アーカイブ

2025.06.15
土砂災害 日頃の備えと早めの避難
雨が多い季節。あなたが住んでいる地域や近所は、安全と言えますか?
これまで何も起きていないから大丈夫と思わず、まずは、ハザードマップなどを確認しましょう。
今回は、「土砂災害 日頃の備えと早めの避難」というテーマで学びました。
続きを読む
これまで何も起きていないから大丈夫と思わず、まずは、ハザードマップなどを確認しましょう。
今回は、「土砂災害 日頃の備えと早めの避難」というテーマで学びました。
(杉浦)
土砂災害は、大雨や地震などが引き金になって土砂が急激に動き出す自然災害ですね。主に「がけ崩れ」「地すべり」「土石流」の3つに分類されるんだけど、知ってた? 佳菜子ちゃん。
(村上)
分類されていることは知らなかったんですけど、崩れ方に違いはありそうですよね。
(杉浦)
そうね。大まかに違いを説明すると「がけ崩れ」は、雨や地震などの影響によって土の抵抗力が弱まり、急激に斜面が崩れ落ちる現象。「地すべり」は、地下水などの影響により斜面の広い範囲の地面がゆっくりと下へ滑り落ちる現象。そして「土石流」は、山や谷などの土砂や石の一部が、長雨や集中豪雨などによる大量の水と共に一気に下流へ押し流される現象ということですね。
(村上)
土砂で家などが押し潰されているニュース映像を見たことがありますよね。
(杉浦)
そうだよね。実は日本って、こうした土砂災害が発生しやすい条件が揃っている国なんだって。
(村上)
そうなんですか! 揃ってるんですね。ちょっと怖いですね…。
(杉浦)
怖いからこそ知っておかなきゃ、ってことだよね。これが、残念ながら事実ということで。日本の国土は、傾斜が急な山や谷、がけが多くて、地震や火山活動も活発と。そのうえ、台風や大雨などに見舞われやすい気象条件だから、これらが引き金になる土砂災害が発生しやすいんだって。それに近年は地球温暖化の影響で大雨が頻繁に降るようになりましたし、長いこと同じ場所で雨が降り続けることもあるじゃない。
(村上)
確かに。「線状降水帯」とか、最近よく聞きますもんね。
(杉浦)
前は聞かなかったじゃない。
(村上)
ここ最近ですよね。実際どのくらい発生してるんですか?
(杉浦)
データによると、2024年だけでも1,433件の土砂災害が発生していて、直近10年間の土砂災害件数、これがですね、その前の10年間と比べると1.3倍に増えております。
(村上)
やっぱり大雨とともに、土砂災害も増えてるんですね…。
(杉浦)
昨年は、47都道府県のうち、茨城県と岡山県を除く45の都道府県で土砂災害が発生していて、亡くなったかたは56名。このうち49名は石川県のかたなんだよね。昨年は、1月に能登半島地震が発生して、9月には輪島市、珠洲市、能登町といった、地震による被害が大きかった地域で豪雨も発生したから…。
(村上)
土砂災害の引き金になる「地震」と「豪雨」が短い期間に立て続けに起こってしまったということですよね。
(杉浦)
そう。しかも、土砂災害は他の自然災害と比べても死者や行方不明者の割合が高い傾向にあるんだって。
(村上)
それはなぜなんですか?
(杉浦)
ここからは今日の講師に伺っていきましょうか。国土交通省砂防計画課の平澤 良輔さんです。
(村上)
平澤さん、なぜ土砂災害では死者や行方不明者の割合が他の自然災害と比べて高い傾向にあるんでしょうか?
(平澤)
要因はいろいろ考えられますが、一つには土砂災害ならではの特徴があるからです。
(村上)
土砂災害ならではの特徴?
(平澤)
はい。土砂災害は「津波や洪水などと比べて、突発的に発生する」うえに、「高速で土砂や石、岩を移動させて家屋を破壊」してしまいます。そのため、人的な被害が発生しやすいんです。
(村上)
がけ崩れや土石流は一瞬の出来事ですから、発生してからでは逃げることができないんですね。
(杉浦)
そうした特徴もあって、土砂災害は「屋内で被災」する割合が他の災害に比べて高い傾向にもあるんですよね。
(平澤)
はい。さらに土砂災害は、「危険が高まっていても、その兆しを目で見て確認するのが難しい」という特徴があります。例えば、洪水の場合は、川の水位が上がってきているのを見て避難の判断をすることもできますが、土砂災害は、地面の中の状況が外からは分かりにくいため、避難のタイミングがつかみにくいんです。
(村上)
予測するのも難しそうですね。
(平澤)
はい。土砂災害は雨の量や地形、地質など複数の要因が影響するため、精度の高い発生予測が困難です。ただ、被害を受ける可能性がある場所は、過去の土砂災害の事例からある程度、地形的に推定できます。
(杉浦)
そこで確認してもらいたいのが、土砂災害のリスクが高い場所を示した「ハザードマップ」ですよね!
(平澤)
はい。土砂災害から身を守るためのポイントは、「事前の備え」と「早めの避難」です。事前の備えとしてできることは、ハザードマップを確認して自宅や勤め先、よく利用する場所の近くに「土砂災害警戒区域」がないか確認することです。
(杉浦)
「土砂災害警戒区域」とは、「崩壊などが発生した場合に、住民などの命や身体に危害が生じるおそれがあると認められる土地の区域」で、2024年末時点で全国に約70万区域が指定されてるんですよね。
(平澤)
はい。この数は基礎調査を実施し公表した区域なので、今後も調査が進めば更新される可能性があります。
(村上)
「新たに指定される区域もある」ということですよね。ハザードマップの確認は、基本中の基本なので、多くのかたがされていると思いますけど、情報が更新されているかもしれないから、この機会に改めて確認しなくちゃですね。あと、避難先までの安全な経路もいくつか確認しておいた方がよさそうですね。
(平澤)
はい。土砂災害警戒区域以外でも土砂災害が発生する場合がありますので、付近にがけや小さな沢などがあれば注意してください。そうした情報を共有するためにも、事前の備えとして地域の防災訓練に参加して、ご近所の方々とコミュニケーションをとっておくことも大切なんです。
(杉浦)
こうした事前の備えをしたうえで、もしもの時には早めの避難ということですね。
(村上)
平澤さん、早めに避難するために知っておいた方がいいことって、どんなことがありますか?
(平澤)
まず、雨が降り出したら「土砂災害警戒情報」に注意してください。「土砂災害警戒情報」は、大雨により土砂災害の発生リスクが高まった時に、都道府県と気象庁が共同で発表する防災情報です。気象庁のホームページや各都道府県の砂防課のホームページで確認できるほか、テレビやラジオの気象情報でも発表されます。
(杉浦)
今いる場所で「土砂災害警戒情報」が発表されたら、市町村からの避難指示に従って避難するんですよね。
(平澤)
はい。また、市町村からは、土砂災害警戒情報発表より早い段階で「高齢者等避難」が発表されます。ご高齢のかたなど避難に時間がかかるかたは、この段階で近くの避難所など安全な場所に避難してください。それ以外の人も、大雨の時は「早めに避難の準備をする」ことや、「危険を感じたら自主的に避難する」ことが大切です。
(村上)
でもこういう時って、つい、自分は大丈夫って思っちゃうかたも多いのかなと思います。
(平澤)
そうですね。人は少し変わったことが起きても、きっと大丈夫と感じて、心を落ち着けようとする傾向があります。そのため、自分にとって不都合な情報をあまり深刻に受け取らず、前も大丈夫だったから今回も平気かも、周りの人も避難していないし、などと考えて避難が遅れてしまうことがあります。しかし、前が大丈夫だったからといって、今回も大丈夫とは限りません。土砂災害から身を守るには「最悪の事態を想定して、早めに避難する」この心構えが必要なんです。
(杉浦)
「まさか自分が」と思うパターンもありますからね。実際、早めに行動したことで被害を軽減することができた事例がたくさんあるんですよね。
(平澤)
はい。2022年8月に新潟県村上市小岩内地区で発生した豪雨による土砂災害では、家屋12棟が全壊または半壊。しかも、土砂災害は明け方に発生したにも関わらず、死者・行方不明者はゼロでした。
(杉浦)
これはですね、この地区の役員さんたちが住宅を1軒ずつ回って、いち早く避難を呼び掛けたからで、「小岩内のきせき」という絵本にもなって、語り継がれてますね。
(平澤)
実は、新潟県では58年前にも、大雨による土砂災害が多発したことがありました。この時、新潟県の死者・行方不明者は130名を超え、小岩内も被害を受けたそうです。そのため、地区のかたはこの時のことを思い出して、早めの避難を呼び掛ける決断ができたそうです。
(村上)
過去の水害を教訓にしたということですよね。
(杉浦)
しかも、住民が初めに避難したのは地区の公会堂だったんだけど、その公会堂がですね、以前の水害時に被害に遭った場所だったんだって。だから地区の役員さんは、「空振りでもいい」って、思い切って住民の皆さんに再避難を呼び掛けて、さらに高台にある住宅へ避難したんだって。
(村上)
ということは、避難場所から更に避難したということですよね。それって、なかなか決断できることじゃないですよね。
(杉浦)
そうだよね。でも、それが空振りじゃなかったんだよ! 住民が再避難を終えた後、土砂災害が発生して、実際、公会堂は倒壊したらしいです。
(村上)
早めに、より安全な場所に避難して、本当によかったですよね。ただ、小岩内の方々が早めの避難を決断できたのは、過去に水害の経験があったからだと思うんですよね。でも、過去に土砂災害が発生した場所だけが危険なわけじゃないんですよね。早めの避難を決断するためにも、大切なことって何なんでしょうね?
(杉浦)
やっぱり、日頃から地域の防災訓練に参加するなどして、もしもの時の避難行動をよりリアルにしておくことなんじゃないかな。
(平澤)
そうですね。2018年の7月豪雨で土砂災害に遭った東広島市黒瀬町の洋国団地でも、日頃から団地内で避難時の想定をリアルに行いコミュニケーションを取っていたことが素早い避難につながりました。
(村上)
ちなみに、どんな想定をしていたんですか?
(平澤)
団地内で防災マニュアルや防災マップを作成して防災意識を高めたり、自力で避難するのが難しいかたの避難を支援する担当者をあらかじめ決めたりしていたんです。その結果、土石流が発生し約10戸が全半壊、約20戸が床下浸水の被害に遭ったにも関わらず、人的被害はゼロでした。
(村上)
人的被害はゼロ! すごいですね。自治体のハザードマップだけに頼らず、独自の防災マップを作ることもすごいですけど、自力で避難するのが難しい人を支援する人を決めておくのも素晴らしいことですよね。
(杉浦)
他にも、「近所同士、声を掛け合うグループを編成する」「緊急連絡網を作る」といった対策を行っている地域もあるんですよね。
(平澤)
そうですね。防災意識を高めるために日頃からできることはたくさんあります。今月6月は「土砂災害防止月間」でもあり、避難訓練を実施している自治体などもあります。是非この機会に、避難訓練に参加したり、ハザードマップを見返したりしてみてください。土砂災害から身を守るためには「日頃の備えと早めの避難」です。
(村上)
今回の話の中で特に注目したのは、やっぱり「情報収集をして早めの避難」。情報収集すれば、早めに避難しなきゃいけないってことも理解できますからね。
(杉浦)
ほんとに。自分は大丈夫っていう気持ちは絶対ダメですからね。僕は、「ハザードマップで事前の備えを」。確認することが大事だよね。
「 関連リンク 」
・国土交通省「砂防」
・ハザードマップポータルサイト
土砂災害は、大雨や地震などが引き金になって土砂が急激に動き出す自然災害ですね。主に「がけ崩れ」「地すべり」「土石流」の3つに分類されるんだけど、知ってた? 佳菜子ちゃん。
(村上)
分類されていることは知らなかったんですけど、崩れ方に違いはありそうですよね。
(杉浦)
そうね。大まかに違いを説明すると「がけ崩れ」は、雨や地震などの影響によって土の抵抗力が弱まり、急激に斜面が崩れ落ちる現象。「地すべり」は、地下水などの影響により斜面の広い範囲の地面がゆっくりと下へ滑り落ちる現象。そして「土石流」は、山や谷などの土砂や石の一部が、長雨や集中豪雨などによる大量の水と共に一気に下流へ押し流される現象ということですね。
(村上)
土砂で家などが押し潰されているニュース映像を見たことがありますよね。
(杉浦)
そうだよね。実は日本って、こうした土砂災害が発生しやすい条件が揃っている国なんだって。
(村上)
そうなんですか! 揃ってるんですね。ちょっと怖いですね…。
(杉浦)
怖いからこそ知っておかなきゃ、ってことだよね。これが、残念ながら事実ということで。日本の国土は、傾斜が急な山や谷、がけが多くて、地震や火山活動も活発と。そのうえ、台風や大雨などに見舞われやすい気象条件だから、これらが引き金になる土砂災害が発生しやすいんだって。それに近年は地球温暖化の影響で大雨が頻繁に降るようになりましたし、長いこと同じ場所で雨が降り続けることもあるじゃない。
(村上)
確かに。「線状降水帯」とか、最近よく聞きますもんね。
(杉浦)
前は聞かなかったじゃない。
(村上)
ここ最近ですよね。実際どのくらい発生してるんですか?
(杉浦)
データによると、2024年だけでも1,433件の土砂災害が発生していて、直近10年間の土砂災害件数、これがですね、その前の10年間と比べると1.3倍に増えております。
(村上)
やっぱり大雨とともに、土砂災害も増えてるんですね…。
(杉浦)
昨年は、47都道府県のうち、茨城県と岡山県を除く45の都道府県で土砂災害が発生していて、亡くなったかたは56名。このうち49名は石川県のかたなんだよね。昨年は、1月に能登半島地震が発生して、9月には輪島市、珠洲市、能登町といった、地震による被害が大きかった地域で豪雨も発生したから…。
(村上)
土砂災害の引き金になる「地震」と「豪雨」が短い期間に立て続けに起こってしまったということですよね。
(杉浦)
そう。しかも、土砂災害は他の自然災害と比べても死者や行方不明者の割合が高い傾向にあるんだって。
(村上)
それはなぜなんですか?
(杉浦)
ここからは今日の講師に伺っていきましょうか。国土交通省砂防計画課の平澤 良輔さんです。
(村上)
平澤さん、なぜ土砂災害では死者や行方不明者の割合が他の自然災害と比べて高い傾向にあるんでしょうか?
(平澤)
要因はいろいろ考えられますが、一つには土砂災害ならではの特徴があるからです。
(村上)
土砂災害ならではの特徴?
(平澤)
はい。土砂災害は「津波や洪水などと比べて、突発的に発生する」うえに、「高速で土砂や石、岩を移動させて家屋を破壊」してしまいます。そのため、人的な被害が発生しやすいんです。
(村上)
がけ崩れや土石流は一瞬の出来事ですから、発生してからでは逃げることができないんですね。
(杉浦)
そうした特徴もあって、土砂災害は「屋内で被災」する割合が他の災害に比べて高い傾向にもあるんですよね。
(平澤)
はい。さらに土砂災害は、「危険が高まっていても、その兆しを目で見て確認するのが難しい」という特徴があります。例えば、洪水の場合は、川の水位が上がってきているのを見て避難の判断をすることもできますが、土砂災害は、地面の中の状況が外からは分かりにくいため、避難のタイミングがつかみにくいんです。
(村上)
予測するのも難しそうですね。
(平澤)
はい。土砂災害は雨の量や地形、地質など複数の要因が影響するため、精度の高い発生予測が困難です。ただ、被害を受ける可能性がある場所は、過去の土砂災害の事例からある程度、地形的に推定できます。
(杉浦)
そこで確認してもらいたいのが、土砂災害のリスクが高い場所を示した「ハザードマップ」ですよね!
(平澤)
はい。土砂災害から身を守るためのポイントは、「事前の備え」と「早めの避難」です。事前の備えとしてできることは、ハザードマップを確認して自宅や勤め先、よく利用する場所の近くに「土砂災害警戒区域」がないか確認することです。
(杉浦)
「土砂災害警戒区域」とは、「崩壊などが発生した場合に、住民などの命や身体に危害が生じるおそれがあると認められる土地の区域」で、2024年末時点で全国に約70万区域が指定されてるんですよね。
(平澤)
はい。この数は基礎調査を実施し公表した区域なので、今後も調査が進めば更新される可能性があります。
(村上)
「新たに指定される区域もある」ということですよね。ハザードマップの確認は、基本中の基本なので、多くのかたがされていると思いますけど、情報が更新されているかもしれないから、この機会に改めて確認しなくちゃですね。あと、避難先までの安全な経路もいくつか確認しておいた方がよさそうですね。
(平澤)
はい。土砂災害警戒区域以外でも土砂災害が発生する場合がありますので、付近にがけや小さな沢などがあれば注意してください。そうした情報を共有するためにも、事前の備えとして地域の防災訓練に参加して、ご近所の方々とコミュニケーションをとっておくことも大切なんです。
(杉浦)
こうした事前の備えをしたうえで、もしもの時には早めの避難ということですね。
(村上)
平澤さん、早めに避難するために知っておいた方がいいことって、どんなことがありますか?
(平澤)
まず、雨が降り出したら「土砂災害警戒情報」に注意してください。「土砂災害警戒情報」は、大雨により土砂災害の発生リスクが高まった時に、都道府県と気象庁が共同で発表する防災情報です。気象庁のホームページや各都道府県の砂防課のホームページで確認できるほか、テレビやラジオの気象情報でも発表されます。
(杉浦)
今いる場所で「土砂災害警戒情報」が発表されたら、市町村からの避難指示に従って避難するんですよね。
(平澤)
はい。また、市町村からは、土砂災害警戒情報発表より早い段階で「高齢者等避難」が発表されます。ご高齢のかたなど避難に時間がかかるかたは、この段階で近くの避難所など安全な場所に避難してください。それ以外の人も、大雨の時は「早めに避難の準備をする」ことや、「危険を感じたら自主的に避難する」ことが大切です。
(村上)
でもこういう時って、つい、自分は大丈夫って思っちゃうかたも多いのかなと思います。
(平澤)
そうですね。人は少し変わったことが起きても、きっと大丈夫と感じて、心を落ち着けようとする傾向があります。そのため、自分にとって不都合な情報をあまり深刻に受け取らず、前も大丈夫だったから今回も平気かも、周りの人も避難していないし、などと考えて避難が遅れてしまうことがあります。しかし、前が大丈夫だったからといって、今回も大丈夫とは限りません。土砂災害から身を守るには「最悪の事態を想定して、早めに避難する」この心構えが必要なんです。
(杉浦)
「まさか自分が」と思うパターンもありますからね。実際、早めに行動したことで被害を軽減することができた事例がたくさんあるんですよね。
(平澤)
はい。2022年8月に新潟県村上市小岩内地区で発生した豪雨による土砂災害では、家屋12棟が全壊または半壊。しかも、土砂災害は明け方に発生したにも関わらず、死者・行方不明者はゼロでした。
(杉浦)
これはですね、この地区の役員さんたちが住宅を1軒ずつ回って、いち早く避難を呼び掛けたからで、「小岩内のきせき」という絵本にもなって、語り継がれてますね。
(平澤)
実は、新潟県では58年前にも、大雨による土砂災害が多発したことがありました。この時、新潟県の死者・行方不明者は130名を超え、小岩内も被害を受けたそうです。そのため、地区のかたはこの時のことを思い出して、早めの避難を呼び掛ける決断ができたそうです。
(村上)
過去の水害を教訓にしたということですよね。
(杉浦)
しかも、住民が初めに避難したのは地区の公会堂だったんだけど、その公会堂がですね、以前の水害時に被害に遭った場所だったんだって。だから地区の役員さんは、「空振りでもいい」って、思い切って住民の皆さんに再避難を呼び掛けて、さらに高台にある住宅へ避難したんだって。
(村上)
ということは、避難場所から更に避難したということですよね。それって、なかなか決断できることじゃないですよね。
(杉浦)
そうだよね。でも、それが空振りじゃなかったんだよ! 住民が再避難を終えた後、土砂災害が発生して、実際、公会堂は倒壊したらしいです。
(村上)
早めに、より安全な場所に避難して、本当によかったですよね。ただ、小岩内の方々が早めの避難を決断できたのは、過去に水害の経験があったからだと思うんですよね。でも、過去に土砂災害が発生した場所だけが危険なわけじゃないんですよね。早めの避難を決断するためにも、大切なことって何なんでしょうね?
(杉浦)
やっぱり、日頃から地域の防災訓練に参加するなどして、もしもの時の避難行動をよりリアルにしておくことなんじゃないかな。
(平澤)
そうですね。2018年の7月豪雨で土砂災害に遭った東広島市黒瀬町の洋国団地でも、日頃から団地内で避難時の想定をリアルに行いコミュニケーションを取っていたことが素早い避難につながりました。
(村上)
ちなみに、どんな想定をしていたんですか?
(平澤)
団地内で防災マニュアルや防災マップを作成して防災意識を高めたり、自力で避難するのが難しいかたの避難を支援する担当者をあらかじめ決めたりしていたんです。その結果、土石流が発生し約10戸が全半壊、約20戸が床下浸水の被害に遭ったにも関わらず、人的被害はゼロでした。
(村上)
人的被害はゼロ! すごいですね。自治体のハザードマップだけに頼らず、独自の防災マップを作ることもすごいですけど、自力で避難するのが難しい人を支援する人を決めておくのも素晴らしいことですよね。
(杉浦)
他にも、「近所同士、声を掛け合うグループを編成する」「緊急連絡網を作る」といった対策を行っている地域もあるんですよね。
(平澤)
そうですね。防災意識を高めるために日頃からできることはたくさんあります。今月6月は「土砂災害防止月間」でもあり、避難訓練を実施している自治体などもあります。是非この機会に、避難訓練に参加したり、ハザードマップを見返したりしてみてください。土砂災害から身を守るためには「日頃の備えと早めの避難」です。
(村上)
今回の話の中で特に注目したのは、やっぱり「情報収集をして早めの避難」。情報収集すれば、早めに避難しなきゃいけないってことも理解できますからね。
(杉浦)
ほんとに。自分は大丈夫っていう気持ちは絶対ダメですからね。僕は、「ハザードマップで事前の備えを」。確認することが大事だよね。
「 関連リンク 」
・国土交通省「砂防」
・ハザードマップポータルサイト