6/4 「PV・MV」

サカナクション

今回の授業、テーマは “PV" です。
サカナクションのニューシングル「僕と花」が先週リリースされましたが、この曲にも、もちろんプロモーションビデオが存在します。ちなみに "PV" は "プロモーション・ビデオ" の略ですね。プロモーションって言うのは「宣伝に使うもの」の事を指します。その楽曲を、視覚的に放送するためのツール。プロモーションするためのビデオ、ということなんです。そして皆さんは、"MV" という言い方を聞いた事ありませんか?こちらは "ミュージック・ビデオ" の略です。皆さんは、どちらかというと、"PV" という呼び方の方が、なじみがあるのではないかと思いますが、サカナクションの場合は、なるべく "MV" と言うようにしています。その理由は「PVよりも作品性が高い」「芸術性の高いもの」……そんな考えから "MV" と呼んでいるそうです。

サカナクション

さて「僕と花」のミュージックビデオですが、全体を通して「劇団」タッチ、つまり「舞台」タッチの作品になっています。カメラを中央に置いて、そのカメラの周りでをぐるっと1周しながら、メンバーや演者さんが登場する "一発撮り" のミュージックビデオなのです。

「先週リリースになった、新曲「僕と花」ですが、実は僕たち、そのミュージックビデオをUSTREAMという、リアルタイムで放送する、インターネットの動画サイトで生中継したんですね。」

サカナクション

このミュージックビデオの、一発撮りのようすを、USTREAM (略してユーストとも呼ばれている) で中継した理由というのは何だったのでしょうか。

「完成したものと、USTREAMで中継した瞬間的に・衝動的に録られたものの違いを、リスナーに楽しんでもらえるんじゃないかという考え。完成したものだと、編集したんじゃないか、とか、リアル性やそのときの空気感を感じにくいものになってしまうので、生放送している事で、本当にそれは一発撮りされたものだと証明できるわけです。」

サカナクション

「USTREAMっていうのはリアルタイム放送なので、見た人と見てない人が出てくる。見れた人って、見れてない人に対して "過剰に誇張して言っちゃう" じゃないですか、「見た!見れた!すごい!」って(笑) 見れてない人は、ますますドキドキするし、アーカイブが残らない(後から見ることができない)ので、どんなものだったか、想像するんですね。すると、実際に完成したミュージックビデオがアップされたとき、再生回数に影響してきたり……と、トピックスが多ければ多いほど反響が大きくなります。

サカナクション

それで、今回のミュージックビデオは、内容の作品性がすごく強かったので、"プロモーション的効果を補うため" に、USTREAMで生放送するっていうのを企画した訳ですね。現代のツールとして、USTREAMっていうのはものすごく大きなもので、それを利用している人は日本でまだ全国的に少ないんですよ。でも、音楽を好きな人がそのUSTREAMを使うと、ミュージシャンにとって、それは "血を濃くする作業" ができるんです。音楽の事をより深く知るためにUSTREAMが使われるとしたら、ひょっとしたらUSTREAMは、音楽のものになるかもしれない。自分たちミュージシャンにとっては、テレビ番組……メディアとして使ったりできるので、僕らにとって未来がある。USTREAMを使ってプロモーションビデオを放送するって言うことは、有意義な事になった訳です。」

サカナクション

より作品性の高いものになったという、「僕と花」のミュージックビデオ。サカナクションが映像作品を作るときに、気をつけていることっていうのは、どんなことなのでしょうか。

「今回、監督をしてくださった山口保幸監督なんですけど、「ドキュメント」という曲のミュージックビデオを作ってくれた方なんですけど、ものすごい作品性の高いものを作ってくれる方なんです。僕らが音楽に人生をかけて何年も没頭してきたように、山口監督や映像を作っている人は、当り前ですが何年も何年も同じように研究したり考えてきたり、作ってきた経験があるわけですね。だから僕らがミュージックビデオを作るときに心がけている事は、自分がもしミュージックビデオを作る監督だったら、どう言われたら嫌だろうか。どういう風に作りたいだろうか。っていうことです。」

サカナクション

「例えばミュージシャン側から、"今回のミュージックビデオのテーマは赤で、走る人が居て、女の子が出てきて、こういうストーリーにして" ……って、どんどん言われたら、きっと僕だったら嫌なんですよね。そうじゃなくて、そのミュージシャンが度肝を抜くような素晴らしいアイディアを、自分が好きなように作って、自分で体感したい。僕がもし監督だったらそう思うので、僕らがミュージックビデオを作るときに心がけているのは、監督さんのやりたいことを一生懸命、理解して、一緒にそれを実現していく、というチームワークですね。そういう作り方をやっております。」

ちなみにサカナクションのミュージックビデオの中で「アルクアラウンド」は、YouTubeのサイトで、現在、660万再生されています!この作品も、当時、監督の意見があったり。現場でいろいろ意見出し合ったり、と、チームワークで作った作品なのだそう。

「そんな作品が、いまじゃ660万再生されている訳ですよ!この数字がもしね、CDの売り上げだったらね、『釣り堀』作ってますよ、僕!」

サカナクション

それではここで、「僕と花」のミュージックビデオを見ながら、リアルタイムでのオーディオコメンタリーをお届けします。生徒の皆さんで、YouTubeのビクターチャンネルにアクセスして、「僕と花」のミュージックビデオの再生ボタンを、「せーの!」で一緒に押そうというもの!

「はい(笑) 願いはひとつ……、YouTubeのビクターチャンネル、落ちるな!固まるな!(笑)」

この日の授業中では、YouTubeの「僕と花」のページで固まって、再生されなかった生徒がけっこういたみたいなので、リアルタイムで解説してくれたオーディオコメンタリーの内容を紹介しましょう。



(0'00"〜)
「はじまりましたねー……、これ、ホナガヨウコさんっていうダンサーさんなんですけど。画質にも注目してください!これ、監督さんにお願いしたんですけど『西武警察』って言ってわかるかな?ウルトラセブンとか、いったら1970年代風の画質ですね、当時のフィルムっぽい映像にしたいんです、って言う事をお伝えしたいんですね。するとこういう風に、"カラコレ(カラー・コレクション)" といって、映像の色彩を補正する技法を使って、監督も、そういう風に思ってやってくれましたね。」

サカナクション

(0’40"〜)
「ここも、皆さん地味に振り付けがあって、踊ってくれてるんですよね。リズムに合わせてくれてます。ダンサーを入れる事で、コンテンポラリーダンスっていうんですか、そういう要素を見せたい。そして、その舞台感!リアルで、生で演っている緊張感が、ミュージシャン以外が出ることで増すんですよね。」

(1’08"〜)
「はいここ!これが注目のトリックアート部屋ですね!これは最初に、トリックアートをミュージックビデオにとりいれたいな……って話していて、一発撮りできるのかっていうのを実践していてやってみたんですけど……」

サカナクション

(1’25"〜)
「ほら!小さくなった!大きかった僕が小さくなりましたね〜!これは遠近感でやっているんですけど、これは実際やっていておもしろかったですね。ちなみに、メンバーが着ている衣装も、ペンキで塗ってるんですよ。なのでちょっと硬質にみえるっていうね。」

(1’42"〜)
「これは、他の花に浮気しているのを、花の精が「あっち!それみるな!」みたいな。そして一人一人がちゃんと演技してくれてるでしょ〜!」

サカナクション

(1’54"〜)
「これも遠近感で、僕が小さいまま食べ物を食べるっていうシーンですね。」

(2’00"〜)
「実はこの辺、距離感とか、スポットライトで全く見えてないんですね。だから結構ドキドキしながらやってますね。しかもこれスポットライトを照らしてますけど、倉庫なので、(設備は) 何もないんですよ。だからクレーン車入れて、クレーン車からスポットライトを当ててるんですよね。」

(2’27"〜)
「そしてまた、この遠近感で、僕が小さくなるって言う。チラチラとザキオ※カがカメラ目線なのが面白いですね〜(笑)」
(※サカナクションのキーボード:岡崎英美さんのこと)

サカナクション

(2’42"〜)
「これ、劇団員のサキちゃん!この振り付けとかも、さっきの花の精のホナガさんがその場でやってくれたんですよ。」

(2’55"〜)
「ここで、花が切られてしまったー……ここで注目なのは後ろのダンサーの男の子2人。すごいちゃんと演技してくれてるんですよ!ほら!こういうのも、ちゃんと協力してくれてる。こうやって見てると、文化祭に近いですね。」

(3’20"〜)
「これ、花が切られて落ち込んでるのが…… "ハッ!"と、ここで……(自分の演技を見ながら)…大根ですね〜!! (笑) これ恥ずかしいですね。やるもんじゃないですね、演技とか!(笑)」

(3’28"〜)
「そして、花びらがチラチラ……これは、花は切られたんだけど、花が落ちてくるっていうストーリーですね。花は自分だったっていうテーマです。」

サカナクション

(3’40"〜)
「今までの登場人物の方が出てきてくれてるんですね。回想シーンです。」

(3’50"〜)
「これで必死に戻って部屋に花があるかとおもったら……何もなかった。」

……で、終わりです!

「でもこんな風に、音楽に触れる機会が多くなっているって言う事は、ミュージシャンにとって大きなことでございます。映像と音楽が切っても切れない関係になったこの時代に、皆さんは音楽に対して、映像に対して、どういうことを期待していくのか。僕はミュージシャンでありながらそれを考察していけたら良いなと思っています。」

サカナクション

というわけで今回の授業は終了です。来週は、生徒のみなさんがミュージックビデオ・プロモーションビデオについて、どう考えているか聞いてみたいと思っています。前回、出した小論文の宿題覚えていますか?

小論文
『音楽と映像の関連性について (プロモーションビデオに対するものとする) 』
これを140字で答えなさい。


今日の山口先生の授業も踏まえて、思ったことを140字で書いて送ってくださいね。
提出はコチラ

そしてサカナクション先生は、現在、SAKANAQUALIUM 2012 “ZEPP ALIVE" の真っ最中!
「ライブ自体も、アルバムツアーではないんでね!いま自分たちのある曲の中で好きなものをたくさんやれるっていうので、メンバー・スタッフ共にテンションあがっています。是非楽しみにしててください!」


M 僕と花 (with オーディオコメンタリー) / サカナクション