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ON AIR BLOG / 2018.08.08 update

今日のテーマは「核兵器禁止条約になぜ日本は参加しないのか」
毎日新聞 論説委員 平田崇浩さんさんに解説していただきました。

Q:今日のテーマは「核兵器禁止条約になぜ日本は参加しないのか」です。
A:一昨日 8 月 6 日は広島原爆の日、明日 8 月 9 日は長崎原爆の日。73 年前の 1945 年(昭和 20 年)に原爆が落とされ、その年だけで合わせて 20 万人以上が亡くなった。 生き残った被爆者も後遺症に苦しみ、死没者名簿の人数は 50 万人近くになる。 私も広島出身の被爆 2 世として、毎年 8 月のこの時期を厳粛な気持ちで迎える。

Q:今年の平和記念式典で広島市長が核兵器禁止条約への参加を政府に求めたそうですね。
A:安倍首相は被爆者団体からも参加を求められたが、 「参加しない考えに変わりはない」と拒否した。

Q:世界で唯一の戦争被爆国として「核兵器のない世界」にしようと訴えてきたのでは。
A:核兵器を持っている国が反対しているからという理屈のようだ。

Q: 核兵器を持っている国に「やめなさい」と言わないと「核なき世界」なんて いつまでたっても実現しないのでは?と思ってしまいます。
A:核保有国が参加しなければ核廃絶につなげるのは難しいのも確かだが、 「核兵器は違法」という国際規範ができれば、既に核兵器を持っている国に対しても、これから核兵器を持とうとするかもしれない国に対しても、 大きなプレッシャーをかけられると思うのだが。

Q:核兵器を禁止する条約はこれまでもありましたよね?
A:核拡散防止条約(NPT、1970 年発効)はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、 中国の 5 カ国だけに核保有を認め、ほかの国が核を持つのを禁じている。 核兵器がたくさんの国に拡散するのを防ぐためだが、核兵器の廃絶へ向けた 核軍縮交渉を行うことも定めている。日本は唯一の被爆国として、 核を保有している国と保有していない国の橋渡しをしようとしているのに、 核兵器禁止条約に参加したら橋渡しができなくなると主張している。

Q:核廃絶の交渉って実際進んでいるんですか?
A:NPT 条約が発効して 50 年近くたつのに、 一向に核保有国は核兵器を手放すそぶりすら見せない。 それどころか、イスラエルやインド、パキスタン、さらに北朝鮮が核兵器を保有して、 核戦争が起こる可能性が逆に高まっている。核を保有していない国々が業を煮やして、 これ以上待っていられないと立ち上がり、昨年 7 月に国連で採択したのが 核兵器禁止条約。日本の主張はとても理解が得られるものではない。

Q:日本は結局、アメリカに逆らえない、という印象なんですが・・・
A:日本は自前の核兵器は持っていないが、アメリカの核の傘に守られている。 日米同盟があるから、日本が核攻撃を受けたらアメリカが核で反撃してくれる。 ほかの国はアメリカの核兵器が怖いから日本に核攻撃をしようとは思わない。 これは核抑止と言って、核保有を正当化する考え方。 日本としては北朝鮮の脅威があるのに、核兵器禁止条約に参加してアメリカから 「核の傘はもういらないんだな」と言われたら困るということ。

Q: 唯一の被爆国日本が「核兵器禁止条約」には参加しない。 なんだか変な話です。
A:核兵器禁止条約に署名した国々には日本への失望感があるだろうし、 何よりも国内の被爆者の皆さんが怒っている。

Q:アメリカのオバマ前大統領が「核なき世界」を唱えてノーベル平和賞を もらったはずですが。
A:その後、オバマ前大統領は具体的な政策は打ち出せず、トランプ大統領は逆に 「アメリカが通常兵器で攻撃されたら核で反撃する」と言って核兵器の近代化を進めている。そのトランプ政権に安倍政権は気を遣い過ぎているように見える。

*このままでは「核なき世界」への具体的な道筋は見えてきませんね。 *北朝鮮の核廃棄も道筋はまだまだ遠い。
「核なき世界」はさらにもっと気の遠くなる先の話にも感じました。

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