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ON AIR BLOG / 2019.01.30 update

今日のテーマは「安倍総理のアタマは参議院選挙でいっぱい?」。毎日新聞 論説委員 平田崇浩さんに解説していただきました。

Q 今年は参議院選挙があるのですね?

A 一昨日、通常国会が始まって、会期延長がなければ6月26日まで。その後、7月に参議院選挙が行われる見通し。自民党は2013、16年の参院選で勝っているが、特に今回は安倍総理にとってどうしても負けられない。それは今年の干支と関係している。

Q 今年は亥年ですよね。それがどう関係するのですか。

A 亥年というのは12年に一度、夏の参議院選挙と4月の統一地方選が同じ年にある。亥年は自民党には鬼門とも言える年で、参議院選挙の結果が総じて芳しくない。12年前はちょうど第1次安倍政権で、自民党が大敗し、安倍総理は体調不良を理由に退陣した。

Q 安倍総理には苦い思い出があるわけですね。

A 安倍総理の自民党総裁任期は2021年9月まで。今年の参議院選挙を乗り切れば、総裁任期まで首相を続けられる見通しが立つ。こんなところで負けて首相を辞めなければならなくなると、来年の東京五輪・パラリンピックを首相として迎えられなくなるし、念願の憲法改正もできない。

Q だから今年は参議院選挙で勝つことを最優先に考えるということですね。

A しかし、新年早々、安倍総理の思惑を外れることが二つ起きている。

Q 一つは勤労統計の不正問題ですね。

A 全国的な賃金や労働時間などに関する厚生労働省の統計調査で15年間にわたって不正が行われ、失業保険などが本来の額より低く抑えられてきた。それだけでも大きな問題だが、さらに問題なのが去年、こっそりと統計の数字を修正していたこと。理由を説明せずに急に賃金が上がった。ちょうど安倍総理が「アベノミクスで賃金が上がった」と主張していた時期と重なり、意図的な統計の操作ではないかと野党は疑っている。

Q 国会でも問題になりそうですね。

A 野党は徹底的に追及する構え。森友・加計問題も終わっていない。安倍総理にとって国会は今年もできるだけ出席したくない場所になりそう。だからというわけではないだろうが、今年前半は外交日程が目白押し。参議院選挙が近づく6月にはG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)が大阪で開かれる。ホスト国として会議を成功に導き、国際的なリーダーシップをアピールして参議院選挙への弾みをつけようと狙っている。ただ……

Q もう一つ、思惑と違うことが起きている?

A 安倍総理は先週、ロシアを訪問してプーチン大統領と会談したが、北方領土交渉で目立った進展はなかったようだ。その直前まで政権内は、北方四島のうち歯舞群島と色丹島の2島返還で6月までに大筋合意し、大きな外交成果として参議院選挙で訴えようという雰囲気だったのだが、一気にトーンダウンしてしまった。

Q 選挙の前だからこそ、そういう派手な外交成果を打ち上げるとかより、これから国民の暮らしをどうやって守っていくのかを説明してほしいと思うのですが。

A 私もそう思う。今年10月には消費税率が10%に引き上げられる。その目的は少子高齢化や人口減少への対策を進めることにあるはずなのに、なかなか具体的なビジョンが見えてこない。せっかく参議院選挙があるのだから、国会では国民の将来不安に応える議論をしてほしい。

――国会の議論もそういう視点で聞くようにしたいですね。不祥事の追及ももちろん大事ですが、これからの日本を支える若い人や子どもたちのことをだれが真剣に考えているのか、どの政党が具体的な政策を示しているのか、そこを見極めて投票できたらいいなと思います。

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