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ON AIR BLOG / 2017.01.04 update


今日のテーマは「アメリカのトランプ大統領誕生で幕が開ける新年の政局」。
政治部編集委員 平田崇浩さんに解説していただきました。

Q 「アメリカのトランプ大統領誕生で幕が開ける新年の政局」ということですが。
A 昨年11月の米大統領選でトランプ氏が当選して以来、「トランプショック」が世界に広がっている。移民やイスラム教徒を排斥する発言を繰り返してきた人が「自由の国」アメリカの大統領になる衝撃は大きい。

Q トランプ大統領の就任は1月20日ということですが、日本にも影響があるのでしょうか。
A 日本としては、トランプ政権になっても、日米同盟を堅持してアジア太平洋地域の平和と安定に協力していきたい。アメリカが「自分の国さえ良ければいい。アジアのことはどうなってもいい」と言い始めると、とても困る。

Q アメリカの協力がないとどうして困るのでしょうか。
A やはり中国や北朝鮮の問題が大きい。中国はいま軍事力をどんどん強化していて、南シナ海や東シナ海で周辺国に脅威を与えている。北朝鮮が核兵器や弾道ミサイルの開発を進めていることを考えても、アメリカがアジア太平洋地域に軍隊を展開させてにらみをきかせていてくれないと、中国や北朝鮮に対する抑止力が弱まってしまう。

Q トランプ政権はどうしようとしているのですか。
A まだよくわからない。トランプ氏本人の言動や新政権の閣僚人事を見ていると、中国にはかなり厳しい、強硬な姿勢をとるのではないか。だからと言って、アメリカがこれまで通りアジア太平洋地域にかかわってくれるのかは不透明。トランプ氏は大統領選前には在日米軍の駐留経費を日本に負担させるとか、日本や韓国の核兵器保有を認める発言もしている。

Q 自分の国は自分で守れということですか。
A アメリカとその同盟国である日本や韓国の協力がこの地域の平和と安定を守る抑止力になっているというのが日本の考え方であり、東南アジアなどアジア太平洋地域の多くの国々もそう考えている。安倍首相が、大統領選でトランプ氏の当選が決まってすぐにニューヨークに会いに行ったのは、そういう日本の考え方をトランプ氏にしっかり伝えておくため。安倍首相は1月中旬にオーストラリア、フィリピン、ベトナム、インドネシアを訪問するが、これもアジア太平洋地域で日米を基軸とした協力関係を強化する狙いがある。

Q トランプ氏はTPPに反対しているそうですね。
A TPP、環太平洋パートナーシップ協定は、簡単に言うと、日米が中心になってアジア太平洋地域に自由貿易圏を作ろうという構想。安倍首相は経済を活性化させる成長戦略の柱に位置付けていたが、トランプ氏が撤退を表明しているので、協定発効の見通しが立たず、日本にとっては大きな打撃。トランプ大統領の誕生は、日本だけでもこれだけいろいろな影響がある。世界的にも経済、政治、安全保障などで大きな変化が予想される。

Q 安倍首相は外交で大忙しですね。
A 安倍首相はトランプ大統領が就任したらすぐにでもアメリカに行って日米首脳会談をしたい。米大統領選の結果が出るまでは、安倍首相はこの1月に衆院解散・総選挙に踏み切るのではという見方もあったが、それどころではない。ロシアとの平和条約交渉も進めないといけない。経済情勢をにらみながら、外交最優先の新年になりそう。

Q 今年は酉年ですが、過去の酉年は政治的にはどうだったのですか。
A 12年前の2005年は「小泉郵政解散」、その前の1993年は「細川連立政権」誕生、ずっと遡れば、敗戦の1945年も酉年。激動の予感もする。混乱のない平和な一年になって欲しいです。

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