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ON AIR BLOG / 2017.12.27 update

毎日新聞 論説委員 中村秀明さんをお迎えし、今年末恒例(?)の「2017年のニュースを『言葉』で振り返る」をテーマにお届けしました。

昨年は「オリンピックイヤー」で「難民」という存在が注目を集めたことを紹介しました。ほかにも「テロ事件」「格差」「離脱」「分断」など、マイナスイメージの言葉が多かったですね。さて、今年はどうでしょうか。まず、トランプ大統領が誕生していろいろな発言が取り上げられましたが、それは置いておいて。同じ政治的リーダーつながりで紹介したいのが、5月に南米のエクアドルという国の大統領になったモレノさんです。この人は車椅子の大統領です。世界で唯一の存在ではないでしょうか?

20年前、40歳代に強盗に銃で撃たれて下半身不随になり、そこから政治家になって活動してきた人です。就任式でモレノさんはこう言っています。「われわれは皆、同じエクアドル人で同じ空気を吸っている。私はすべての人の大統領だ。だれも置き去りにしたりせずに働きます」。国同士だけでなく、国の中での分断や対立も広がっている中でとても新鮮でした。

スポーツ界では女性アスリートが引退した年でもありました。フィギアの浅田真央さん、ゴルフの宮里藍さん、テニスの伊達公子さん。この中で一番年上の
伊達さんがいつも口にして、自分に言い聞かせてきたことがあります。それは「チャレンジし続けることは楽しい」ということです。文字通りに挑戦し続けてきた人だったし、この言葉はすべての人に通じると思います。

芸術の世界ですが、日本生まれのイギリス人カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受けました。彼が授賞講演で言ったことが印象に残っています。「分断が危険なまでに深まる時代、耳を澄まさなければならない。良い作品を書き読むことで壁は打ち壊される。大切なのは物語が、国境や分断を超えて人間が共有するものに訴えかけるということだ」と言っています。文学のことを語っていますが、彼は音楽からも強い影響を受けていて、この講演でもトム・ウエイツやブルース・スプリングスティーンらの名前をあげています。壁を打ち壊す力があるというのは、あらゆる創作活動に共通しますね、LOVEちゃんもそうした意識を持ち続けて活動していると思います。

最後に個人的にいいなあと思った言葉を紹介させてください。「その人がどこから来たかではなく、どこへ行くかが大事なんだよ」。富を持っているかどうか、どこの国で生まれたか、肌のいろがどうか、どんな宗教を信じてきたか、といった過去ではなく、これからどう生きて、何をしたいのか、未来が問われるという意味なのでしょう。テレビに登場したローマの名もないタクシー運転手の言葉でした。世界中からやってくる大勢の客と接してきた人ならでは言葉でした。

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