【写真説明】素の自分と違うキャラクターを演じる実技に挑戦する学生たち
理系って会話下手?「笑育」で吹き飛ばせ
東京理科大 芸人が出前授業
論理的思考は得意でも、コミュニケーションはちょっと苦手。そんな理系の大学生が、笑いのプロに“伝えるスキル”を学ぶ特別講座「笑育(わらいく)」が、東京・神楽坂の東京理科大で始まった。7月13日までの計9回で、講師役の芸人は松竹芸能(大阪市中央区)が派遣。教員採用試験など就活を控えた学生が楽しく取り組んでいる。
「福山雅治になりきる」
これが、6月1日の第3回笑育の課題だった。
若手物まね女性コンビ「梅小鉢」が、1~4年生約20人に「素とは違う自分を演じる」技を指導した。実演に続き、梅小鉢の2人は「対象を観察して口癖や声の出し方、表情などの特徴をつかみます」「『似てない』と思ったら、早々に決めセリフでごまかす。大事なのは勇気と勢い」とコツを説明した。
陽気に見える2人だが「普段は人見知り。でも、キャラを演じると緊張が消えます」。そう聞いて「コミュニケーションに難あり」と自覚する学生たちも、てらいなく挑む。「腹くくって来てますから」と数学科3年の上林沙穂さん(22)。「なりたい人になる」という仕上げの実技で、真矢ミキ風の「あきらめないで!」が喝采を浴びた。
同学科4年の関野楓馬(ふうま)さん(21)は7月に教員採用試験を受ける。教育学の模擬授業で「声が小さい」「元気がない」と指摘され、受講を決意した。「違う自分を演じることが社会では大切ですね」
笑育は2012年、小中学校への漫才師の出前授業として松竹芸能が始めた。その監修に昨年加わったのが、同大学専任講師の井藤元さん(教育哲学)。約20組の芸人にインタビューし、実は多くが内向的だと知った。戦略を練って人前に出る恥じらいを乗り越え、笑わせる。その工夫や発想力は、社会で必要なコミュニケーション力を磨く参考になると井藤さんは考えた。同大学の学生は、筆記試験より面接で苦戦する人が多く、「何とかしたかった」という。
最終回は、学生たちが自作台本を演じる漫才発表会「理―1グランプリ」。優勝者は新宿角座の舞台に立つことになっている。
※朝日新聞 2016年6月6日 夕刊 (東京本社版)