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ON AIR BLOG / 2020.01.29 update
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毎日新聞 論説委員平田崇浩さんの解説でお届けしました。

Q:きょうは今年中に首相が代わる可能性があるということ?「安倍最長政権もそろそろ仕上げの段階?」そんなトピックスです。

A:安倍首相は去年、通算在任期間が8年を超えて、戦前も含む日本の憲政史上最長の政権になりました。若い世代では物心ついてからずっと安倍首相しか知らないという人も多いかと思います。その安倍首相がそろそろ後継者にバトンを渡そうとしているのではないか、というお話です。

Q:首相の任期はまだ残っていますよね。
A:実は、日本の首相は何年以上できないと定めた法律はありません。安倍首相の任期が来年9月までと言われているのは、自民党総裁としての任期なのです。総裁は1期3年で連続3期までと自民党の党則で定められています。

Q:安倍さんが来年9月以降も首相を続けようと思ったら、自民党の党則を変える必要があるのですね。
A:そうなれば「安倍4選」ということになるわけですが、安倍首相は「4選は全く考えていない」と言っています。

Q:「4選」がなくても、来年9月まで首相を続けられるのでは?
A:そうなのですが、最近の安倍首相を見ていると、今年の秋に辞めてもいいと考え始めているのかな、と。

Q:そんなにお疲れのようには見えませんが。
A:疲れているかどうかはともかく、残る任期で何を成し遂げようとしているのかが見えてこないのです。例えば、首相は毎年1月に始まる通常国会で施政方針演説を行うのですが、今年の演説で首相が強調したのは「東京五輪・パラリンピックを成功させて、国民一丸となって新しい時代へ踏み出していこう」という話でした。

Q:「国民一丸となって」というのは何か古めかしいですね。
A:私は戦前の「国威発揚」「一億火の玉」的な違和感を覚えました。裏を返せば、東京五輪を成功させた後の「新しい時代」は後継者に託すからみんな協力してほしいというメッセージなのかな、と。

Q:「桜を見る会」などの問題で長期政権への批判が高まっているということもあるのでしょうか。
A:安倍首相としては内閣支持率がそれなりに高いうちに首相の座を譲って、次の政権に影響力を残したいという気持ちもあると思います。来年まで首相を続けて力を失い、これまで安倍首相を批判してきた石破茂さんが自民党総裁選で勝ってしまうというのが最悪の展開なのでしょう。

Q:そうなる前に自分の言うことを聞いてくれる人に譲っちゃおうと?
A:安倍首相の意中の後継候補は岸田文雄さんだと言われています。自民党の政調会長という役職を務めている人ですね。東京五輪のお祭りムードが残っているうちに首相を辞めるシナリオを政治の世界では「五輪花道論」。後継首相に岸田さんを指名するシナリオは「岸田禅譲論」と言われます。

Q:安倍さんの思い通りにいくのでしょうか。
A:野党が政権に対抗できる態勢をつくれるかどうかだと思います。野党がしっかりしなければ、やっぱり来年まで首相を続けようと思うかもしれません。
野党が本気で政権を倒したいと思うのであれば、少子高齢化と人口減少という大きな社会不安にどう立ち向かうのか、安倍最長政権が示すことのできなかった政策を示すべきなのですが。

――安倍政権がいつまで続くのか、誰が次の首相になるのかが大事なのではありません。私たちが感じている将来への不安をどうやって解消していくのか。新しい時代のビジョンを示すような政策の議論をしてくれなければ、若い世代の政治不信がさらに深まってしまうのではないでしょうか。

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