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ON AIR BLOG / 2017.11.01 update

今日は米ハリウッドを揺るがしている大物プロデューサーのセクハラ問題について毎日新聞外信部、堀山明子さんに解説して頂きました。

Q;。大物が30年にもわたって女優や女性スタッフに性的ないやがらせをしていたらしいです。
A:米映画界最高峰とされるアカデミー賞で、300以上のノミネートを受ける映画をプロデュースしたというハーベイ・ワインスタイン氏(65)です。自室のホテルに女優を呼んでマッサージしろと命じたり、キスを迫ったり、様々なセクハラをし、告発されそうになると金で示談(もみけし)をしていたということです。

Q:なぜそんなに長い間、表沙汰にならなかったのか不思議ですね。それがなぜ急に問題になったのですか?
A:ハリウッドの影響力を背景に、「訴えたら仕事を干すぞ」と被害者を脅していたので、今まで「公然の秘密」だったと言います。十数年前にも記事になりそうになったことはあるのですが、メディアに圧力をかけてもみけしたとされています。ところが10月5日に、NYタイムズが数人の女優の名前を挙げてセクハラ被害が常習化していたと報道し、この直後にアンジェリーナ・ジョリーさんら50人以上が私もセクハラを受けたと援護射撃しました。「私も被害を受けた」という声が相次いだことで、ワインスタイン氏は自分が創業した映画会社の会長を解任され、ハリウッド映画界からも追放されました。セクハラを知りながら見て見ぬ振りをしたアマゾンの映画スタジオトップも解任されました。

Q:業界のボスが脅す中で、女優たちが「私も」と声を上げるのは相当に勇気が必要だったでしょうね。よく声が集まりましたね。
A:女優のアリッサ・ミラノさんがツイッターで、被害を受けた人は「私も」と言おうと呼びかけ「#MeToo」というハッシュタグをつくったのがきっかです。一般の市民もこれに呼応し、これまで泣き寝入りしていたけれど声を上げるとか、セクハラを黙認した上司を許せないとか、告発が相次ぎました。
この「私も」という合い言葉は、私も被害を受けたと「MeToo」というだけで、具体的にだれからどんな被害を受けたという説明は必ずしも言わなくてもいいというスタイルです。「私も」と言う声が増えることで、加害者やセクハラを黙認した人たちに焦点を当てようというキャンペーンです。もともとは10年前に黒人女性の性的暴力の被害者が、「一人じゃないよ」と被害者を勇気づけるために考えたアイデアでした。自分が被害を受けていなくても連帯感の表明として「MeToo」というのもOKです。

Q:セクハラとかレイプとか、性的被害は訴えるのは相当に勇気が必要で、負担がかかる行為です。被害者のほうが弱い立場だったら、泣き寝入りに追い込まれるケースもまだまだ米国にも日本にもあるので、「私も」という合い言葉は参考になります。
A:だいたいセクハラをする側が上司なので、不利益を被りたくないために我慢し、我慢したことが同意のうえの行為にされ、そのことで被害者が自己嫌悪に陥ってどんどん黙っていく悪循環があるかと思います。なかなか一人で抵抗するのは難しいですが、声を上げた時に「応援するよ」というネットワークがあれば救われる人が多いでしょう。セクハラを容認する社会的風潮は少しでも減るのではないかと思います。

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