Every Sunday 12:30-12:55 JFN 38station

LETTER from UK ロンドンの街の“今”をお届け。

2020年10月11日(日)
色を超えた反転世界の美 @ Barbican Toyin Ojih Odutola “A Countervailing Theory”
色を超えた反転世界の美 @ Barbican Toyin Ojih Odutola “A Countervailing Theory”main画像

今はもう秋。薄手のコートは必須、マフラー、手袋もちらほらお目見えに。ここ数日、ロンドンは再ロックダウンの噂で持ち切りで、一部映画館も悲しいことに一時的閉鎖に。

芸術の秋は?というと、その点は力強いロンドン。美術館、ギャラリーは人数制限をしっかり管理のうえ、今も安全にオープン。無料エキシビション含め、必ず事前予約が必要になります。館内は徹底的に一方通行、もちろんマスク着用とソーシャルディスタンスはマストです。

今回はこの秋無料で楽しめる注目の新鋭アートをご紹介。バービカンのカーブ・ギャラリーで開催中の米ナイジェリア系女性アーティストToyin Ojih Odutolaによる展覧会「A Countervailing Theory」。

カーブ・ギャラリーとはその名の通り、90メートルにも渡る曲線壁に沿ってアートが展開される場所。今回はモノクロ40作品とともに、英ガーナ系アーティストPeter Adjayeによる秀逸サウンドスケープも楽しめます。

タイトルの“A Countervailing Theory”とは「対抗理論」。政治経済学でよく使われる用語ですが、つまりは「スクリプトの反転」。彼女がチョーク、パステルで描いたこの神秘的な世界とは、例えば女性が支配者に、男性が仕える側になったとしたら、というもの。

あらゆる事象をフリップオーバー=反転できるとしたら、と問うエキシビション。男性中心社会が女性中心になったとしたら、黒いバラが白いバラに変わることができたら、この世の中の赤全てが白になったとしたら、etc。その節々のコンフリクトが白黒作品にて紡がれて行きます。

この紬をよりインタラクティブに演出するのが、Peter Adjayeによるサウンドスケープアルバム「Ceremonies Within」。12トラックでコンポジションされた作品は、エレクトロに様々な古典が融合し、ストリングス、風や水による自然音、そして西アフリカのオリジナル楽器、ダブルベルやウッドロック、シリンダードラムなどが多様にミックスされています。

迫力のアートに圧巻のサウンドスケープ 。そしてテーマは反転世界。この空間に、今この時、ロンドナーは何を見るのでしょう。各々の思いは徒然なるままに。誰にとっても、極く深く考えさせられるインスピレーションたっぷりの芸術展です。

色を超えた反転世界の美 @ Barbican Toyin Ojih Odutola “A Countervailing Theory”sub画像2

色を超えた反転世界の美 @ Barbican Toyin Ojih Odutola “A Countervailing Theory”sub画像3

色を超えた反転世界の美 @ Barbican Toyin Ojih Odutola “A Countervailing Theory”sub画像4