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「託したい」と「継ぎたい」をつなげる。事業承継マッチング支援

「託したい」と「継ぎたい」をつなげる。事業承継マッチング支援

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事業の後継者を募集している企業と、事業を承継したい人をつなぐサービスがあるのをご存じですか?
働く人、地域の人、そして消費者にとっても、うれしいサービスです。

今回は、「「託したい」と「継ぎたい」をつなげる。事業承継マッチング支援」というテーマで学びました。
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(杉浦)
佳菜子ちゃんは、大好きだった町の中華屋さんが閉店しちゃったとか、ものすごく活気があった近所の工場が廃業したって話、聞いたことある?

(村上)
それで言うと、最近、私が大好きだった東京のかき氷屋さんがなくなっちゃって、めちゃくちゃショックで。すごく美味しくて、かき氷界の中でも有名なお店だったんですけど…。技術もすごかったんですよ。

(杉浦)
それはショックだよね。誰かに継いでほしかったよね。日本には約337万社の企業があるんだけど、昨年、休業とか廃業、解散した企業は6万件を突破したんだって! この数字は調査開始以来、過去最高なんだって。

(村上)
うわー、そんなに。やっぱり、コロナとか物価高とか、そういう影響で事業がうまくいかなくなっちゃったんですかね?

(杉浦)
普通はそう思うよね。でも、廃業する企業のうち、半数以上が黒字を維持したまま廃業してるんだって。

(村上)
えっ? 黒字を維持したまま? どういうことですか?

(杉浦)
要因はいろいろあるんだけど、一つは、後継者がいない。経営者が引退した後、後継者がその事業を引き継いで継続することを「事業承継」って言うんだけど、親族や親族以外の従業員などが引き継がない場合は、第三者に譲渡する「第三者承継」っていう道があるのよ。

(村上)
事業を第三者に売却する、ということですよね。

(杉浦)
そうそう。だから身近に後継者がいないのであれば、「第三者承継」を検討すればいいんだけど、「売却してまで事業を継続させたいとは思わない」と思っている経営者のかたが結構いるみたいなんだよね。

(村上)
何でなんだろう?

(杉浦)
理由は複数あるみたいだけど、一つは、なかなか希望にあった後継者が見つからないことだよね。安心して事業を託すことができる後継者を、新たに第三者から見つけることは簡単じゃないよね。

(村上)
確かに。やっぱり信頼関係ってすごく大事ですもんね。どうやって探そうとか、ちょっと考えちゃいますね。

(杉浦)
そうだね。だから経営状態が良くても「第三者承継」を検討せずに、初めから諦めちゃう経営者がいるみたいなんだよね。でも「第三者承継」は、「譲る側」と「譲り受ける側」両者にメリットが期待できるものだし、日本経済にとっても、いいことなんだって!

(村上)
そうなんだ。

(杉浦)
では、ここからは今日の講師に教えていただきましょうか。日本政策金融公庫、略称、日本公庫の事業承継支援室長、永沼 智佳さんです。

(村上)
永沼さん、この「第三者承継」にはいろいろなメリットがあるんですよね?

(永沼)
はい。例えば廃業する場合、設備や在庫の処分などで費用がかかってしまいますが、事業を譲り渡す場合は、こうした費用が不要となるだけでなく、多くの場合は、事業を譲渡することで対価を得ることができます。また同時に、従業員の雇用を守り、これまでの取引先を引き継ぐこともできます。

(村上)
廃業してしまったら従業員の皆さんは職を失ってしまいますし、取引先にも迷惑をかける可能性がありますもんね。雇用や取引先を受け継いでもらえる可能性があるというのは、大きなメリットですよね。では、譲り受ける方のメリットは?

(永沼)
「創業したい」「事業を拡大したい」「異なる分野に進出したい」と考えていても、ゼロから始めるのは不安なものです。でも事業承継により、既存の店舗や設備を受け継ぐ場合、新たに設備投資を行うよりもコストを抑えられる可能性があります。また、熟練の従業員や販売先、仕入れ先、培ってきた技術やノウハウなどの経営資源も受け継ぐことができ、ゼロから事業を始めるより、立上げ時間の短縮や、経営の安定を早期に実現できる可能性があります。

(杉浦)
これまでのノウハウを受け継ぎつつ、新たな視点を加えて経営を行えば、企業価値が上がる可能性だってありますね。

(村上)
例えば、町のカレー屋さんを受け継いで人気の味を守りつつ、そのカレーを使ったカレーパンを開発して人気商品にしちゃうみたいなことっていう…?

(杉浦)
そうね。受け継ぎながら新しいことをやるということね。そもそも黒字なのに廃業すると、当事者だけじゃなくて、地域のデメリットにもなる可能性があるんですよね、永沼さん。

(永沼)
そうですね。例えば、地域に根ざした商店が廃業すると、住民の交流の場が失われたり、買い物が不便になるなど、住民の生活に様々な影響が出る可能性があります。人の出入りも減り、周辺の店舗の売上げに影響が出るかもしれませんし、場合によっては、廃業した商店の取引業者の倒産リスクが高まることもあります。

(杉浦)
働く場が減ることで若者が別の地域に移ってしまって、地域全体の活気がなくなっていく、そんな悪循環にもなりかねませんよね…。

(村上)
たとえ小さな商店の廃業であっても「第三者承継」が検討されないのは、深刻な問題につながっているってことですよね。これ、なんとかならないんですかねー…。

(杉浦)
佳菜子ちゃん、そこで今日のテーマ「事業承継マッチング支援」なんだよね。

(村上)
えっ? それって、一体どういうものなんでしょうか? 永沼さん。

(永沼)
はい。日本公庫が行っている「事業承継マッチング支援」は、後継者がいないため事業を譲り渡したい「小規模事業者」と、創業や事業拡大に向けて、事業を譲り受けたいと考えているかたをつなぐ、マッチングサービスです。

(村上)
でも、そういうのって費用がかかりますよね?

(永沼)
それが、このサービスは、譲り渡し希望のかたも、譲り受け希望のかたも、無料で利用できるのが特徴なんです。

(村上)
ありがたいですね!! 無料なら「第三者承継」に積極的でない経営者のかたも利用しやすいかもしれないですよね。具体的には、どのようにマッチングするんですか?

(永沼)
まず「事業を譲り渡したいかた」「事業を譲り受けたいかた」どちらの場合も、日本公庫のウェブサイトにある「事業承継マッチング支援」のページから申込手続きを行い、登録をしていただきます。

(杉浦)
申込手続きは、全国に152か所ある、日本公庫の最寄りの店舗に電話で問合せしてもいいんですよね。

(永沼)
はい、問題ありません。ご登録後、譲り渡し希望のかたは、サイト内に事業内容や希望条件などの情報を掲載して後継者を募集することができます。一方、譲り受け希望のかたは、サイト内に掲載されている「後継者募集企業」の中からご自身が希望する事業者を探すこともできます。お相手が見つかった場合、日本公庫が双方に交渉を希望されるかを確認し、ご面談などの手順を踏んで、両者が合意となれば、契約締結となります。

(村上)
先ほどこのサービスは無料ということでしたけど、他にも特徴はありますか?

(永沼)
はい。このサービスでは、すでに事業を営んでいるかただけではなく、これから創業を希望するかたでも、「事業を譲り受けたいかた」として利用が可能という特徴があります。さらに、事業を譲り渡したいかたがお相手探しをする場合、同種のサービスですと、会社名を伏せることが一般的なのですが、このサービスでは、ご希望に応じて会社名を公表して後継者を募集することもできます。

(村上)
会社名を公表するのとしないのとで、何か違いがあるんですか?

(永沼)
例えば、会社名が公表されていると「譲り受け希望のかた」としては、事前に情報を集めることができますから、自分の希望に合ったものか判断がしやすくなり、ミスマッチを防ぐことができます。また「事業を譲り渡したいかた」としては、会社名を伏せている場合に比べて、ご自身の魅力を具体的に伝えることができるようになると思います。

(村上)
これまで、どれくらいのかたがこのサービスを利用されているんですか?

(永沼)
サービスが全国で本格的に始まったのは2021年度からなんですが、累計でおよそ1万7千件の登録をいただき、331社が成約に至っています。

(村上)
このサービスを利用していなかったら、331社が廃業していたかもしれないと考えると、ものすごい成果ですよね。具体的にはどのようなケースがありましたか?

(杉浦)
これはですね、成約事例も「事業承継マッチング支援」のサイトで紹介されてるので、その中の一つ「地域の人々に愛される精肉店の事業承継」をご紹介します。

(村上)
お肉屋さんのケースですね。

(杉浦)
そう、町のお肉屋さん。ジビエとかラム肉など独自の品揃えやサービスで人気のお店を、ご夫婦で経営してたんですけども、店主が腱鞘炎に悩まされて事業の継続が難しくなっちゃって、後継者探しを始めたそうです。初めは取引先に後を継いでくれそうな人の紹介を依頼してたんですけど、狭い世界なので、人の引き抜きのようなことはできないって断られてしまったそうです。

(村上)
事業承継が簡単ではないというのは、そういうこともあるんですね。

(杉浦)
そういうことですね。そこで、店主は日本公庫の「事業承継マッチング支援」に登録したそうです。その結果、見つかったのが27年間精肉業界に勤務していて、いつか自分の店を持ちたいと思っていたAさん。

(村上)
Aさんは、なぜこのサービスに登録されていたんですか?

(杉浦)
Aさんは、自分の店を持ちたいという創業の夢はあったものの、まだ幼いこどもを3人抱えていまして、ゼロからの創業に不安があったんだって。それで、まずはこのサービスを利用してみようと。

(村上)
それで両者がマッチングされたんですね。

(杉浦)
精肉店の店主さんが言うには、精肉業界は職人かたぎの人が多くて、方向性が合わないことがよくあるそうなんですけども、このかたとはビジョンが一緒で、会ったその日に「この人に譲ろう」と心が決まったそうです。その後、面談や事業承継の手続きを経て、無事新しいお店がオープン。開店当初は行列もできまして、今も売り切れになる日が多いなど、以前と同じように地域に愛されているお店になっているそうです。

(村上)
いやー、うれしいですね。こういう話聞くと。

(杉浦)
町のお肉屋さん大事よ!

(村上)
お肉屋さんもどんどん減ってますから、こうやってつながるといいですよね。やっぱり、常連さんも若い後継者へ期待して、新しいお店を楽しみにしてたんでしょうね。

(杉浦)
楽しみになるよね! また、この新社長は新規のお客さんも開拓していこうとSNSを始めまして、投稿を見て来られたお客さんも増えてきているそうです。永沼さん、サイトに掲載している以外にもいろんな成約例があるんですよね。

(永沼)
はい。創業150年のうなぎ屋さんを地元の運送会社が引き継いだ事例もあります。うなぎ屋の店主は、引き継ぎ先が異業種の会社だったため、「最低でも1年間、後継者に修業をさせること」という条件を出したそうです。実際、この運送会社の中で店主候補に名乗りを挙げたのは、営業担当のかたで、うなぎ調理の経験はゼロだったそうですが、店主から付きっきりで教わって、今では5代目店主として活躍されているそうです。

(杉浦)
すごくない? 運送会社の営業のかたが1年間修業して、5代目だよ?

(村上)
やっぱり、うなぎって、つながる技術みたいなものがありますもんね。

(杉浦)
運送会社の経営者は、このうなぎ店を、何らかの事情で運転できなくなった従業員の受け皿にもしていきたいと考えているそうですよ。

(村上)
マッチングもいろんな事例があるんですね。

(永沼)
はい。「事業承継マッチング支援」のサイトでは、様々な成約事例をご紹介しています。興味を持たれたかたは、このサイトで、どういった事業承継の方法があるのかなど、ご覧になってみてください。また日本公庫では、後継者を募集するオンラインイベントを全国各地で開催しています。事業を譲り渡したい企業の経営者が会社名をオープンにして登壇し、事業内容や事業への想い、後継者に期待することを伝え、譲り受けたい参加者は、この場での質問も可能です。今年(2025年)は7月の兵庫県から始まり、全14県で開催予定です。開催日時などは紹介したサイトで順次ご案内していきますので、是非ご覧になってください。

(村上)
私が今日の話を聞いて特に注目したのは、「事業承継マッチング支援のWebサイトを見たら「やりたい」が叶うかも!?」です。

(杉浦)
いいね! 僕は、「事業もマッチングできる時代 「託したい」×「継ぎたい」」です。


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