SCHOOL OF LOCK!


今回の授業は、愛知県で開催されている芸術祭「あいちトリエンナーレ 2019」の中のプログラムとして開催された、サカナクション『暗闇 KURAYAMI』ライブを振り返っていきます。暗闇=会場を完全に真っ暗にした状態で行われたというライブ。いつものサカナクションのコンサートとは、どう違ったのか。実際に暗闇ライブを体験した生徒といっしょに振り返っていきます。

山口「サカナクションは、8月7日から国際芸術祭 あいちトリエンナーレ2019で全7公演、暗闇ライブを行いました。このサカナLOCKS!でも何度か話題になりましたよね。実際に行ったライブのシチュエーションは……オールスタンディングじゃなくて、オールシッティング(笑)。全員座った状態で、楽器の光も漏れないように、5つの箱の中にメンバーが1人ひとり入って、手を目の前にかざしても手があることが分からないほどの完全暗転の中で音楽を演った、と。真っ暗な中で映像が、ちらちら見えたり、物語がある中で暗転があってまた物語が始まったり、生音の響きを伝えたり……全4部で構成したわけですね。これは来た人にしかわからないから、あんまり説明しきらないほうがいいかなと思うんですが。スピーカーシステムは、前に僕らも使ったことがあるドイツのd&b audiotechnikのd&b Soundscapeっていう、とにかく音の解像度が高くて、今回は(サラウンドツアーのときのような)360度ではなく、主に220度で環境音は360度っていう形でやりました。」

「終わった後のお客さんの反応を見ると、賛否かなと。良い席で聴いた人達は、わーってなったし、暗闇がだめっていう人は最初の5分で出て行ったし。閉所恐怖症とか暗所恐怖症に初めてその瞬間になっちゃった人もいるんですよ。だから、スタッフでも途中で退出したり、手が震えて足がガタガタなって、っていう人もいた。なので、結構ハードコアなライブには、なったかなと。普段のサカナクションの「行くぞー!」とか、「幕張メッセー!」みたいなのは一切なく、一言も喋らず、一番尖ったハードコアなライブだったんじゃないかと思っております。」

暗闇ライブに参加した生徒から感想が届いています。


暗闇
暗闇ライブに参加させていただきました!
まるで、長い夢を見ているようでした。
普段はあまり気にしない微かな音がはっきりと聴こえて、今まで聞いてきた様々な音の聞こえかたが変わったように感じます!

えすてる
女性/15歳/愛知県


「普段僕らは音楽を作るときに、音は立体だと。立体を感じながら音楽を作っているんだけど、視界っていうのはその音の立体感を分からなくする霧みたいなものだなって、常日頃、感じてる。だから暗転にすることで、みんなにも音の立体感みたいなものを感じてもらえたらいいなと思ったのでね。えすてるも楽しめたと……15歳でそれを経験してくれたのはありがたい。」


暗闇ライブ
一郎先生こんばんは!
初めてサカナ掲示板に書き込みします
あいちトリエンナーレの暗闇ライブ観にいきました!
最終日の昼公演の当日券に並んでB席で鑑賞したのですが、もう本当に最高でした。
暗闇で神経を集中させて、音を楽しむ。中毒性のある素晴らしいライブでした。書き込みできないくらい想いが溢れ出てるのですが、その想いをまとめると、暗闇ライブは全身で聴く音楽だと思いました。
あの暗闇での体験が恋しすぎて、寝る前に消灯した部屋で妹のヘッドホンをつけて、いつもより大きめの音でサカナクションの曲を聴いてます。
一生忘れられない体験をさせていただき、ありがとうございました!
人生初ライブが、暗闇ライブで本当に良かったです。
裏話や、解説などあれば是非話していただきたいです!
4日間素敵なライブをありがとうございました

やまたにえん
女性/19歳/愛知県


「人生初ライブ……これは何か間違ってるな(笑)。結構やばいところから入ってきたな(笑)。これは、幕張メッセの「行くぞー!」っていうのを聞いた時にはちょっと引いちゃうくらいの衝撃が逆にあるかもしれない。このやまたにえんとは電話が繋がっているので、いろいろお話を聞いていこうと思います。」

山口「もしもし!」

やまたにえん「もしもし。」

山口「暗闇ライブに来てくれたんですね。人生初ライブ?」

やまたにえん「はい、初ライブでした(笑)。」

山口「当日券ってことは、急遽、行こうってことになったの?」

やまたにえん「はい。」

山口「どうだった?実際に観て。」

やまたにえん「ベースの音とかが全体で感じられて、他の音はいろんな方向から聞こえてきて……もう……痺れる感じのライブでした。」

山口「ありがとう。やまたにえんは19歳ってことは、大学生?」

やまたにえん「はい。大学生です。」

山口「どんなことを勉強しているの?」

やまたにえん「音大で、音楽を勉強しています。」

山口「え、音楽を勉強しているの?それは、プレーヤー?」

やまたにえん「プレーヤーです。バイオリンを専攻しています。」

山口「そうなんだ。クラシックのコンサートとかも行ったことがなかったの?」

やまたにえん「クラシックのコンサートは行くんですけど、ミュージシャンのコンサートとかは行ったことがなくて。」

山口「そうなんだ……初……でも、初にしては、相当ハードコアなやつに来ちゃった感じだと思うよ。」

やまたにえん「そうですね。」

山口「暗闇ライブって、やまたにえんは来たからいろんなことを語れるじゃない?でも、ラジオを聴いている来ていない人たちは一体なんのこっちゃって感じだと思うんだよね。」

やまたにえん「そうですね。」

山口「やまたにえん的に、暗闇ライブがどんなものだったのかみんなに教えてあげてよ。僕も見ていないからさ。僕は演奏しているから体験していないのよ。」

やまたにえん「あ、そうですよね。」

山口「まず、会場に入ってきたじゃん?入ってきてからは、やまたにえん、どうだった?」

やまたにえん「入ってきてからは、すごい銅鑼の音がして……不気味な感じでした。」

山口「不気味?」

やまたにえん「はい。照明とかも、テンション上がる……なんかちょっと……エロいですね、あの照明は。」

山口「あのエロい照明?」

やまたにえん「エロい……エロかったです(笑)。」

山口「(爆笑)」

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やまたにえん「ふふふ(笑)」

山口「19歳の女の子がエロいエロい言ってるとなんか気まずい雰囲気になるぞ(笑)。確かに、紫色のね。普通は客電っていうと……クラシックのコンサートもそうだよな。」

やまたにえん「はい、ちょっと薄明かりみたいな。」

山口「そう。普通の明かりなんだけど。暗闇ライブの会場に入った時には?」

やまたにえん「紫がかって……エロがかった……」

山口「ははは!(笑) エロがかったやつな(笑)。」

やまたにえん「それにテンション上がるじゃないですか。気持ちがで、最初は試しみたいな感じで一旦暗くなって。」

山口「"Practice"ね。コンピュータが喋るみたいなやつがあったよね。」

やまたにえん「はい。英語と日本語で。」

山口「『これから5分間の"Practice"を行います。気分が悪くなった方は諦めて帰ってください。』みたいなことをね。」

やまたにえん「はい、そういう感じのことが英語でも聞こえてきて。で、暗くなって……そこで自分も完全暗転が初めてだったので……」

山口「どうだった、どうだった?」

やまたにえん「手を自分の目の前にやっても、手の影すら見えないみたいな……本当に何も見えなかったです。夜より暗かったですね。」

山口「怖くならなかった?」

やまたにえん「怖くなかったです。なんか……にやけました。ずっとにやけてました(笑)。暗くておもしろかったです、すごく。」

山口「で、第一幕が始まっていくわけだよな。それはどんなんだった?」

やまたにえん「最初、雷の音とか雨の音でしたよね。」

山口「そうそう!」

やまたにえん「雷の音がリアルすぎて……」

山口「冷たい風を感じなかった?」

やまたにえん「感じました!」

山口「雨が降ってきたな……って感じしなかった?」

やまたにえん「あ!そういう感じしました。」

山口「したでしょ?それも実は演出なのよ。本当に雨が降ってるのかなって気にちょっとなったでしょう?」

やまたにえん「はい。」

山口「で、曲が始まっていったよな。映像も出てきたじゃない?」

やまたにえん「映像出てきました!傘の。すごい……映像が急に付いたり消えたりするので、目が……おかしくなるんですかね、あれって。」

山口「残像が残るんだよね。」

やまたにえん「そうですね。それがすごい不思議でした。」

山口「あそこは目に残像が残るっていうことを体験してもらうための一幕だったのよ。暗転の中で映像をみることってないじゃない?何かしら明かりがついているでしょう?いくら暗いっていっても。だからそれを、暗い中で映像を見るとこうなるのよっていう体験してもらおうと思って作ったんだよね。」

やまたにえん「すごい面白かったです。」

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山口「からの、今度は第二幕にいくわけだよね。」

やまたにえん「第二幕すごい好きでした。」

山口「どんな感じだった?」

やまたにえん「最初、映像で……先生の声と曲が流れて。そこから暗転して、マイクで……その場で歌いました?あれって。」

山口「さあ……それは秘密だけどなー!仕組みに関してはまだ何も僕は言いたくないんだけど。でも、そう感じたんだよな?」

やまたにえん「そう感じました!映像から、声から……暗転して、マイクで暗闇の中で先生の声が聞こえて。そこで弾ける……みたいな。」

山口「先生感じた?」

やまたにえん「もう、感じました。最高でした。痺れました。」

山口「痺れた?その時、何か音とは違うものを五感で感じなかったか?」

やまたにえん「あ……お茶の匂いですね。」

山口「お茶の匂いしたよね!お茶の匂いしたなー。それはお茶が焙じられている香りだったよな。」

やまたにえん「はい。」

山口「茶柱」って曲の時だよな。実はその場で焙じてたのよ。」

やまたにえん「え、そうなんですか?」

山口「焙煎機でお茶を焙じて、その香りをダクトを通してお客さんに発していたんだよね。」

やまたにえん「あれはすごいです。」

山口「気分が変わるよね。」

やまたにえん「変わりました。なんか……喋れないので、周りの人と。自分……頭がおかしくなっちゃったのかと思って。」

山口「(爆笑)」

やまたにえん「暗闇すぎて、急に匂うから……」

山口「混乱しちゃうんだな(笑)。」

やまたにえん「混乱しました、逆に(笑)。」

山口「連れていかれたんだ。なるほどな。」

山口「で、第三幕に突入だよな。第三幕は何か出てきたよな、箱から。」

やまたにえん「そうですね。そこでついにサカナクションのメンバーの方をうっすら見れた……みたいな。」

山口「うんうん。鈴をシャンシャン鳴らしたりしてたよね。サーチライトみたいなのでビャーって照らしたりとか。」

やまたにえん「最後……第三幕の最終らへんで、光が点いたり消えたりみたいな時って、一郎先生は踊っていましたか?」

山口「一郎先生はそこでは……踊ってないね。踊ってる人が見えた?」

やまたにえん「いや……なんか一郎先生が真ん中にいるのは分かって。点いた瞬間、点いた瞬間で先生の向きが変わっているように見えて。ずっとぐるぐる回っているのかなって見ながら思いました。」

山口「あー……実はね、先生その時持っているものがあったの見えたかな?」

やまたにえん「え……」

山口「実は、超指向性スピーカーっていうレーザービームみたく、本当に一部の人にしか届かない指向性のスピーカーがあるのよ。30センチくらいの幅で、そこから頭がずれると聞こえなくなるっていう。そこに入っている人は聞こえるっていうやつであてていたのよ、音を。」

やまたにえん「あ、そうなんですね。」

山口「それで、グリグリグリグリ、グーリグリにしていたのよ(笑)。で、サーチライトみたいなのを出していたじゃない?あの光が当たっているところに音が当たっているっていう意味だったの。それが多分踊っているって見えたんだと思う。」

やまたにえん「はい。」

山口「で、箱の後ろからピカピカピカピカ、ピカピカピーカってしていたでしょ?あれは実は、スタッフがパシャパシャ、ストロボを光らせていたの。踊りながら。」

やまたにえん「あ、スタッフさんが踊ってたんですね。そうなんだ……いいですね。」

山口「いいでしょ。」

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山口「で、第四幕。」

やまたにえん「第四幕は、完全暗転の……いや、もう……あれこそすごい暗闇。本当に暗闇の中で、体で音楽を感じるというか。耳で聴くんじゃなくて、体で感じる音楽でした、四幕は。」

山口「いろんな光景が頭に浮かんだだろ?ドラマがいろいろあったろ。」

やまたにえん「はい。いろいろありましたね。途中でベースがなくなって、上の音だけっていうのなかったですか?」

山口「あるある!」

やまたにえん「そこで最後盛り上がって、ベースがくるみたいな。」

山口「そうそう。くる、くる、くる……きたー!みたいなやつだろ?」

やまたにえん「そうです!そこが一番テンション上がって。踊りたくなっちゃったくらいテンション上がりました。」

山口「もう、連れていかれていたんだな。自然と音楽の中でな。」

やまたにえん「はい。連れていかれてましたね。」

山口「で、最後曲が終わるな。そしたらどうなった?」

やまたにえん「ふふふ(笑)」

山口「ふふふ(笑)。終わったらどうだった?」

やまたにえん「明るくなって、サカナクションの皆さんが舞台の後ろに下がっていくみたいな……すごいそこもなんか切ないというか……「あ……行ってしまう……!」みたいな。」

山口「そうやろ、そうやろ!そうやろ!かっこいいやろ、あれ。」

やまたにえん「めちゃめちゃかっこよかったです!」

山口「ステージが暗くなって、奥舞台だけの明かりになって。」

やまたにえん「光の中に消えていく……みたいな。」

山口「5人が『ONE PIECE』の1シーンみたいな(笑)。ゾロサンジと……って(笑)。歩いて消えていくのよね。そしたらバッとサーチライトが消えて、暗闇の中でまた鐘がゴーンと鳴るっていう。で、影アナがあって終わるんだよな。」

やまたにえん「はい。」

山口「……これで僕らは盛り上がっているけど、来たことがない生徒はなんのこっちゃ全然わかんないと思うんだよね。」

やまたにえん「本当ですよね。」

山口「これは来ないとわかんないのよね。」

やまたにえん「来ないとわからないです。」

山口「でも、やまたにえん……よかった。ありがとうね!人生初ライブをこの暗闇ライブで体験しちゃったんだったら、ライブの概念が変わっちゃっていると思うんだけど。是非、サカナクションの普通のライブも観に来て欲しいなと思うわ。」

やまたにえん「はい、観に行きます!」

山口「うん、さよなら。」

やまたにえん「さよなら。」

そろそろ今回の授業も終了の時間になりました。

山口「これね……来ないとわからない。だから、いくらやまたにえんがエロチックだとか言っていたけど(笑)、全然わかんないだろ。これも全国でやりたいと思うんですけど、再現が非常に難しい。なぜなら、完全暗転にするっていうことには、消防法という分厚い壁を乗り越えなければいけない。今回は、あいちトリエンナーレの会場のご好意と配慮に伴いまして、完全暗転を実現させていただきましたけど。これをやらせてくれるところが見つかれば、再演したいなと思っているんですけど。実は候補地がいくつか上がってきているので、もし実現できたらその時には、是非、遊びに来ていただけたらと思います。でもいいよね。普通のライブとこういった尖ったライブが2種類あるっていうのは。僕ら的には表現の場所が増えているからね。いいんじゃないかと思います。」

「さて、来週のサカナLOCKS!は、夏の最後に送る『じっくり読むと怖い歌詞』の授業をお届けしたいと思います。前回宿題を出しましたよね。普段は曲として普通に聞き流していたけど、この歌詞じっくり読んでみたら「……え……怖い!!」そんな曲を紹介していきたいと思います。」

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