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ON AIR BLOG / 2016.12.21 update


今日のテーマは「2016年のニュースを『言葉』で振り返る」
解説して頂くのは、毎日新聞論説委員、中村秀明さんです。

2016年は「オリンピックイヤー」でしたが、
同時に「難民」という存在が大きな注目を集めた年でした。
そういう意味で初めての「難民五輪選手団」が印象に残ります。
10人の選手がいましたが、シリアから脱出した18歳の女性、
マルディニさんは「五輪は最大の夢。世界中の難民と希望の代表として戦う」と
記者会見で語りました。そして次のような言葉を残しました。

 「ここにいることを誇りに思う。多くの人から支援をもらった。
私たちの挑戦が全ての人を前向きにさせ、
それぞれの夢を追い続ける力となってほしい」。

オリンピックが人々に何かをインスパイアさせる場であることを改めて感じました。
東京もぜひそういう場であってほしい。
本当の「レガシー」とはそういうことではないでしょうか。

また「難民」「テロ事件」「格差」「離脱」など、
残念ながら世界中で「対立」や「分断」が目立ち、
重苦しい気持ちになることが多い年でもありました。
そうした時にまた、たくさんの人が手をさしのべ、
語りかけるような言葉を発しています。

ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王もその1人です。
この夏、ポーランドのアウシュビッツ収容所跡などを訪れて、

  「平和は橋をかけ、憎しみは壁を築く」
  「壁は分裂を生み、憎しみは増大する。 
   橋は人々を一致させ、人は互いに話し合うことを学び、
   憎しみは対話に場を譲っていく」と発言しました。

また大勢の若者を前にして語りかけています。

  「たくさんの橋をかけてください。
   わたしは人間的な橋がたくさん築かれるのを見たい」と。

私たちは目に見える壁だけでなく心の壁もなくし、
小さくてもいいから橋をかけなくてはいけないと思っています。
しかし、人ひとりの力は小さいし、世の中は劇的に変化するものではない。
そう考えると、「わたしが何を言っても、どう行動しても何も変わらない」と
しらけた気分になることもある。しかし、それは違うよ、と言っている人がいる。
アメリカの大統領選で民主党の候補者選びを最後までもつれさせた米上院議員の
バーニー・サンダース氏の言葉を紹介したい。
 
 「歴史をみて、今までもこれからも、
  変化は決して短時間にやってこないのだということを理解してほしい。
  それは一晩で起こることではありません。戦いは続けなければなりません」

あきらめず粘り続く問題に立ち向かい、
「これでいいのか」と問い続けることの大切さを説いています。

最後に10月に65歳になって、13年ぶりにロックアルバムを発表したスティングです。
テロ事件があったパリの劇場でコンサートもしました。
そんな彼が来日して語ったことです。
 
 「音楽や歌は、共感から生まれるものだ。
  音楽を通じて他人の身になって考えてみたり、
  他人の目から見たものを自分に重ねたりする。文化的、宗教的、
  人種的な分断というのはすべて幻惑なんだ、ということに
  みんなが気づかないといけない」

激動の 2016 年。 来年は世界に光が差す言葉が少しでも増える年にしたいですね。

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