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LETTER from UK ロンドンの街の“今”をお届け。

2018年10月14日(日)
テート・モダン発! TANIA BRUGUERA展:10,143,351
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サンセットの時間が日々加速するロンドン。夕方6時を回ればもう暗闇に。悲しくも、いそいそと冬支度を始めねばならない時期になりました。

芸術の秋。今月、最も物議を醸し出したコントロバーシャルな展覧会をご紹介! テムズ河南岸に位置するテート・モダン。入場無料の巨大なスペース、ターバインホール(Turbine Hall)で開催中のキューバ人インスタレーション・アーティスト、タニア・ブルゲラによるエグジビション。タイトルは「10,143,351」。

話題となった理由は、絵画/画像/映像といった視覚に訴えるものが一切無い展覧会だということ。そして、題名の10,143,351とは、国際移住機関が去年発表した、世界の移住者の合計数に当たります。一千万人以上が自国を離れ、移住生活をスタート。しかし移住にまつわる死者数も日々急増加しており、世界的に深刻な問題に。

展覧会は3つのパートから構成されています。まずは、シリアを脱出した一難民のポートレートを浮き彫りにした温度差対応のビニール床。鑑賞者は靴を脱ぐことを強制され、足の温度によって映し出されるその難民の顔にエクサイトしていきます。

2つ目は、涙を流すルーム。小さな白い部屋に入った途端に、ユーカリ・メンソールエキスによって、涙腺が突如としてゆるみます。涙を流すことによって、個々の魂のバリアを開放し、平坦で平等なグランドに万人を佇ませるのが目的と。

そして3つ目はアブストラクトな超重低音のスピーカー郡。グレー、緑に輝きながら天井に向かって連なる極上スピーカーに、オーディエンスは身を委ね、そこに何を感じるのか、体の底から体感していきます。

目に見えなくとも、ここに存在する移民問題はさらに深刻化している。それをまさに五感とフィジカル面で感じさせてくれる展覧会。とはいえ、実際のところ、自ら涙を流してまでも心動かされるのかは、、、良くも悪くも個人次第です。

テートは、このターバインホール以外にも、無料で楽しめるアートは満載。例えばピカソ、1937年の名作「泣く女」は代表作品の一つ。はたまた上階のテラスへ出てみれば、テムズ河にセントポール寺院がくっきりと。愉しみ方は、貴方次第百通り。まさにソウルフリーな自由空間ですね。

https://www.tate.org.uk/visit/tate-modern

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