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2025.06.01
古いのに新しい! 伝統的工芸品
あなたの地元の伝統的工芸品、ご存じですか?
伝統的工芸品は、その歴史、技術、技法などを守りながら、現代でも使えるデザインとして、今も受け継がれています。
今回は、「古いのに新しい! 伝統的工芸品」というテーマで学びました。
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伝統的工芸品は、その歴史、技術、技法などを守りながら、現代でも使えるデザインとして、今も受け継がれています。
今回は、「古いのに新しい! 伝統的工芸品」というテーマで学びました。
(杉浦)
日本には昔から生活の中で使われてきた「伝統工芸品」がたくさんあるよね。佳菜子ちゃんは以前、興味があるって言ってたけど、どんなものを思いつく?
(村上)
いろいろありますけど…。パッと思いついたのが、広島県の「熊野筆」とか。お化粧用の筆もあって、結構皆さん「一本は持っておきたい」みたいな。
(杉浦)
うちにもあるよ! メイクする時にすごくタッチがいいよね。僕も、仕事で京都に行ってるから「西陣織」とか。もう、数え切れないくらいあるよね。あと、旅行へ行くと、お土産屋さんでよく見かけるよね。箱根の「寄木細工」とか、岩手の「南部鉄器」、沖縄県の「三線」も伝統工芸品だよね。
(村上)
そうですねー。私、家にもたくさんあるんですけど、沖縄の焼き物の「やちむん」。めっちゃかわいくって。結構重みがある感じなんですけど、一つひとつ、いろんな形の器があるので、大好きなんです。最近だと、伝統工芸品を作る技を使った新しい製品だったり、現代的なデザインのものとかも作られるようになって、若者や外国のかたにも人気が出ているなーって思いますよね。
(杉浦)
海外のかたへの受けもいいよね。2021年開催の東京オリンピックでも卓球台の脚の部分は石川県の「輪島塗」が使われてたんだよね。表彰状の紙は、岐阜県の「美濃和紙」が使われてて、当時話題になったよね。
(村上)
欲しいですねー(笑) 東京オリンピックがよかったー。
(杉浦)
東京オリンピックならではだからね! でもね、佳菜子ちゃん、こうした日本が誇る伝統工芸品の生産量とか担い手って、減少傾向にあるんだって。
(村上)
うーん…。ロケとかでお邪魔した時にいろんなお話しを聴くんですけど。やっぱり伝統工芸品って、使う材料もこだわっていたり丁寧に作られていますから、お手入れが結構大変で、お値段も少々張るイメージってありますよね。日用品って、今は低コストの大量生産品がいっぱいあるから、利用する人も減ってきているのかなーって感じますよね。
(杉浦)
いろんなかたに知ってほしいよね…。これは農業と同じで職人さんの高齢化、そして後継者不足も深刻なんだよね。それに加えて日本は自然災害が多いじゃない。2024年に発生した能登半島地震では、石川県の輪島塗の事業者が被災して、職人さんたちの日常はまだ戻ってきてないんだって。
(杉浦)
そこで、今日は多くのかたに、改めて伝統工芸品のすばらしさを知ってもらいたくて、このかたを講師にお招きしました。経済産業省伝統的工芸品産業室の久保田 裕子さんです。
(村上)
あの、ちょっと気になっていたので伺いたいんですけど、久保田さんは「伝統的工芸品産業室」のかたで、今日の番組のテーマタイトルも「伝統的工芸品」ですよね? この「伝統工芸品」と「伝統的工芸品」って何が違うんでしょうか?
(久保田)
はい。日本には、昔から生活の中で使われてきた工芸品がたくさんあるんですけれども、先ほどお二人がお話されていたように、その生産量とか担い手は減少傾向なんです。そのため、それらの製品を作っている産業を守っていく、技術・技法を伝承していくために、経済産業大臣が「伝統工芸品」を指定する制度があるんです。その指定を受けたものを「伝統的工芸品」と呼んでいます。
(村上)
なるほど! そういうことだったんですね。どのようなものがあるんですか?
(久保田)
伝統的工芸品の中には、衣料品に用いられる織物とか染色品、食器などに用いられる陶磁器や漆器、いわゆる漆の器を指します。このほかに、家具などの木工品のジャンルや、先ほども出ました和紙とか、仏壇や人形、雛人形やこけしなどもあるんですよ。
(杉浦)
佳菜子ちゃん、現在までに指定されている伝統的工芸品の数は、なんと243品目で、ジャーン! こちらのマップにその品目が紹介されています。全都道府県に一つは必ずあるんじゃないかな。
(村上)
すごい! 私、この鬼瓦(愛知県「三州鬼瓦工芸品」)のところは、ロケでお邪魔させていただいて。それこそ、キャラクターとコラボしたりとか、小さなキーホルダーみたいになってたり、(新たな製品になって)現代にも使えるように進化してるの見てきました。
(杉浦)
伝統的工芸品が現代バージョンにみたいな。いいね、ニーズも広がるし。
(村上)
面白いなと思いました! 太陽さんの地元は?
(杉浦)
大阪だから…「堺打刃物」。あと…、大体ロケ行ったなー。「大阪浪華錫器」(おおさかなにわすずき)、錫の器。これも錫を溶かすところから体験させてもらった。あと「大阪欄間」とかね。
(村上)
やっぱり地元だとロケ行きますよねー!? 私が愛する宮古島にも、織物「宮古上布」が指定されてるんですけど、宮古島に行った時に、展示されている所にも見に行ったりしました。このマップを見てると面白いですね! ちなみに、伝統的工芸品に指定される具体的な条件って何ですか?
(久保田)
はい。伝統的工芸品に選ばれるには、五つの要件を満たす必要があります。一つ目は人々が暮らしの中で使う「日用品であること」。二つ目は「おもに手工業であること」、手作業ということですね。三つ目は「伝統的な技術・技法であること」。伝統的というのは具体的には100年以上の歴史を有しているという意味です。四つ目は「伝統的に使用されてきた原材料であること」。それから五つ目が、「一定の地域で産地形成がなされていること」です。
(杉浦)
指定品目になりますと、「伝統的工芸品」の名称が使えて、製品にシンボルマークを付けられるようになるんだって。佳菜子ちゃん、これちょっと見てみてください。
(村上)
知ってます! これは、伝統の「伝」の漢字が上にあって、日の丸のモチーフが下にあるマーク。分かりやすいですねー。
(久保田)
はい。このマークは日本が誇る匠の技術と品質を保証する信頼の証となっています。
(村上)
やっぱりこのマークが工芸品の横に飾ってあったり、工芸品のパンフレットとかに載っていると、この工芸品は「いい物」なんだなって思います。
(杉浦)
そうだよね。目印になるしね。伝統的工芸品は、ただ「歴史がある」「日本の文化を感じる」という理由だけで100年以上も使われ続けてるわけじゃなくて、実際、機能面が優れているものが多いんだよね。そこで、ここからは伝統的工芸品の機能面や斬新なデザインについても学んでいきましょう!
(村上)
久保田さん、伝統的工芸品は機能面も優れているんですよね。
(久保田)
はい。日本の伝統的工芸品が長きにわたり人々に愛されているのは、機能が優れていることも理由の一つです。例えば、漆製品は木に漆を塗り重ねて作る工芸品で、皆さんにはお椀とかお盆などがなじみ深いと思います。漆を塗ると耐熱性とか耐久性が向上するなど優れた機能が付与されるだけでなくて、独特の色味とか艶が生まれて、温かみがあるのも魅力です。また、古くから抗菌性があると考えられていたため、お節料理を保存する重箱にも利用されています。
(村上)
そうなんだ。漆って抗菌性があるんですか?
(久保田)
はい。漆の抗菌性に関しては以前から科学的に証明されていたんですけれども、新型コロナウイルス感染症が拡大したときに、改めて検証したところ、食中毒を起こす菌への抗菌性とか、新型コロナウイルスへの抗ウイルス性が確認されています。
(村上)
昔の人ってすごいですね! 科学的に調べたわけでもないのに、漆のすばらしさに気付いて使っていた、ということですもんね。
(久保田)
しかも、漆製品は日常生活で長年使っていくと、艶が増してきて味わい深くなっていきますよね。それに、傷が付いたり欠けてしまった場合でも、修復して使い続けることができるので、今のSDGsの考えにもマッチしているものです。
(村上)
今の時代にぴったりですね。それで最近は、より一層外国のかたや若いかたの興味を惹きつけているのかもしれないですね。
(杉浦)
他の伝統的工芸品でも、最近は現代的なデザインのものが登場したり、これまでにない製品がどんどん誕生していますよね。
(久保田)
はい。例えば、福島県の「大堀相馬焼」という伝統的工芸品には、二重焼という技法を使った湯呑みがあります。一回り大きさの違う器を重ねて焼くことで二重になっている湯呑みで、飲み物が冷めにくく手が熱くならないという長所があります。最近は、この長所をいかしたタンブラーなども登場しているんです。
(杉浦)
こちらに写真があるんですけど、佳菜子ちゃん見たことある?
(村上)
私、見たことがあるかもしれない。
(杉浦)
上の蓋がシリコン製で、馬の絵がワンポイントで描かれているんだけど、これは「走り駒」といって、大堀相馬焼の代表的なシンボル。
(村上)
へー、おしゃれ! かっこいい。こうやって蓋付きのタンブラーは持ち歩けるからいいですよね。
(久保田)
他にもいろいろありまして、新潟県の「加茂桐箪笥」の技術で作られたスマートフォン用のスピーカーとか。
(杉浦)
木だ! えっ、これスピーカーなんですか?
(久保田)
真ん中にスマートフォンを入れて、横から音が出る仕組みになっています。
(村上)
エコにもなりますよね。
(杉浦)
ぬくもりを感じるよね。
(久保田)
それと、例えば、長崎県の「波佐見焼」には、陶器そのものがコーヒーフィルタになっているので、紙を入れないでも使えるようになっているものがあります。
(杉浦)
紙を入れずに!? 知恵ですね。
(久保田)
あと、宮崎県とか鹿児島県で作っている「本場大島紬」は、洋装のコートなどを作っていて、現代の人でも着ることができるようになっています。伝統的工芸品は、その技術をいかした製品のバリエーションが、どんどん今、増えているところです。
(杉浦)
知りたい欲が増えたね。
(村上)
やっぱり、昔から大事にされてきたものと、今、必要なものが合わさったものは、かわいいし、テンションが上がるじゃないですか。
(杉浦)
伝統のある革新だよね。
(村上)
「古いのに新しい」っていうのが、くすぐられるというか。だからこそ、伝統的工芸品の可能性って、まだまだ広がっていきそうですね。
(杉浦)
広がってるよ! 今まさに。実はですね、伝統的工芸品のすばらしさを世界中の方々に知ってもらいたくて、現在開催中の大阪・関西万博では、石川県の輪島塗で作られた直径1メートルの巨大な地球儀が展示されているんです。
(村上)
きっと日本人もですが、外国のかたたちが見たら圧倒されますよね。
(杉浦)
輪島塗で1メートルだからね。これ、見に行きたいなー。
(久保田)
是非、見に行っていただきたいですね。こちらは、「夜の地球 Earth at Night」という作品名で、宇宙から見た夜の地球、夜景になっています。漆黒の闇の部分を漆の黒で表現して、文明の明かりという、夜景の明かりの部分を沈金という、金を貼ることで表現しています。こちらの地球儀は万博会場中心の「静けさの森」の近くで常時展示されていて、予約なしで鑑賞することができます。そして8月には、日本のたくさんの「伝統的工芸品」を集めて、展示や職人さんの指導による製作体験ができるイベントの開催も予定していますので、是非、こちらも参加いただきたいと思います。
(杉浦)
伝統工芸士さんが来られるってことですね。貴重な機会だねー。伝統的工芸品のすばらしさを知るきっかけになると思いますので、万博に行かれるかたは、是非立ち寄ってみてもらいたいですね。
(久保田)
はい。是非、多くの方々に伝統的工芸品のすばらしさを味わって、好きになってほしいなと思います。
(村上)
今日の話を聞いて特に注目したのは、私は、「あなたの地元の伝統的工芸品はなんですか?」。みんなのを知りたいです、っていう。
(杉浦)
そうだよね。実は何だろう?っていうのはあるもんね。
(村上)
そう、聞かれると「何だろう?」ってなっちゃうので、それで調べて知ってもらえたらいいなと思いました。
(杉浦)
きっかけにね。僕は「日本の宝 伝統的工芸品を知ろう!」です。やっぱり、知ることが大事だよね。
「 関連リンク 」
・伝統工芸 青山スクエア
・経済産業省(METI)「伝統的工芸品」
日本には昔から生活の中で使われてきた「伝統工芸品」がたくさんあるよね。佳菜子ちゃんは以前、興味があるって言ってたけど、どんなものを思いつく?
(村上)
いろいろありますけど…。パッと思いついたのが、広島県の「熊野筆」とか。お化粧用の筆もあって、結構皆さん「一本は持っておきたい」みたいな。
(杉浦)
うちにもあるよ! メイクする時にすごくタッチがいいよね。僕も、仕事で京都に行ってるから「西陣織」とか。もう、数え切れないくらいあるよね。あと、旅行へ行くと、お土産屋さんでよく見かけるよね。箱根の「寄木細工」とか、岩手の「南部鉄器」、沖縄県の「三線」も伝統工芸品だよね。
(村上)
そうですねー。私、家にもたくさんあるんですけど、沖縄の焼き物の「やちむん」。めっちゃかわいくって。結構重みがある感じなんですけど、一つひとつ、いろんな形の器があるので、大好きなんです。最近だと、伝統工芸品を作る技を使った新しい製品だったり、現代的なデザインのものとかも作られるようになって、若者や外国のかたにも人気が出ているなーって思いますよね。
(杉浦)
海外のかたへの受けもいいよね。2021年開催の東京オリンピックでも卓球台の脚の部分は石川県の「輪島塗」が使われてたんだよね。表彰状の紙は、岐阜県の「美濃和紙」が使われてて、当時話題になったよね。
(村上)
欲しいですねー(笑) 東京オリンピックがよかったー。
(杉浦)
東京オリンピックならではだからね! でもね、佳菜子ちゃん、こうした日本が誇る伝統工芸品の生産量とか担い手って、減少傾向にあるんだって。
(村上)
うーん…。ロケとかでお邪魔した時にいろんなお話しを聴くんですけど。やっぱり伝統工芸品って、使う材料もこだわっていたり丁寧に作られていますから、お手入れが結構大変で、お値段も少々張るイメージってありますよね。日用品って、今は低コストの大量生産品がいっぱいあるから、利用する人も減ってきているのかなーって感じますよね。
(杉浦)
いろんなかたに知ってほしいよね…。これは農業と同じで職人さんの高齢化、そして後継者不足も深刻なんだよね。それに加えて日本は自然災害が多いじゃない。2024年に発生した能登半島地震では、石川県の輪島塗の事業者が被災して、職人さんたちの日常はまだ戻ってきてないんだって。
(杉浦)
そこで、今日は多くのかたに、改めて伝統工芸品のすばらしさを知ってもらいたくて、このかたを講師にお招きしました。経済産業省伝統的工芸品産業室の久保田 裕子さんです。
(村上)
あの、ちょっと気になっていたので伺いたいんですけど、久保田さんは「伝統的工芸品産業室」のかたで、今日の番組のテーマタイトルも「伝統的工芸品」ですよね? この「伝統工芸品」と「伝統的工芸品」って何が違うんでしょうか?
(久保田)
はい。日本には、昔から生活の中で使われてきた工芸品がたくさんあるんですけれども、先ほどお二人がお話されていたように、その生産量とか担い手は減少傾向なんです。そのため、それらの製品を作っている産業を守っていく、技術・技法を伝承していくために、経済産業大臣が「伝統工芸品」を指定する制度があるんです。その指定を受けたものを「伝統的工芸品」と呼んでいます。
(村上)
なるほど! そういうことだったんですね。どのようなものがあるんですか?
(久保田)
伝統的工芸品の中には、衣料品に用いられる織物とか染色品、食器などに用いられる陶磁器や漆器、いわゆる漆の器を指します。このほかに、家具などの木工品のジャンルや、先ほども出ました和紙とか、仏壇や人形、雛人形やこけしなどもあるんですよ。
(杉浦)
佳菜子ちゃん、現在までに指定されている伝統的工芸品の数は、なんと243品目で、ジャーン! こちらのマップにその品目が紹介されています。全都道府県に一つは必ずあるんじゃないかな。
(村上)
すごい! 私、この鬼瓦(愛知県「三州鬼瓦工芸品」)のところは、ロケでお邪魔させていただいて。それこそ、キャラクターとコラボしたりとか、小さなキーホルダーみたいになってたり、(新たな製品になって)現代にも使えるように進化してるの見てきました。
(杉浦)
伝統的工芸品が現代バージョンにみたいな。いいね、ニーズも広がるし。
(村上)
面白いなと思いました! 太陽さんの地元は?
(杉浦)
大阪だから…「堺打刃物」。あと…、大体ロケ行ったなー。「大阪浪華錫器」(おおさかなにわすずき)、錫の器。これも錫を溶かすところから体験させてもらった。あと「大阪欄間」とかね。
(村上)
やっぱり地元だとロケ行きますよねー!? 私が愛する宮古島にも、織物「宮古上布」が指定されてるんですけど、宮古島に行った時に、展示されている所にも見に行ったりしました。このマップを見てると面白いですね! ちなみに、伝統的工芸品に指定される具体的な条件って何ですか?
(久保田)
はい。伝統的工芸品に選ばれるには、五つの要件を満たす必要があります。一つ目は人々が暮らしの中で使う「日用品であること」。二つ目は「おもに手工業であること」、手作業ということですね。三つ目は「伝統的な技術・技法であること」。伝統的というのは具体的には100年以上の歴史を有しているという意味です。四つ目は「伝統的に使用されてきた原材料であること」。それから五つ目が、「一定の地域で産地形成がなされていること」です。
(杉浦)
指定品目になりますと、「伝統的工芸品」の名称が使えて、製品にシンボルマークを付けられるようになるんだって。佳菜子ちゃん、これちょっと見てみてください。
(村上)
知ってます! これは、伝統の「伝」の漢字が上にあって、日の丸のモチーフが下にあるマーク。分かりやすいですねー。
(久保田)
はい。このマークは日本が誇る匠の技術と品質を保証する信頼の証となっています。
(村上)
やっぱりこのマークが工芸品の横に飾ってあったり、工芸品のパンフレットとかに載っていると、この工芸品は「いい物」なんだなって思います。
(杉浦)
そうだよね。目印になるしね。伝統的工芸品は、ただ「歴史がある」「日本の文化を感じる」という理由だけで100年以上も使われ続けてるわけじゃなくて、実際、機能面が優れているものが多いんだよね。そこで、ここからは伝統的工芸品の機能面や斬新なデザインについても学んでいきましょう!
(村上)
久保田さん、伝統的工芸品は機能面も優れているんですよね。
(久保田)
はい。日本の伝統的工芸品が長きにわたり人々に愛されているのは、機能が優れていることも理由の一つです。例えば、漆製品は木に漆を塗り重ねて作る工芸品で、皆さんにはお椀とかお盆などがなじみ深いと思います。漆を塗ると耐熱性とか耐久性が向上するなど優れた機能が付与されるだけでなくて、独特の色味とか艶が生まれて、温かみがあるのも魅力です。また、古くから抗菌性があると考えられていたため、お節料理を保存する重箱にも利用されています。
(村上)
そうなんだ。漆って抗菌性があるんですか?
(久保田)
はい。漆の抗菌性に関しては以前から科学的に証明されていたんですけれども、新型コロナウイルス感染症が拡大したときに、改めて検証したところ、食中毒を起こす菌への抗菌性とか、新型コロナウイルスへの抗ウイルス性が確認されています。
(村上)
昔の人ってすごいですね! 科学的に調べたわけでもないのに、漆のすばらしさに気付いて使っていた、ということですもんね。
(久保田)
しかも、漆製品は日常生活で長年使っていくと、艶が増してきて味わい深くなっていきますよね。それに、傷が付いたり欠けてしまった場合でも、修復して使い続けることができるので、今のSDGsの考えにもマッチしているものです。
(村上)
今の時代にぴったりですね。それで最近は、より一層外国のかたや若いかたの興味を惹きつけているのかもしれないですね。
(杉浦)
他の伝統的工芸品でも、最近は現代的なデザインのものが登場したり、これまでにない製品がどんどん誕生していますよね。
(久保田)
はい。例えば、福島県の「大堀相馬焼」という伝統的工芸品には、二重焼という技法を使った湯呑みがあります。一回り大きさの違う器を重ねて焼くことで二重になっている湯呑みで、飲み物が冷めにくく手が熱くならないという長所があります。最近は、この長所をいかしたタンブラーなども登場しているんです。
(杉浦)
こちらに写真があるんですけど、佳菜子ちゃん見たことある?
(村上)
私、見たことがあるかもしれない。
(杉浦)
上の蓋がシリコン製で、馬の絵がワンポイントで描かれているんだけど、これは「走り駒」といって、大堀相馬焼の代表的なシンボル。
(村上)
へー、おしゃれ! かっこいい。こうやって蓋付きのタンブラーは持ち歩けるからいいですよね。
(久保田)
他にもいろいろありまして、新潟県の「加茂桐箪笥」の技術で作られたスマートフォン用のスピーカーとか。
(杉浦)
木だ! えっ、これスピーカーなんですか?
(久保田)
真ん中にスマートフォンを入れて、横から音が出る仕組みになっています。
(村上)
エコにもなりますよね。
(杉浦)
ぬくもりを感じるよね。
(久保田)
それと、例えば、長崎県の「波佐見焼」には、陶器そのものがコーヒーフィルタになっているので、紙を入れないでも使えるようになっているものがあります。
(杉浦)
紙を入れずに!? 知恵ですね。
(久保田)
あと、宮崎県とか鹿児島県で作っている「本場大島紬」は、洋装のコートなどを作っていて、現代の人でも着ることができるようになっています。伝統的工芸品は、その技術をいかした製品のバリエーションが、どんどん今、増えているところです。
(杉浦)
知りたい欲が増えたね。
(村上)
やっぱり、昔から大事にされてきたものと、今、必要なものが合わさったものは、かわいいし、テンションが上がるじゃないですか。
(杉浦)
伝統のある革新だよね。
(村上)
「古いのに新しい」っていうのが、くすぐられるというか。だからこそ、伝統的工芸品の可能性って、まだまだ広がっていきそうですね。
(杉浦)
広がってるよ! 今まさに。実はですね、伝統的工芸品のすばらしさを世界中の方々に知ってもらいたくて、現在開催中の大阪・関西万博では、石川県の輪島塗で作られた直径1メートルの巨大な地球儀が展示されているんです。
(村上)
きっと日本人もですが、外国のかたたちが見たら圧倒されますよね。
(杉浦)
輪島塗で1メートルだからね。これ、見に行きたいなー。
(久保田)
是非、見に行っていただきたいですね。こちらは、「夜の地球 Earth at Night」という作品名で、宇宙から見た夜の地球、夜景になっています。漆黒の闇の部分を漆の黒で表現して、文明の明かりという、夜景の明かりの部分を沈金という、金を貼ることで表現しています。こちらの地球儀は万博会場中心の「静けさの森」の近くで常時展示されていて、予約なしで鑑賞することができます。そして8月には、日本のたくさんの「伝統的工芸品」を集めて、展示や職人さんの指導による製作体験ができるイベントの開催も予定していますので、是非、こちらも参加いただきたいと思います。
(杉浦)
伝統工芸士さんが来られるってことですね。貴重な機会だねー。伝統的工芸品のすばらしさを知るきっかけになると思いますので、万博に行かれるかたは、是非立ち寄ってみてもらいたいですね。
(久保田)
はい。是非、多くの方々に伝統的工芸品のすばらしさを味わって、好きになってほしいなと思います。
(村上)
今日の話を聞いて特に注目したのは、私は、「あなたの地元の伝統的工芸品はなんですか?」。みんなのを知りたいです、っていう。
(杉浦)
そうだよね。実は何だろう?っていうのはあるもんね。
(村上)
そう、聞かれると「何だろう?」ってなっちゃうので、それで調べて知ってもらえたらいいなと思いました。
(杉浦)
きっかけにね。僕は「日本の宝 伝統的工芸品を知ろう!」です。やっぱり、知ることが大事だよね。
「 関連リンク 」
・伝統工芸 青山スクエア
・経済産業省(METI)「伝統的工芸品」