SCHOOL OF LOCK!

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聴取期限 2020年1月3日(金)PM 11:00 まで


SCHOOL OF LOCK!


今回は、2019年最後の講義です。山口一郎先生が今年出会った曲の中から、特に気に入ったものを5曲ご紹介します。

山口「今年もいろいろ出会った。でも大半は制作をしておったので、他の人の音楽を聴いている場合じゃない時期がほとんどを占めておった!なので、2019年6月以降の感覚が、私の2019年ベストソングになるんじゃないかと思いつつ過ごしておる!なので、その中から紹介したいと思います。」

「……この曲からいってみよう。最近、先生はね、北アフリカの音楽にはまっているんだな。なぜかというと、北アフリカのオリエンタル感がなぜか私たちの郷愁につながっていると。……なぜなんだろうな。この曲を聴いた後に三味線を聴くと、「あれ?なんか似てる」と。シルクロードというその流れの中で我が国に入ってきたものを感じつつも、自分たちのルーツとして聴けるこの安心感は何なんだろうなっていう曲を紹介したいと思う。この人はね、先生インスタもフォローしてるんだ。Mdou Moctarっていう人なんだが……曲のタイトルは、読めない!(笑)」




「……なんか民謡を感じるんだよね。日本の民謡を感じるこの北アフリカのルーツ……僕は今追いかけていて、今いろんなミュージシャンを模索しているんですが。北アフリカの音楽を聴くと、イスラム教の影響が強くあると。そこにフェラ・クティが作り出したアフロビートというジャンルのトライバル感があると。かつ、アメリカやヨーロッパのハードロックであったり……ロックというコンテクストも混ざってくると。いろんなものがミクスチャーされた上で出てきたものが、なぜか日本の民謡と共通性をもちながらポップスやロックとして機能しているっていうのは、すごく自然なんですけど、新しいなと思って。」

「日本のロックやポップスがどういうものなのかというと、あくまでも70年代後半から80年代にかけて欧米のコンテクストが日本に入ってきた中でもみくちゃにされて歌ものとして機能していったのが日本のポップスやロックで。その流れは今も変わらないんだが、ある種、日本のハイカルチャーとして存在している雅楽であったり民謡であったり……そういうものとの融合っていうのはなぜか起きないと。そこが、僕は日本の不思議なところだなと。ただ、日本のハイカルチャーの音楽を平等に捉えて今再構築するっていうのは令和の時代としてあり得るんじゃないかなって気がしているんですよ。古き良きものは今の時代には来ない、混ざらないって思いがちなのが、そんなことないんじゃないのっていう転換期が来ている気がするんですよ。再評価するひとつのサイクルが訪れているっていうのは、カルチャーの中で感じているので。僕はそれを北アフリカのMdou Moctarの音楽を聴いたときに感じたので、2019年的ベストに添えたい。」

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「次。これは迷いどころなんだけど……先生はHIP HOPっていうものを聴くときには、特に海外のHIP HOPを聴くときには歌詞の意味がわからない。日本のHIP HOPもコンテクストとして、アメリカのコンテクストに露骨に影響を受けたHIP HOPとして受け取るから、どこかこう……自分の蚊帳の外で起きていることっていう感じがするんですよ。ローカリズムの、ある種、ローカルヒーローがHIP HOPだと思うから。自分は北海道から東京に出てきて、ロックをやってダンスミュージックに足を突っ込んで、しかも文学っていうところにいる人間からすると、なんか違う世界の話な気がするんだけど。そんな中で、Nujabesさんとか、JAZZとHIP HOPが混ざるとか、混ざった上で届いたものはあるんですけど……(小沢健二feat.スチャダラパーの)「今夜はブギー・バック」とかもそうだけど。これは純粋に音楽としてHIP HOPなんだけどかっこいいなって思った曲を紹介したいと思う。Outkastっていうすごく有名な人たちの曲。」




「これこれ!むっちゃかっこいいの、この曲。これ聴いてて。先生はやっぱり、抜けている感じが好きだよね。あとグルーヴが、HIP HOPのサンプリングのルールの中でも垢抜けているよね。……なんか田舎臭さがあるでしょう?このホーンの感じ。この感じね……アリなのよ、むちゃくちゃアリなの。普通ホーンって主役になるし、耳をつんざかない、ヌル〜い感じで使っていくこの感じがいい。音階少ないけど、その中で遊びとして使っているのはあんまりHIP HOPにはないと思う。これは僕の心を鷲掴みにしたのね。最初グルーヴィーな歌から来て、2番でラップになるのよ。これ好き。これ、すっごい好きね。」

「今回は、基本的に2019年にリリースされた曲を紹介しているわけじゃないぞ! Outkastは1998年の曲だぞ。先生が2019年にビビッときた曲だっていう意味だぞ。勘違いしたら困る。」

「じゃあ、次。先生たちは、音楽界の1970年代後半から1980年初頭にかけては、神々たちの戯れって呼んでいるんだが、その中でもアメリカのSteve Miller Band。このバンドのこの曲。」




「この曲はね……かっこいいよね。あの時代の雰囲気だったり、80年代に向けて変化しつつあるけど、往年のスタイルの中でどうグルーヴを追求していくっていう。何かこう……気合を感じるんだよね。ちょっとサイケが入るんだよね。サイケデリック。……うますぎだよね!基本うまいもんね。全然いまの音楽としても聴けますよね。でも、こういうムーブメントが2018年、2019年と、きているよね。もう少し日本の中のAOR、シティポップ、ファンク、ディスコみたいなところの解釈っていうのはキャッチーだけど、ここにいくんじゃないかなって気はちょっとするね。」

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「じゃあ、次いこうか。……これ難しいのよ。5曲だもんね。いろいろバラつきがある感じでいっているけど……ちょっと日本のミュージシャンを紹介しようか?これはね、みんなチェック、チェックだぞ。日本のバンドなんだが日本にいない。幾何学模様(Kikagaku Moyo)っていうバンドがいるんですね。アムステルダム(オランダ)を拠点にしているのかな。この間、来日してライブをしていたんだけど、僕はちょっと行けなかったんだが。このバンドは……かっこいいね。こういう風に活動できるっていうのはすごくうらやましいなって思うね。」




「かっこいいねー。どのアルバムもかっこいいね。きっと日本のマーケットってフェスの文化が浸透していったことで固定化していったので、どう戦うかっていうのは単純になってきたと。その中でそのマーケットに属さないミュージシャンがどんどん自分たちのマーケットに合う海外に進出していっているのはいい傾向だと思います。もちろん海外にチャレンジするっていうことは、日本のマーケットを無視して海外の影響を露骨に受けて日本のグルーヴっていうものを持っていきながらそこで戦うっていうことだから、すごく大変だし、迎合しすぎると向こうで受け入れられないわけだから、一番難しいところだと思うんだよね。自分たちではわからない日本人らしさみたいなものを客観的に把握しつつも、音楽のコンテクスト、歴史を取り入れていくっていうのは大変な作業。これをうまくやっているっていうのは非常に、この幾何学模様は素晴らしいですよね。」

「僕らは、あえて海外のマーケットを意識して英語で歌ったりしながらチャレンジするつもりは全くないんだけど、世界各国に日本の音楽が好きだっていう人がいるんですよ。そういう層に自分たちの音楽が届いているといいなと思いますが、あえてチャレンジするっていうつもりはあんまりないかな。それよりも、日本のマーケット、日本のシーンの中で何ができるかっていう方が僕は興味があるかな。だけど、幾何学模様はかっこいいなって思う。頑張ってもらいたいなと思う。」

「じゃあ、ラスト!……紹介したいのはまだいっぱいあるんだけど、これいっとこうか。これは、サカナLOCKS!で『プロモーター』の講義(2019年11月1日の講義)を行ったときに、スペシャ(スペースシャワー)の姑息なプロモーターがメンバーを連れてきたっていう。僕はその時点で、こういうことをやる奴らの曲はかけるわけねーよと。しかもスペシャだろと。どんなもんだよって思ったらね。曲を聴いたらびっくりしたと。MONO NO AWARE「テレビスターの悲劇」。」




「僕がMONO NO AWAREが面白いなって思うのは、結構この世代って空虚なんですよ。僕らは洋楽の影響を受けたり、洋楽の影響を受けて生み出された日本のジャパニーズロックっていうものに心頭していると。くるりであったり、スーパーカーであったり、再結成したNUMBER GIRLだったり。そういうコンテクストを持ちながら、洋楽でいうとRadiohead、Oasis、Coldplayといった強力なモンスターバンドが生まれて、ダンスミュージックではDaft Punk、The Chemical Brothers、Fatboy Slim……いろんなものが出てきて。アンダーグラウンドでいったらもっと深いシーンがあることも知ったと。インターネットも出てきて、いろんなことが手に入れられるわっていう世代なんですよ。それが落ち着いてきた下の世代っていうのが、今度は古き良きものを現代にどうフックアップするかっていう……古すぎるというか、そういう世代が現れてきて、HIP HOPが出てきたりラップが出てきたりしている中で、MONO NO AWAREは日本の影響を受けたロックと、RIP SLYMEというポップスの中でのHIP HOPに対する影響があると。そのコンテクストを持っていながらバンドであるっていう存在感っていうのが結構稀有だなと思う。歌っていることも、彼らの世代らしいかといえば違うんだが、多分将来、彼が歌っている「テレビスターの悲劇」っていうタイトルの現象がもっと露骨に大衆に広がり始める時が来るはずだと。それを今達観してストレートに歌えているっていうのも、僕はすごく健気でいいと思う。もちろん、曲の構成とかはもうちょっとシンプルでいいと思うし、やりたい感じは分かるんだが、追いついていないところもまだある。そこもまた隙間として魅力的だなと思う。だから、スペシャは是非、MONO NO AWAREが世の中に届くように育てて欲しいと思う。こういうバンドってポツポツ出てきていて、僕も負けてられないなって気がしながらも、こういうミュージシャンたちがちゃんと評価される健全な音楽シーンっていうのを、音楽専門誌とか、音楽メディアがちゃんと作ってくれたらいいなって思いますね。やっぱり今はフェスが主流で、フェスに出るミュージシャンを雑誌に取り上げるっていう長年続いているこの形態も多分終わりを迎えるはずなんですよ。だから、その先を見ないと。今音楽を愛してくれている人たちに支えられて自分たちのシーンがあるってことをもう一回確認しないと、2020年からの10年間……2020年代っていう年代は非常に危うくなるんじゃないかという危険を感じております。」

そろそろ今回の講義も終了の時間になりました。

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「僕もね、「お前ふざけるな。こんなこと言わないでアルバムちゃんと作れ。2020年代に何枚アルバム作る気でいるんだ。」と、そういうことを言われかねない状況にある。それはもう百も承知で、声高らかに、カモメのように張り上げて言う(笑)。それを言っているうちは……花だよ(笑)。言わなくなって音楽作り始めたら、知らないよ?(笑)」

「2020年代、どんな10年になるんですかね。僕は、2020年代を迎えるにあたって、2010年代、2020年代っていう感覚で見ていこうかと思っていますけど、皆さんはいかがでしょうか。来年1月からは、放送時間が23:27頃からに変わります。他のLOCKS!共々、サカナLOCKS!もよろしくお願いいたします。」

「そして、(SCHOOL OF LOCK!) UNIVERSITYとも今夜でお別れです。ユニバー"ス"ティというこの発音も、もうないんだ……寂しいったらありゃしないね。やしろ教授、本当におつかれさまでした。「山口一郎は変な人」と言っていただきまして。その変な人の変さをより磨いて、ミュージシャンとして一流になっていきたいと思います。また近いうちに、同じ形で番組をやることになりますが、よろしくお願いいたします。」

「さらに、サカナクションからのお知らせです。1月からスタートする全国ツアー SAKANAQUARIUM 2020 "834.194 光"の、アリーナ公演が発表されました!2020年5月1日と2日、神奈川県ぴあアリーナMM。5月8日は大阪城ホールとなります。会場が、オリンピック問題で本当に空いてない!これは大変なんだけど、ここはなんとか押さえました。普通のスピーカーシステムではなく、6.1chでもないんですが、"Speaker +"というサブタイトルで、すごい数のスピーカーを入れて全席をカバーする……死角がないスピーカーシステムでお送りしたいと思いますので、その辺の詳しくはまたお話ししたいと思います。」

「そして、新年最初の授業ですが、サカナクションの数々のMVを手がけます、田中裕介監督をゲスト講師に向かえてお届けします。田中監督は、このツアーの総合演出も担当しますので、その辺のお話も聞いていきたいと思います。」

詳しい情報は、サカナクションのOfficial Web Siteをチェックしてみてください。[→コチラ]

「それでは、SCHOOL OF LOCK! UNIVERSITYでの講義は、ここまで。音で学ぶ、音を学ぶ、音に学ぶ "音学"の講義、サカナLOCKS! サカナクションの山口一郎でした。皆さん、良いお年を!チャオ、チャオー!」

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