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FROM LOVE / 2017.02.01 update


今日のテーマは、「トランプ始動、身構える世界と日本」について。毎日新聞 政治部編集委員 平田崇浩さんに解説していただきました。

 
アメリカのトランプ大統領が就任して10日ほどたちました。
トランプ氏は大統領選の期間中、イスラム教徒の入国を禁止するとか、メキシコとの国境に壁をつくってメキシコに費用を払わせるとか、無茶苦茶なことを言っていた。実際に大統領になったら君子豹変、まともになるだろうという見方もあったが、就任初日から、これまでの常識では考えられないことを大統領令とツイッターで連発。

国内外から批判を浴びたら、さらにツイッターで反撃。混乱がどこまで広がるのか、自分の国や地域にどんな影響があるのか、世界が身構えている。イラク、シリア、イランなどのイスラム圏7カ国からの入国を90日間禁止する大統領令は世界に衝撃を与えた。宗教によって差別することは基本的人権を尊重する民主主義の原則に反する。イスラム圏の国々を名指しした入国禁止令は、事実上の宗教差別、イスラム教徒の排除政策だと批判されている。

なぜそのようなことをするのかといえば、難民や移民に紛れてテロリストがアメリカに入ってこないようにするためと言っているが、テロとの戦いと宗教差別は全く別。トランプ氏はツイッターで「中東のキリスト教徒が大量に殺戮されている。この恐怖を続けさせてはならない」。これでは本当に宗教戦争になってしまう。イスラム教徒全体を敵に回すことはテロ組織を利することになりかねないと、トランプ氏を大統領候補に立てた共和党のベテラン議員も批判している。

日本に対しては、日米が中心となって進めてきたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からアメリカが離脱することになり、TPPは発効できなくなった。TPPはアジア太平洋地域の12カ国が関税などの垣根をできるだけなくして一つの大きな市場となり、お互いの経済を活性化させようというもので、安倍首相はアベノミクスの切り札と位置づけてきただけに、大きな打撃。トランプ大統領は日米2国間の経済交渉を求めてくる見通し。

かつて1980年代に激化した日米貿易摩擦の再燃、アメリカへの日本製品の輸出を制限したり、アメリカの安い農産物を買わせようとしたりという時代に逆戻りするのかと懸念されている。当時のレーガン大統領をトランプ氏は尊敬している。

安倍首相は2月10日に訪米。
安倍首相としては、まずは日米同盟の重要性を確認して、南シナ海や東シナ海に軍隊を進出させている中国に日米が協力して対抗することを世界にアピールしたい。経済で日米がギクシャクするのは避けたい。だからと言って、もっとアメリカ車や牛肉を買えだとか、理不尽なことを言われれば黙っているわけにもいかない。最初から難しい首脳会談になる。

ほかの国は、「国境に壁をつくるカネを払え」と一方的に言われたメキシコが怒るのは当然として、中国も「不公正貿易国」と名指しされ、韓国は米韓同盟がどうなるか不安。アメリカの友好国も、そうでない国も、「トランプショック」の影響を見極めている状況。だれに損か、得かということだけではない。 自由と民主主義の理念を掲げて世界のリーダー役を務めてきたアメリカの存在感が薄れていく。その不安が自由主義、民主主義諸国に広がっている。

なんだか世界がどんどんみんなが願っていない方向に進んでいる気がします。国際社会がどこまでひとつになって律することができるか?問われている気がします。

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