-プロローグ-
「カリスマーーーーーーーーーーー!」
電話を置くなり、ガッツポーズ・アンド・シャウト。
11月上旬、SCHOOL OF LOCK!の職員室。
声の主は、わが校が誇るダイナマイトカリスマ営業 松田部長。
敏腕な営業マンとしてこの学校を支える部長は、なんとこの度、またしてもJASRACへのカリスマ営業に成功。
しかも、松田LOCKS!の継続まで取り付けてきたのだ。
「いやー、番組、継続して、よかったよかった。やっぱり、オレの番組がないとねー! ウンウン!」
もはや、SCHOOL OF LOCK!を支えるためなのか、
自分が番組をやりたいだけなのか定かではないが、とにかく、11月からも、JASRACがこの学校のサポートをしてくれることに。
「松田部長、これからもよろしくお願いしますね。
生徒の皆さんに、引き続き、著作権について伝えていただければ。
最近は特に、身近な存在である、カラオケなんかについての知識もぜひ、知っていただきたいですね」
「オーケーオーケー! バッチリ伝えますよー! ハッハッハー!」
ここで、冒頭のシャウトに戻る。
「カリスマーーーーーーーーーーー!」
受話器を置いた松田部長は、早速、JASRACの方からのお願いに答えるべく、仕事に取りかかる…
「よーし、じゃあ、カラオケにまつわる情報なんかを集めて、
松田LOCKS!で伝えるとするか……」
!?
ここでようやく、松田部長は気づいた。
カラオケにまつわる著作権についての正確な知識が、自分には、ほぼないということに。
再び受話器を手にした松田部長。
「あー、度々スミマセン! 松田です! …いえ、違います、ダイナマイトカリスマの方の松田です!
あ! 先ほどはどうも……。あのー、お電話の後に、よくよく考えてみたんですが……」
こんなことわざがある。
聞くは一時の恥―――
「ワタクシ、カラオケにまつわる著作権について、勉強が足りないなあと思いまして… 改めて、教えていただけないですか?」
聞かぬは、一生の恥。
「あ、そうですか!じゃあ、今からそちらにお伺いしますんで!はい!」
そもそも、“恥”という概念を知らない松田部長は、お気に入りのステンカラーコートを羽織り、颯爽と職員室を後にした。