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毎日新聞 PRESENTS NEWS CONNECTION

ON AIR BLOG / 2019.08.07 update
毎日新聞 PRESENTS NEWS CONNECTION。

毎日新聞 編集編成局次長 塚田健太さんに解説していただきました。




「ヒット曲と景気の不思議な関係」という話題。



A 今日は、曲が聴かれれば聴かれるほど、音楽の世界だけでなく、
  日本の景気も盛り上がるのでは、というお話です。

Q 歌と景気に関係があるんですか。

A そうなんです。
  経済の専門家・エコノミストの大事な仕事の一つが、景気の先行きの予測です。
  普通は、消費や設備投資などの経済統計を分析して予想します。
  それ以外にも、一般の人に経済に興味を持ってもらうため、たとえばお笑いブームや
  口紅の色の流行といった出来事と景気との関係を探って、分析に役立てています。
  今回、みずほ証券のエコノミストの末廣徹さんと稲垣真太郎さんが
  「テキストマイニング」という手法を使って、ヒット曲と景気との関係を探りました。

Q テキストマイニングって何ですか?

A 大量の文章をAI(人工知能)に読み込ませ、どのような言葉がどれだけ使われているかを
  分析して、役に立つ情報を取り出す手法です。
  末廣さんたちは、1980年から2018年までの39年分の
  年間ヒット曲トップ10の歌詞を分析し、各年代で流行った曲の「明るさ」を
  ポイントで示しました。


Q 曲の明るさをポイントで示せるんですか?

A 単語ごとに肯定的な印象を与えるポジティブワードか、否定的なネガティブワードかを、
  東京工業大学研究室作成の辞書に基づいて分類しました。
  ヒット曲で使われるポジティブワードは「好き」が圧倒的に多くて、
  「一番」「ベスト」などが続きます。
  ネガティブワードは「別れ」や「悲しみ」が目立ちました。

Q 明るさのポイントと景気に関係があるのですか。

A はい。一番明るかったのは1980年で、1位はダンシングオールナイトでした。

  無邪気、はずむ、きらめきとポジティブワードが並んでいます。
  その翌年、81年の名目GDP(国内総生産)成長率は調査期間最高の7・3%でした。
  最近では、アベノミクスが始まった12年以降、一時的に明るくなり、
  成長率も加速しました。ところが、ここ数年は暗さが増し、成長率も伸び悩んでいます。

  17年の1位は星野源さんの「恋」で、「見えなくなる」「みにくい」が
  ネガティブワードにカウントされました。
  明るさのポイントは下がり、翌18年の成長率も減速しました。
  全体を通して見ると、明るい歌が流行るとその後3年程度、
  好景気が続く傾向がありました。

Q なぜなんでしょうか。

A さらに分析すると消費と明るさとにより強い関係があることが分かりました。
  「景気は気から」と言いますが、明るい歌が流行ると世の中が明るくなり、
  消費を押し上げ、成長率が高まるという関係があるのではないかと
  末廣さんは見ています。

  そして、7月第1週のトップ10で分析すると、18年よりやや暗くなりました。

Q 景気が悪くなるんですか?


A その可能性もあります。年後半にかけて明るい歌が流行るかに注目したいと思います。
  そこで末廣さんに「1000日の夏」の明るさ分析をしてもらいました。

  トップ10すべてが「1000日の夏」だったとして比較したところ、
  18年と比べかなり明るく、81年以降で見ても最も明るい年になるという結果でした。
  「誇らしい」「眩しい」が明るさを押し上げたほか、
  ネガティブワードが少なかったことも寄与しました。
  1000日の夏は、日本の景気も応援してくれそうです。

―――――1000日の夏の歌い出しのように
「悲しい事があるたびに これでよかったと思うようにしてる」
みたいな、ネガティブワードからの、実はポジティブワード!みたいな言葉は
どうカウントされるんでしょうか!その辺の日本語の妙、みたいな部分まで
分析できると更に面白そうです。

毎日新聞 塚田さんありがとうございました。


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