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ON AIR BLOG / 2018.07.25 update

今日は「自民党総裁選」について。
毎日新聞 編集編成担当補佐 前田浩智さんに解説していただきました。


――今日のお話は自民党総裁選ということですが、総裁選は秋ですよね。
◇日程はおそらく、告示が9月7日、投開票が9月20日になると思いますが、国会が先週終わったことで、総裁選に向けた動きは本格化しています。総裁選は昔から、高校や大学受験みたいですが、「夏が天王山」と言われているんですね。

――どうして「天王山」なんでしょうか。
◇豊臣秀吉と明智光秀の戦いが重要な意味を持ったように、この夏の動き次第で勝敗が決まるからなんです。夏は自民党の各派閥が研修会を開く。そこで総裁選の対応も決定する。自民党には今、7つの派閥がありますが、だれかの支持を表明するのか、それとも自主投票なのか、勝敗の流れをつくるという点でとても重要な意味を持つんです。

――夏ってあまり国会を開かないですよね。
◇それもすごく重要なポイントです。つまり国会にいる必要がないので、自由に選挙運動ができるんです。自民党総裁選の有権者というのは、国会議員と党員です。党員というのは全国にいて、いつでも会って話ができるというわけではない。国会がやっていない今なら、全国を行脚して、政策を訴え、支持を求めることができるというわけです。

――自民党員の方って、どれくらいいるんですか。
◇107万人です。有権者のおよそ1%。自民党は与党ですから、その1%の方だけが日本の首相選びに1票を直接投じることができるのですが、党員票は「地方を制するものが戦いを制す」とも言われるぐらい重要な意味を持っているんです。

――党員票が一番多かった人が必ず勝つという意味ですか。
◇そういうルールではないのですが、ロッキード事件の反省から党員投票が40年前に導入されて以降、党員票で負けた候補が総裁選で勝った事例が1回しかないからなんです。40年前の1978年というのは、当時の福田赳夫首相に大平正芳さんが挑んで、福田首相が党員票でまさかの敗北を喫して、「天の声も、変な声もたまにはある」と述べて、本選を辞退して退陣しました。

――本選で逆転したというのはどなたですか。
◇前回2012年の安倍晋三首相です。党員の票は、前回は合計で300票となるように計算されましたが、安倍首相は87票でした。トップは石破茂元幹事長の165票ですから、安倍首相の完敗です。安倍首相は党員票がない決選投票で勝って総裁になりました。今回は現職の首相としての戦いですから、繰り返すことはもちろん許されません。当選後の政権運営を考えると、普通の「勝利」ではだめで「圧勝」する必要があるでしょう。

――安倍首相、圧勝できそうですか。
◇挑戦者として名前があがるのが、石破さん、岸田文雄政調会長、野田聖子総務相の3人です。石破さんは必ず立候補すると思いますが、岸田さん、野田さんはまだ分かりません。いずれにしても、森友学園、加計学園の問題が焦点となった国会も乗り切りましたので、安倍首相が優位であることは間違いありません。ただ、安倍政権も6年目を迎える中で、地方では「そろそろ終わりにしてもいい」の声も聞かれますし、アベノミクスの効果が地方まであまり及んでいないことも心配材料です。今回は党員の票が405票まで増える予定ですので、党員票をめぐる夏の戦いがやはり重要になってくると思います。

――今回の西日本豪雨は総裁選で問題になったりしますか。
◇石破さんが「災害大国の日本で専任の大臣がいなくていいのか」と防災省の設置を提起しています。防災大臣というポストはあるのですが、他の閣僚ポストと兼務するのが通例です。今の小此木防災相も国家公安委員長を兼ねています。安倍首相サイドは平時から大きな組織を持つことに消極的な姿勢を示していますが、西日本豪雨をはじめとして何十年に1回というような災害が頻発していますし、今回の政府の対応にも課題はたくさん指摘されていますので、総裁選の争点になってくると思います。

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