MV「ホーリーダンス」オーディオコメンタリー解説

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山口「はい、授業を始めますから、席に着いて下さい。マンガを読んでいる生徒はマンガをしまいなさい。Twitterを開いている生徒は、Twitterを閉じなさい。Instagramを見ている生徒も、Instagramを閉じなさい。授業が始まりますよ。……今日はね、まず黒板を書きます。」

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先週、8月5日に発売になったサカナクション先生のカップリング&リミックス集『懐かしい月は新しい月 〜Coupling & Remix works〜』。今回はこのアルバムに収録されている、山口一郎先生が初監督を務めた「ホーリーダンス」のミュージックビデオについての授業です。[ サカナLOCKS! 掲示板 ] には、生徒の皆さんからミュージックビデオの感想がたくさん届いています。その中からこの生徒に直接、電話して感想を聞いていきます。



新しいMVが次々と見られてすごいです!「ホーリーダンス」は釣りがテーマになっていて、一郎先生が好きなことを詰め込んだ感じがしました。
堅揚げエモーション
男/17/北海道




山口「もしもし!サカナクション山口です。こんばんは!」

堅揚げエモーション(以下、堅揚)「こんばんは!」

山口「「ホーリーダンス」のMV見てくれた?」

堅揚「はい。」

山口「どうでした?」

堅揚「いや、すごい……すごかったですね。」

山口「あはは!(笑) 意味分かった?あれ。」

堅揚「はい!あの……最初は、女性が踊ったり、一郎先生のサングラスのドアップとか緑のドロドロから何が出るか、ちょっと分からないことだらけだったんですけど、ミュージックビデオが進むに連れて、だんだん意味が分かって来て、最後のシュールな釣りのシーンに繋がっていて……。すごい、鳥肌が立ちました!」

山口「おー!ありがとうございます。もともと「ホーリーダンス」って曲は知っていたの?」

堅揚「いや、知らなかったんですよ。」

山口「お、「ホーリーダンス」も?そっか、そっか。あの曲は、「アイデンティティ」のカップリングなので、2010年リリースの曲なんですね。」

堅揚「最初に聴くとき、所詮カップリングだって思って、ちょっと舐めていたんですよ。でも聴いてみたら、タイアップとかで書いた曲より一郎先生の自由な感じが伝わってきて、すごい好きでした。歌詞も。」

山口「やっぱり、自由な感じが伝わってくると良いなって思う?」

堅揚「はい。」

山口「じゃあさ、今、堅揚げエモーションが一番好きなサカナクションの曲は何?」

堅揚「「ナイトフィッシングイズグッド」ですね。」

山口「おー……!なるほどねー。あれは……先生がいくつのときに作った曲だったかな……。」

堅揚「まだ札幌にいるときですよね?」

山口「全然いる。……あれ?堅揚げエモーションは今高校2年生?夏休み?」

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堅揚「はい。」

山口「クラスでどんな音楽が流行ってる?」

堅揚「そうですねー……。」

山口「正直に、全部言って良いよ。」

堅揚「ONE OK ROCKとかですね。」

山口「ほー。一番多いのがワンオク?」

堅揚「男子は。」

山口「サカナクションが好きな人ってクラスに何人くらい居る?」

堅揚「いや、1人しか居ない……。」

山口「わははは!(笑) いいねー。ナイス、ナイス。(クラスのみんなは)サカナクションが北海道出身だって知っているのかな?」

堅揚「いやー……あんまり知られていないと思います。」

山口「知られてないよね。でも、先生ちょっと頑張って、堅揚げエモーションのクラスの中の誰かに「サカナクション良いよね」って言われるようにね。先生頑張るんで。」

堅揚「はい。もっと頑張ってください!」

山口「もっと頑張ります!(笑) ありがとう。ふふふ(笑)。……じゃあ、またこうやって話せることを願っております。また会いましょう。」

堅揚「はい!応援しています!本当に。」

山口「うん。頑張るよ。ありがとうな。」

堅揚「ありがとうございます。」

山口「じゃあね。バイバイ。」

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山口「……いや、ね。でも、マジョリティの中のマイノリティっていう存在を目指してきていて、クラスの1人か2人がめちゃくちゃハマってくれたらいいなって気持ちで続けてきていたのが、現実的にそういう風になっていて。ああいう子たちに対してどんな音楽を届けるかっていうのはすごい大事だなって思いましたね。広げるっていうことも大事ですけど……例えば、クラスの中で何十人に好きだって言われるようなことも大事だけど、やっぱり、あんな風に1人や2人に思いっきり刺さるってすごい大事だなーって今思いましたね。……頑張るか。」

「じゃあここで、全国の生徒と一斉に「ホーリーダンス」のミュージックビデオを見ていきたいと思います。堅揚げエモーションは分かってくれていましたけど、先生のTwitterやコメント欄には、厳しい批評がたくさん届いておりまして。……生徒諸君ね、ちょっと考えた方が良いぞ。理解できないものを悪いと思っちゃいけない。……ははは(笑)。言い訳じゃないぞ(笑)。作る人がいるわけだからね。そこには必ず意味がある。意味がないものもあるけど、それはそれで意味がある。美しいものの中で難しいものもたくさんあるわけで、その難しさを理解するっていうことを諦めると、分かりやすくて簡単なものにしか反応できなくなるぞ。なので、先生の「ホーリーダンス」のミュージックビデオの解説で、こういうことだったんだ……みたいなことが分かってくれると……嬉しい(笑)。」

「じゃあ、ちょっと、やるか。再生ボタンを押すとスタートするからな。先生は今、『懐かしい月は新しい月 〜Coupling & Remix works〜』初回限定盤に入っているDVDをパソコンの中に入れて見ているんですけど、「ホーリーダンス」の前に矢印をピッピッピと動かしていますよ。右左に早く、シャシャシャっとね。そして、これをクリックすると始まりますので。……皆さん、準備は良いですか?「せーの」で再生してみましょう……」

「せーの」

「……で再生しますからねー。ははは(笑)。押しちゃった生徒、いるか?(笑) ちょっと今のはフェイクだぞ。厳しいんだぞー、大人の世界は(笑)。……いくぞ。次は本当に「せーの」だぞ……」

「せーの!」


■サカナクション「ホーリーダンス」MUSIC VIDEO


「……始まりましたね。これね、まず、肩に見えるベストみたいなのあるじゃないですか。これは、リュックを背負っているっていう体なんですけど、実は、釣りのベストなんですよ。」

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(0'17"〜)
「でね、この後ろ姿。シュールですね……。これは、ファンと対峙しているっていう設定なんですよ。さっきのサングラスをかけているのが現実で、こっち(山口先生の後ろ姿)が妄想なの。曲を作っている時に僕がイメージしている風景ですね。ファンがみんないて、自分の曲を待っている……みたいな。で、ここの画を長く見せたかったんですよ。何が起きるか分からないドキドキ感を。だけどね、ここで結、構映像を止めてしまう人がいるらしい(笑)。これはみんなファンで、応募してくれたエキストラの人たちですからね。」

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(0'54"〜)
「これ!これは、ELEVEN PLAYっていうダンスカンパニーの、Perfumeの振付けをしているMIKIKO先生が振付けしてくれたんですけど。これはね、最終的に分かるんですけど、ルアーの化身なんですよ。これもまだ妄想。サングラスをかけている僕の妄想状態なんです。で、この3人娘に僕はサイレントアサシンっていうアイドルグループ名をつけてメジャーデビューさせようとしています(笑)。これは、ルアーの動きを表現してもらっているわけですね。」

(1'23"〜)
「これはまた現実に戻っているわけですね。このルアーの踊りだったり、ファンとの対峙を頭の中で考えているわけですよ。ファンが待っているのになー……でも、釣りしたいなー……っていうところで。だけどその一方で、どのルアーを使おうかな……って。想像しているわけですね。サイレントアサシンのあのルアーを使おうかな……みたいな。」

(1'58"〜)
「で、これはタックルっていう、リールが一緒になっているのをいうんですけど。リールっていうのは糸を巻く機械ね。そして、女の人の髪に金粉がついていますけど、この後出てくるリールが、カルカッタ コンクエストっていう、金色のリールなんですね。なので、それを模してもらっているんですよ。で、動きは、僕が仕掛けを投げる動きをイメージしてダンスを作ってもらったわけですね。だからこれは、カルカッタ コンクエストの化身(笑)。これも、スーパースローっていう、スローモーションで撮っているんですけど。」

(2'28"〜)
「またこれ、戻っていますね。音楽を作らないといけないけど、ルアーはどれにしようかな……みたいな。リールも、カルカッタ コンクエストだし、どういう風に投げようかな……みたいな。頭の中が釣りと音楽でぐちゃぐちゃしちゃっているイメージですね。」

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(2'57"〜)
「カメラが引いていくと……ファンがたくさん居る、みたいな。これは本当はね、平台があると、壁みたいに斜めにあげていきたかったんですけど、平台が足りなかったっていう(笑)。これは実際に来てくれた人たちなので、たまに会う人とかいますよ。ライブ会場とかで。(このシーンでは)「みんな待っているけど、釣りに行きたい……。」って思っていて。」

(3'22"〜)
「今度は、ドロドロとスライムが上がっていっているんですけど、実はこれは、下にリールが隠れているわけなんですね。このスライムもお手製なんですよ。買ってきたんじゃなくて、その場で作ったの(笑)。それがまた良かったんですけどね。このドロドロしたスライムが溶けていって、ぐーっとカメラが(一郎先生に)寄っていくと……「ファンのみんな、ごめん!」って振り返って、「俺は釣りに行くぞ……」って(笑)。「すまん!とりあえず1回釣りに行ってくる……!」って、1歩、2歩……と歩いていくわけですね。「1回行って、必ずまた曲書きに戻ってくるから……!もう、我慢できません!」っていう。さっきのリールに模していたカルカッタ コンクエストの化身と共に、ここから仕掛けを……。心の中で、「1投をオーバーヘッドキャストで俺は投げると思う……!」みたいな。まだここは妄想ですからね。投げていないので「でも、サイドキャストもいいなー……!」みたいな(笑)。「どっちもいいけど、とりあえず……」って。「よし、ルアーは、このサイレントアサシンに決めた!って。ルアーは、サイレントアサシンに決めたぞほら、って、手で持っているわけですよ(笑)。そして、リールはこの、カルカッタ コンクエストを……しかも、デジタルブレーキじゃないやつで……!この女の子はカルカッタ コンクエストで、ラインはスライムの緑で、「よーし、とりあえず、音楽のことは忘れて、第一投を思いっきり……この川に向かって……魚がいるであろうこの川に向かって……俺は音楽を1回放り出して……キャスト!」っていうね(笑)。ははは(笑)。」

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「こういうストーリーではあるんですよ。つまり、頭に出ていたのが現実で、それ以外は妄想で、3人娘はルアーの化身で、黒い金粉のついた髪の女の子は、リールの化身なんですよ。どんなルアーを使って、どんな道具で1投目を投げようかっていう考え方。あと大勢のファンを対峙しているシーンは、曲を待っている人がいるけど、釣りに行きたいっていう願望なんですね。全部を放り出して、釣りに来ちゃったっていう話ですね。釣り好きな人には分かるはず。こう……1投目を投げるまでのドキドキ感。あるんですよ。何回も投げていると魚が拗ねちゃうので。一番釣れやすいのは1投目なんですね。もう、その1投目を投げるまでの、はぁ……ちゃんと狙った所に投げないと……大事な1投……みたいな。そこを投げるには、ルアーの重さは大丈夫かな、とかね。マニアックですけど(笑)。でも、「ホーリーダンス」って元々はそういう歌だったんですよ。釣りに行きたいけど行けないっていう曲だったので、自分の曲を自分でミュージックビデオを撮るんだったら、その詞を書いたときの風景だったり、イメージを映像にするのは当たり前かなって。変にこねくり回さず、そのまま、ドンと作りましたけどね。映像監督をやれて本当に勉強になりました。本当に、関係者のみなさま、お世話になりました。皆さんも、再生ボタンを一緒に押してくれて、ご協力ありがとうございました。」

そろそろ、今回の授業も終了の時間です。

「今日は、北海道の堅揚げエモーションと話しましたけど、なんかね……先生、いろいろと考えますね。思いっきり外に広げることに対して努力もしてきたし、自分の作りたいことを作るってことも模索してきたけど、時代に合うものを作るって何なんだろうなってずっと考えてきていましたが、狙って作れるものじゃないんだなと。今の時代の中でそれを精一杯生きて、この年齢でね。感じたものをそのまま出していくしかないなと思うし、それが人の心を打つことになったら、それが本当に音楽だなって思うし。あと、たくさんの人に届けるっていうのは、やっぱりいろんな戦略が必要になると思う。そして、長く続けるには、一遍にたくさんの人に届けちゃうといろいろ難しい。求められるものを作らなきゃいけなくもなってくると思うし。だから先生は、たくさんの人に届けながらも、堅揚げエモーションみたいに……クラスの中で1人しかサカナクションのファンがいませんって言っていたけど、そういう子たちに、深く、鋭く刺さるような、そういった楽曲もちゃんと作っていきたいなと思います。まあ……戦っていく、って言い方になるのかな。分からないけど。中島みゆきさんの「ファイト」って曲がありますけど。“闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう”って。その曲が、僕にとってのひとつの応援歌になっているんですが。ちょっと、頑張っていきたいなと思います。」

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サカナLOCKS! 放送後記

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