのと「三日月サンセット」の撮影が被って。でも、なんかこのままじゃ自分が監督になれない気がしたから……助監督ばっかりやっている時に、あまり良い未来が想像できなくて。何かを変えなきゃ、変えなきゃってすごい思っていた時期だったから、若いなりに焦りがあって。PV1本撮ってもそれで食っていけるっていう保証も何もなかったけど、なんとなく上手く行ったり来たりはしないほうがいいなって当時思って。これはどっちかを選ぼうって。しっかり助監督をずっとやっていく映画人としてなる道か、ちゃんとPVの世界に行こうっていう、分かれ道。自分の中で。」

江島「結構な分岐点だったんだ。」

森「すごい分岐点。」

江島「でも、映画監督を目指していて映画一本で行こうっていう人は、助監督から順々に出世していくものなの?」

森「……っていうケースが、実は少ないんですけど、王道は王道だと思いますね。」

江島「それか、それ以外の仕事をいっぱいやるかの分岐点だったんだ。それでミュージックビデオをを撮ったっていう……それで今、後悔してる?」

森「いやいや(笑)。よかった。」

江島「言わせた?今(笑)。」

森「いや、サカナクションのタイミングも諸々よかったし、それを選んだ自分が偉いなって、今となっては思います。偉いというか、それでよかったかなって。」

江島「後悔はしてない?」

森「後悔は全然してない。」

江島「よかった、よかった。」

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江島「「三日月サンセット」を撮影していた頃の記憶とかって覚えてる?」

森「一郎さんとエジーと、撮影前に北海道で話をしようって。」

江島「ライブを観に来てくれたよね。」

森「そう。ライブを観に行って、その後にバーか居酒屋かで話していて。なんか、一郎さんがすごい……イヤホンで聴いた時はこう聞こえて、こう聞こえて……って話してたのが印象的で。ミュージシャンの人からしたら多分当たり前のことだと思うんですけど、この音はこっちからで、この音はこっちからじゃないとだめなんだってすごい熱弁された覚えがあって。で、もちろんお金はないっていうのは大前提なんだけど、サカナクション自体初めてだし、PV撮影の監督っていうのが初めてだし、音のこだわりっていうのをなるべく映像化したいっていうのがスタート。」

江島「はー、そうなんだ。」

森「で、白バックの中の世界観だけど、音の行ったり来たりっていうのを映像的にうまく表現したいなって思って。スーパーボールとか、振り向いたりとかっていうのを、音に合わせてしっかりやろうっていうのがあの企画のスタートだった気がするな。」

江島「その打ち合わせでそういうのを思いついたんだ。スーパーボールとか。」

森「そうそう。」

江島「へー。確かにそんな打ち合わせしたね、3人で。確か、一郎のアルバイトしていたところじゃなかったかなー……狸小路の。」

森「……全然覚えてない(笑)。」

江島「全然覚えてない?(笑)。」

江島「でも、当時本当にお金がないからさ、スタジオを借りるのでほぼほぼ予算が終わって。今では考えられないんだけど、ヘアメイクもいない、スタイリストもいない、マネージャーもいない……監督は森ちゃんがやって、カメラマンの方だけ東京から連れてきてくれて。永守(芳信)さんだよね。」

森「うん、永守さん。」

江島「いまだに撮ってもらってるの、オンラインライブとかで……16年くらい。いまだに繋がってるの。でも、そのくらいだよね、スタッフ。照明の人もいないから、永守さんが照明もやってくれたりして。あと、スタジオの人か。」

森「スタジオの人が手伝ってくれたね(笑)。でも本当に、見渡す限り10人もいなかったよね。」

江島「しかもあのスーパーボールさ、本当にばら撒いてるじゃん?だから、撮るたびにみんなでスーパーボウルを拾うっていう作業があって、すごい時間かかった(笑)。」

森「俺、スーツケースに山ほど買ったスーパーボールを入れて……」

江島「あれ自分で買ったんだ(笑)。」

森「そう、問屋かなんかで買って。羽田空港でX線検査みたいなのがあるじゃないですか。あれで止められて(笑)。何が入ってるんですかって。」

江島「ははは!(笑) 開けたの?」

森「開けられて、スーパーボールですってなって終わり(笑)。」

江島「ははは!(笑)そりゃ怪しいよね、あんな大量のスーパーボウル。」

森「今だったら……札幌で買うなー(笑)。その脳みそもなかった(笑)。」

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江島「そこからミュージックビデオをいっぱい撮ってるわけじゃん。それってサカナクションを撮ったのがきっかけだったりしたの?」

森「そうそう。「三日月サンセット」を1本作って、ほぼハッタリで、ミュージックビデオの監督っていう名刺を作った覚えがあるな……ミュージックビデオとは書いてないけど "監督" っていう名刺を作って。」

江島「まあ、1本撮ってるしね。」

森「ちょうど、スペシャ(SPACE SHOWER TV)のパワープッシュみたいなのに「三日月サンセット」が選ばれた気がして。渋谷のTSUTAYAのモニターのところがあるやん?あそこでちょこっと流れたりして。で、俺はもうやっていける!って渋谷のモニターを見て思って(笑)。」

江島「ふふふ(笑)。あー、そうなんだ。」

森「1本しかないけど、そこからミュージックビデオの会社とかに。」

江島「売り込んだの?」

森「うん。元々アルバイトでいたところのプロデューサーに見せたり、サカナクションがビクターだったんで、ビクターの他のアーティストを撮らせてくださいってビクターの人にお願いしたりして、ちょこちょこやるようになっていったって感じかな。」

江島「その時は、映画の仕事はあんまりしてない?」

森「もう映画は、今度帰ってくる時には監督で帰ってこようって思っていたから。」

江島「あー、そんな心持ちで?」

森「そうそう。でも若かったから。」

江島「25〜26歳?」

森「うん。貧乏でもまあいいやって思っていて。」

江島「映画の方に行ったらある程度収入もあったわけじゃん。でも、急に監督っていう肩書きになって、自分で仕事をある程度とってこないと仕事がないみたいな状態だと、結構不安じゃない?」

森「不安だけど、若いし、なんとかなるやって。なんか大丈夫な気がして。」

江島「若さだねー。」

森「でも、渋谷のTSUTAYAにボンって流れたのは大きかった。もう、東京が俺を呼んでいる感じというか(笑)。」

江島「ははは(笑)。」

森「当時は。そんな自分が作ったものが流れる場所じゃないと思っていたから。」

江島「あんなでかい画面にね。確かに。」

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そろそろ今回の授業は、終了の時間になりました。

江島「今夜は映像作家の森義仁さんと一緒にお届けしましたが、だいぶ昔の話を……覚えているもんだね。」

森「うん、ね、しゃべると。全然覚えていないんですけど……って思いながら来たんだけど、しゃべりだすとディテールまで出るなって。」

江島「でも、まだ全然話し足りないというか、10代の生徒で映像を目指している子もいると思うんです。将来そういう仕事に就きたいなって。そういう生徒に向けて、来週もお話を聞きたいなと思っています。よろしくお願いします。」

森「よろしくお願いします。」

江島先生と森先生の対談は来週に続きます。

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聴取期限 2022年8月19日(金)PM 10:00 まで


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