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ON AIR BLOG / 2019.07.24 update
今日は「参院選投票率48.80%の衝撃」というテーマで
毎日新聞 論説委員 平田崇浩さんに解説していただきました。



Q 今回の参院選、有権者の半分以上が投票しなかったことになりますね。

A それだけ盛り上がらなかった選挙だといえるでしょう。要因を三つ挙げます。

 ? 野党が弱くて緊張感に欠ける。
 ? 人口減少と少子高齢化が急速に進んでいるのに与党も野党も将来の不安を解消する
  具体的な政策を出さないからまともな議論にならない。
 ?都道府県ごとの選挙区と比例代表制の全国区を組み合わせて、
  複雑になりすぎた選挙制度の問題。

Q とはいえ、これからやれることがまだまだある、と思います。
  年金制度が大丈夫とは全然思えないし、若い人たちの貧困や非正規雇用の問題は
  残ったままだし。
  それで「さあ、憲法改正だ」と言われても、ちょっと違うんじゃないの?
  と思ってしまいます。

A 投票に行かなかった人たちの多くは「どうせ何も変わらない」
  「政治に期待しても仕方ない」というあきらめの気持ちなのかもしれません。
  でも、それによって事実上、現状維持を選択したことになるのです。
  もっといえば白紙委任、
  すべての判断を現在の政権に委ねることにもなりかねないと考えると、
  ちょっと怖くないですか。

Q 若い人たちがあまり投票に行かないのは、政治のことはよくわからないから
  政治家に任せておけばいいという感覚があるのかもしれません。

A 20代、30代の投票率が極端に低い傾向にあるのは確かです。
  では、今の20代、30代が年を取れば
  今の40代、50代と同じくらい投票に行くようになるのでしょうか。
  実はそうではないのではないかという分析もあります。

Q これから先もずっと投票率が下がり続けるということですか。

A 国政選挙の投票率は1990年ごろまで衆院選は70%以上、
  参院選は60%以上というのが普通でした。
  それが急に下がったのは90年代に入ってからです。
  95年の参院選では過去最低の44.52%を記録しています。
  その90年代に成人した人たちが今、40代になっているわけですが、
  近年の選挙では40代の投票率も大きく下がっているのです。

Q その人たちの子どもの世代がいま20代になっているわけですね。

A 親が投票に行かなければ、
  その子どもたちも投票に行こうと思わなくなるのかもしれません。
  投票に行かないのが普通だという意識が、このまま次々と下の世代に
  引き継がれていったらどうなるでしょうか。
  民主主義という政治システムは、国民全員が平等な立場で参加することを前提に
  成り立っています。
  有権者の半分以上が参加しないのが当たり前になってしまったら、
  それでも民主主義国家だと胸を張っていえるのでしょうか。
  投票率の崩壊ともいえる深刻な状況が90年代から始まっていたのです。

Q 幻滅しているだけでは何も変わりませんよね。

A 前回の参院選と比べて今回、自民党は240万票、
  公明党は100万票も比例代表の得票を減らしたのに議席数が減らなかったのは、
  全体の投票率が下がったからです。
  政治への無関心は権力にとって都合のいいものだと考えてください。
  逆に「れいわ新撰組」という新しい政党が2議席を獲得したのは、
  比較的若い世代を中心に220万票を集めることができたからです。
―― 政治的無関心の連鎖を断ち切らないと、
   投票率は40%台からさらに下がってしまうかもしれません。
   年金制度は本当にいまのままでいいの? 
   政府の借金をこのまま増やし続けても大丈夫なの? 
   いまの政治をあきらめてしまったら、
   将来の自分たちにツケが回ってくるということを忘れてはいけません。

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