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毎日新聞 PRESENTS NEWS CONNECTION。

ON AIR BLOG / 2019.10.30 update
毎日新聞 PRESENTS NEWS CONNECTION。

今日は、 毎日新聞、編集編成局次長 塚田健太さんと、
「日米貿易協定は、私たちの暮らしにどんな影響がある?」
そんなテーマでお送りしました。



Q 今開かれている国会で、日本とアメリカの貿易協定について議論されていますね。
  どのような協定なのでしょうか。

A アメリカ産の牛肉や豚肉など農産物の関税を、日本はTPP
  (環太平洋パートナーシップ協定)並みの水準にただちに引き下げます。
  日本車への関税については、アメリカはTPPで約束していた撤廃を見送りました。
  日本の国会が承認すれば年明けにも発効します。

Q アメリカからの輸入品はどの位、安くなるのですか。

A アメリカ産牛肉には現在38・5%の関税がかかっていますが、
  発効と同時に26・6%に引き下げます。
  その後も段階的に下げてゆき、2033年度に9%にします。
  去年12月のTPP発効の時はスーパー各社が還元セールを展開しました。
  大手スーパーの西友は、日米協定も「販売に追い風」と歓迎していて、
  アメリカ産牛肉を大々的に売り出す構えです。
  
  一方、外食大手は値下げに慎重です。使用する牛肉の9割以上が米国産の吉野家は、
  日米協定を「長い目で見てプラス」と歓迎しつつ「米国産の牛肉は独占契約ではない」
  として、他社との仕入れ競争次第では必ずしも安くならないとみています。

Q 和牛生産者などにはどのような影響がありますか。




A オーストラリアと並ぶ輸入量のアメリカ産牛肉が大幅に安くなり、
  現在でも小売段階で3〜5倍程度ある価格差がさらに広がります。
  政府は、国内対策で生産性や品質が上がるので、
  和牛の生産量は変わらないとしていますが、
  JAなどからは人手不足とのダブルパンチで
  大きな影響が出るとの見方も出ています。

Q 国会では安倍総理は「ウィンウィン」と強調していますが、
  野党は「一方的に押し切られた」と批判しています。どっちなんでしょうか。

A 日本はもともと、12か国が参加するTPPで、ほかの国と連携しながら
  アメリカからの農産物自由化の圧力をかわす作戦をとっていました。
  ところが、トランプ大統領がTPPからの脱退を決めたので、
  1対1でアメリカと交渉せざるを得なくなってしまいました。
  日米交渉というトランプ大統領が作った土俵で戦うという不利な状況の中、
  「農産物の関税引き下げはTPPと同じ水準まで」という最低限の防衛線は
  ほぼ守れたという点では、よく戦ったと言えます。
  TPP発効により、オーストラリア産牛肉との競争で不利になっていることに加え、
  来年の大統領選前に成果を出したいトランプ大統領の思惑を
  うまく利用できたと思います。

Q ということは、ウィンウィンなのでしょうか?

A ただ、自由貿易を進めていく立場の日本としては、
  トランプ大統領の作った土俵でしのいだけでは、十分とは言えません。
  たとえば、TPPではアメリカも含めて、自動車と自動車部品の関税撤廃で
  合意していましたが、日米協定では先送りされました。
  自動車の関税が残ると、アメリカの撤廃率は6割程度にとどまります。
  100%撤廃のTPPに比べるととても低い水準です。
  政府は、自動車関税もなくなるという前提で、9割という撤廃率を公表していますが、
  実現するかはこれからの交渉次第で、確約が得られたわけではありません。
  今回の交渉をウィンと呼んで喜ぶより、兜の緒を締めて、
  今後の交渉に臨んでほしいですね。

日米交渉ってなんだかんだいつもアメリカのいいように
されているイメージがありましたが、
今回はそうでもなかったんですね。

確かにこれからも兜の緒を閉めて、
日本の産業の価値を守っていただきたいですね。
毎日新聞 塚田さんありがとうございました。

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