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ON AIR BLOG / 2019.02.27 update

今日は毎日新聞 論説委員 平田崇浩さんに解説していただきました。

Q きょうのテーマは「米朝首脳会談に日本は複雑?」。ベトナムのハノイでトランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長の会談が行われますね。
A 今夜から明日までの予定。昨年6月の歴史的な初会談で朝鮮半島の非核化に合意したが、具体的な進展があるかどうかが注目される。

Q 非核化の交渉は進んでいるのですか。
A そこが心配だ。そもそも「非核化」とは何か。北朝鮮はこれまで度重なる国連決議に違反して核実験や弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、すでに数十発の核爆弾と、日本を攻撃できる何百発ものミサイルを保有しているとみられている。そうした核兵器とミサイルをすべて廃棄しなければ、キム委員長が約束したはずの「完全な非核化」とは言えない。

Q 北朝鮮がそう簡単に核兵器を手放すでしょうか。
A 今回の首脳会談でキム委員長が何を言うか。一部の施設を廃棄するくらいでは意味がない。すべての核・ミサイル関連施設を申告し、国際機関が査察して廃棄を確認するプロセスが示されなければならない。

Q トランプ大統領がそこまで考えているのかどうか。
A トランプ大統領は非核化について「急いでいない」と発言。昨年以降、北朝鮮が核実験もミサイル発射も行っていないことで「核の脅威はなくなった」とも言っている。もしかしたら、アメリカに届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)さえ廃棄すればいいと考えているのかもしれない。

Q それだけでは日本は困るわけですね。
A トランプ大統領が中途半端な妥協をしてしまうのが日本にとって最悪のシナリオだと外交・防衛の専門家は皆、口をそろえて心配している。核兵器を保有した北朝鮮の脅威にさらされるのは日本だからだ。

Q 安倍首相はトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦したそうですが。
A 昨年の米朝首脳会談後にトランプ大統領から頼まれて推薦したと聞いている。これだけ国際秩序を揺るがしている人をノーベル平和賞にというのは何かの冗談かと思ってしまうが、朝鮮半島の非核化にちゃんと取り組んでくださいと念を押す意味があるのかもしれない。今回の首脳会談に当たって日本政府は、北朝鮮に対する経済制裁を安易に緩和したりしないように米政府に働きかけている。

Q 拉致問題も忘れてもらっては困りますよね。
A 拉致問題についても先週、安倍首相からトランプ大統領に電話で協力を要請した。ただ、トランプ大統領がキム委員長との会談で何を言うかは、アメリカの外交・国防当局もコントロール不能だと言われている。来年の大統領選へ向けて、北朝鮮との外交は大成功だとアピールしたいトランプ大統領がどこまで強くキム委員長に非核化を迫ることができるか、日本政府は心配しながら見守っている。

Q 本当に複雑な気持ちになりますね。キム委員長をうまく説得できないのでしょうか。
A 核兵器やミサイルを放棄していろんな国と仲良くした方が北朝鮮の平和と安全につながるし、何よりも国民が経済的に豊かになれるということをトランプ大統領も強調している。日本も北朝鮮の隣国として粘り強く説得していくしかない。

私たちもトランプ大統領とキム委員長の派手なパフォーマンスに惑わされず、本当に非核化が進むのか、会談の中身をしっかり見極めていきたいですね。米朝首脳会談は日本時間今夜8時半から始まります。

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