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ON AIR BLOG / 2018.12.26 update

今日のテーマは「2018年の政治を振り返る」。毎日新聞 論説委員 平田崇浩さんに解説していただきました。

Q:今年はどんな年でしたか。
A:政治で使われる言葉に注目して話をしてみたい。政府が使う国語辞典というものがあるとすると、その中でいくつかの言葉の意味が書き換えられたり、言葉そのものが使われなくなったりした1年だった。

Q:言葉というと?
A:例えば「移民」。一般的な辞書では「労働に従事する目的で外国に移り住むこと」と定義されるが、安倍政権では独自の定義をつくった。日本で働く期限を設けず、家族と一緒に日本で暮らすことを認めるのが安倍政権にとっての「移民」であり、来年4月から受け入れることになった外国人労働者は5年期限で家族の帯同も認めないから「移民」ではない。これは国連などで使われる移民の定義と明らかに異なる。

Q:政府は移民と認めたくないのですね。
A:人口減少で労働力が足りないのだから、外国人の力を借りなければならない。 一方で、安倍首相を支持する右派の人たちは移民受け入れに反対。安倍首相としては「移民ではない」と言い続けることで、ある意味、ごまかそうとしている。

Q:ほかにもそういう言葉があるのですか。
A:「空母」もそうだ。戦闘機が離発着できる軍艦のことを航空母艦、略して空母と呼ぶ。この言葉も政府は「国際的に確立した定義は定まっていない」といって使おうとしない。

Q:日本も空母を持つことが決まったと聞きましたが。
A:現在、ヘリコプターを載せている大型護衛艦を改修して最新鋭ステルス戦闘機F35を載せられるようにすることがこの年末に決まった。国際標準でみれば立派な空母だ。

Q:政府はなぜ空母と呼びたくないのですか。
A:日本の自衛隊は「専守防衛」。外国の領土を直接攻撃できるような武器は持たないようにしてきた。しかし、安倍政権になってから射程の長い巡航ミサイルや大型護衛艦の空母化など、外国を攻撃しようと思えばできるような武器を持とうとしている。

Q:それは憲法違反ではないのですか。
A:空母というと憲法論議になるから「空母ではない」と言いたいのだろう。南西諸島や太平洋の離島地域を守るのに必要だというのなら、正面から議論すればいい。トランプ大統領に武器をたくさん買うようにいわれてF35を100機以上買うことになった。それを活用するのに空母が必要になった。そんな感じに見えてしまう。

Q:トランプさんには今年も世界が困らせられましたね。
A:トランプ大統領は中国と貿易戦争をしているが、日本も米国と貿易交渉をせざるを得なくなった。アメリカ側は幅広い分野のFTA(自由貿易協定)交渉を行うと言っているが、安倍首相はFTA交渉はしないと言ってきた手前もあり、FTAではなくTAG(物品貿易協定)交渉だと言い換えている。

Q:都合の悪いことは言葉を言い換えている感じがしますね。
A:私自身は移民の受け入れも大型護衛艦の空母化も否定するものではない。政府として必要だと判断したのなら、堂々と説明してほしい。ちょうど今日で安倍さんが首相に返り咲いて丸6年。長期政権が続く中で、国民に丁寧に説明する姿勢が薄れてきた1年ではなかったか。

Q:政府の辞書と、一般の国民が使う辞書に載っている言葉の意味が違ってしまうと、国民は政府の言うことが理解できなくなってしまいませんか。
A:そんなふうにはなってほしくない。来年へ向けて長期政権の緩みが気になるところだ。
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