2015年度「私の折々のことばコンテスト」
(朝日新聞社主催)
鷲田清一賞(高校部門)
部活動の県大会で一番になった友人に「さすがだな」と言ったら怒られた。彼は『さすが』という言葉が嫌いらしい。彼は続けて、「さすがって、あの人はすごい、自分じゃ敵わないって思った時に使うだろ。そんな弱気な言葉は口にするな」と言った。
このとき初めて、僕は彼の強さの理由を知った気がした。彼は決して諦めない。弱音も吐かない。たとえ相手がプロ選手であっても怯まず向き合うだろう。
『さすが』は、一見相手を称えているようで、実際には自分の負けを認め、限界を決めてしまう言葉だ。自分よりも格上の相手に出会った時、その相手を目指して努力することこそ真の強さなのだと、僕は彼のことばに教えられた。
愛知県立時習館高等学校 2年 鈴木 直也