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海外で儲かる?! 甘い誘いは闇バイト

海外で儲かる?! 甘い誘いは闇バイト

一度でも従ったり、個人情報を渡してしまうと、なかなか抜け出すことができない「闇バイト」。
甘い誘いに乗らない、巻き込まれないためにも、注意するべきことがあります。

今回は、「海外で儲かる?! 甘い誘いは闇バイト」というテーマで学びました。
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(村上)
少し前に、すごく話題になりましたねー。「海外で儲かるアルバイトがある」と誘われて、行ってみたら無理やり詐欺をさせられたっていう事件ですよね。

(杉浦)
あったねー。インターネットで知り合った人から海外での仕事を紹介されて、タイへ行ったら、ミャンマーに密入国させられたんだよね。怖すぎるよ。その後ミャンマーで、マシンガンで武装した人が監視する建物に連れて行かれて、日本に詐欺の電話をかけさせられたっていう事件。これはニュースにもなったから多くの人が知ってるよね。

(村上)
いわゆる「かけ子」をさせられて、ノルマもあったんですよね。

(杉浦)
同じようにしてタイからミャンマーへ連れて行かれた人は、ノルマを課せられて、できなければスタンガンで暴行される環境で詐欺行為をさせられていたと。怖いな…。

(村上)
海外で闇バイトをさせられるケースって、ミャンマー以外にもあるんですか?

(杉浦)
結構あるみたいなんですね。カンボジアで詐欺をさせられたうえに軟禁された人もいるし、中国で詐欺をするように言われて「帰国したい」と言ったら、暴力団の名前を使って脅された人もいると。他にも、カンボジアからベトナムへ行くように指示されて、そこで詐欺をするように言われた人もいるんだって。

(村上)
これまでに、どれくらいこういった事件が起こっているんですかね?

(杉浦)
実際に詐欺などの犯罪に加担させられてしまったケースや、加担させられそうになったケースを合わせると、統計を取り始めた昨年から今年の5月末までのおよそ7か月間で、23件だって。ただこれは、警察が把握している数だから、実際にはもっとあるんじゃないかと言われています。

(村上)
「海外で儲かる仕事がある」って誘われたら、興味が湧いてしまうこともあるかもしれないですね。特に10代、20代の若者は、好奇心をくすぐられてしまうケースもあるかも。

(杉浦)
でも、ここは冷静になって考えてほしいんだよね。現地のことをよく知ってるわけでもないし、言葉がスラスラ話せるわけでもない人が海外で稼げる仕事って。そんな簡単な仕事、あると思う?

(村上)
ない! 絶対にない!! ほんとにスポーツと同じですよ。努力せずに優勝はできないのと同じで、やっぱり頑張らないと、お金って入ってこないと思うんですよね。そういう甘い蜜のような「海外で儲かる仕事がある」みたいな誘いがあったとしても、絶対、何か裏があると思いますよね。

(杉浦)
思ってかかった方がいいよね。そんなに世の中甘くないと。甘くないどころか、その後の人生に大きな影響が及ぶ可能性だってあるんだよ! ということで、ここからは改めて、闇バイトの恐ろしさをゲスト講師に伺っていきましょう。警察庁生活安全企画課の田矢 広樹さんです。

(村上)
田矢さん「海外で儲かる仕事があるよ」と誘われたら、「それは危険」だと思った方がいいんですよね?

(田矢)
そうですね。インターネットなどで知り合った面識もない知人から海外で儲かる仕事に誘われて渡航した結果、脅迫・監禁され、犯罪に加担させられるケースが今年に入ってから目立ってきています。

(村上)
そういう闇バイトは、国内で詐欺をさせられるケースよりも、応募する人にとってはハードルが高いように思いますよね。海外に行くために航空券やパスポートが必要ですし。それでも、そういうケースが目立ってきているってことですよね?

(田矢)
はい。実は犯罪グループは「海外で儲かる仕事」と魅力的な言葉で興味を引き、場合によっては、パスポートを作る費用や航空券まで応募者へ送っておびき寄せているんです。

(村上)
わー! なんてことを! 費用を負担してまで誘ってくるんですね。それは甘い誘惑ですよねー。

(杉浦)
ラッキーと思っちゃう人もいるかもしれないね…。

(田矢)
はい。ですが、実際に海外へ渡航してしまうと、先ほどの事例にもあったように、海外で犯罪に加担することを強制されてしまいます。当然、報酬は支払われません。言葉も通じない見知らぬ土地で脅迫・監禁され、家族や警察に助けを求めることすらできなくなってしまう恐れがあるんです。

(杉浦)
海外では、日本の警察が直接関わることができないんですもんね。

(田矢)
そうなんです。あえて厳しい言い方をしますけれども、犯罪グループにとって応募者は「使い捨て」「捨て駒」になります。これは全ての闇バイトに通じることです。最初は簡単な案件を紹介されて報酬が支払われたとしても、それは応募者を信用させるためのエサです。その後は、強盗や詐欺など凶悪な犯罪に加担するよう求めてきます。

(村上)
断ればいいじゃないって思いがちですけど、やっぱり、一回入ってしまうと、断れないんですよね。

(田矢)
そうですね。始めに連絡を取った時に個人情報を教えてしまう場合が多いため、断れば個人情報を基に執ように脅迫されます。犯罪者グループは、応募者に恐怖心を与えて離脱を阻止し、応募者が警察に逮捕されるまで利用し続けるんです。

(村上)
怖い…。

(杉浦)
実際、本当に執ように脅迫されるみたいで、一つ例を挙げると、Xで「高額収入」と書かれた投稿を見て応募したAさん。情報を隠せる、秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」で連絡を取り合うように誘導されまして、氏名や住所、生年月日、携帯電話番号、免許証の写真などを送信してしまったと。その後、相手から仕事の誘いがあったけど、内容が犯罪になると気付いて断り、「シグナル」のアプリを削除したそうなんです。ところがですよ、突然LINEで「お前、逃がさないからな」というメッセージと自分の個人情報が送られてきたそうです。

(村上)
えっ、なんでLINE知ってるの!? LINEのアカウントを調べ上げて、送りつけてきたってこと? 怖い!

(杉浦)
連絡を断とうとしても、何らかの方法で連絡手段を見つけ出して、「探しに行くぞ」「個人情報は分かっている」「辞めるなら現金を払え」などと脅すんだって。本人だけではなく家族にも電話をかけて脅すケースもあるそうです。

(村上)
そんな状況になったら、恐怖で従うしかないって思い込んじゃいますよね?

(杉浦)
思い込んじゃうよ…。でも一度でも従ったら、もう抜け出すことはできません! その後の人生が大きく変わってしまいます。そこでここからは、闇バイトに関わらずに済むために、知っておきたいことを学んでいきましょう。

(村上)
田矢さん、闇バイトが危険なことは、テレビやラジオ、ネットなど様々な媒体で発信されているのに、どうして応募してしまう人がいるんでしょうか?

(田矢)
闇バイトに応募する若者たちは、大きく「最初から犯罪行為であると知りつつ加担する者」と「犯罪行為であるとの認識が薄い、もしくは、その認識がないまま加担する者」との二つのパターンがあります。しかし、双方に共通するのは、結果として「犯罪行為に加担したことを後悔している」点です。

(杉浦)
それはそうだよね…。実際、闇バイトで犯罪に加担したら、逮捕されたり刑罰が科せられたりする可能性がありますよね。

(田矢)
そうですね。他人の指示の有無に関わらず、強盗を行い、その際に人を負傷させたら「無期又は6年以上の拘禁刑」、人を死亡させたら「死刑又は無期拘禁刑」です。また「かけ子」として電話をかけ、嘘の話でお金を準備するように相手をだますことは、「だましただけ」ではなく犯罪です。同様に「銀行口座を開設して売り渡しただけ」「スマホを契約して売り渡しただけ」という行為も犯罪なんです。検挙されれば刑罰を科せられる可能性があり、そうなれば、これまでの日常生活は一変します。

(村上)
どんなにお金に困っていても、興味本位であっても、闇バイトに応募しちゃ絶対ダメですよね!

(田矢)
もちろんです。闇バイトに応募して犯罪に加担し、その結果、検挙された者の中には少年もいます。そんな少年たちの大半は「遊ぶためのお金が欲しい」「1回だけなら大丈夫」「嫌になったら辞めればいい」といった安易な考えで応募し、取り返しのつかない結果を招いているんです。

(村上)
そうした状況に追い込まれないためにも、まずは闇バイトに応募しないことが大切ですよね。闇バイトであることを見分ける方法はありますか?

(田矢)
闇バイトの募集は通常のアルバイト募集のように見えても、二つの大きな特徴があります。まず一つ目は、XなどのSNSで「高額」「即日即金」「ホワイト案件」「楽で簡単、高収入」などを強調する言葉が多い点です。

(村上)
誰にでも簡単にできる仕事で、すぐに高額のバイト代が手に入ると勘違いさせるんですよね。そもそも違法でないバイトなら、わざわざ「ホワイト案件」なんて書かないですもんね。「ホワイト案件」と書いている時点で怪しいですよね。

(田矢)
そのとおりです。そのため、最近はそういう言葉すら使わずに募集しているケースもあります。犯罪グループは世間が警戒する様子を見て、巧みに手口を変えているんです。しかし変わらないものもあります。

(杉浦)
それが二つ目の特徴ですね。

(田矢)
はい。犯罪者グループはSNSでおびき寄せた後、「シグナル」や「テレグラム」といった秘匿性の高い通信アプリに誘導するんです。そして「アルバイトをするための登録情報として必要」などと言って、個人情報を送信させるんです。

(村上)
秘匿性の高い通信アプリを使うように言われたら、疑った方がいいってことですね。

(田矢)
犯罪者グループは人をだますことにかけてはプロですから、「個人情報が漏れないように秘匿性の高いアプリを使用する」など、もっともらしいことを言ってくるかもしれません。しかし、どう言われたとしても、シグナルやテレグラムなどに誘導されたり、個人情報を送信するように言われたら疑ってください。

(村上)
でも、闇バイトじゃなくても、世の中には、割りのいいバイトがあるかもしれないですよね?

(田矢)
いえ。「簡単な仕事」「誰でもできます」「儲かります」。そんな、誰でも楽に儲かる仕事は世の中にはありません! それでも、もし、割りのいいバイト募集を見つけたら、雇い主となる企業の住所や電話番号の記載があるかなど、きちんとしたバイト募集なのかを調べ、こういった記載がなければ闇バイトを疑ってください。

(杉浦)
調べるだけじゃなくて、家族や友人など誰かに相談してほしいですよね。「こういう仕事があるんだけど、どう思う?」と聞けば客観的な意見を聞けると思います。

(田矢)
そうですね。数人の友人に聞いて一人でも「それって大丈夫?」という反応があれば、よく考えてください。大切なのは一人で決めないことです。

(村上)
そうですね。「一人で決めないこと」で危険を回避する確率は上がりますもんね。でも、もし個人情報を渡してしまった後に闇バイトだと気付いた場合は、どうすればいいですか?

(田矢)
そうした場合は、勇気を持って、警察相談専用電話「#9110」に電話して警察に相談してください。もちろんお近くの警察署や交番に直接相談してもかまいません。実際、海外在住の知人から「闇バイト」に誘われて個人情報を教えてしまった人が、警察に相談して、渡航する前に思いとどまることができた例もあります。

(村上)
ただ、警察に相談するのって大ごとになりそうな気もしますし、知人の紹介だったりすると、なおさら相談をためらう人もいそうですけど、どうですか?

(田矢)
ためらう気持ちも分かりますが、渡航後では、もう、日本の警察は直接関与できません。そうなる前に、思いとどまって警察に相談することが相談者やそのご家族を救うことになります。警察は相談を受けたあなたやあなたのご家族を確実に保護します。

(杉浦)
たとえ知人からの紹介であっても、内容に合わない高額な報酬が提示されるなど、少しでも怪しいと思う仕事には一切応じないこと。もし家族や友人が、そういったバイトに応募しようとしていたら、よく調べてみるよう勧めることも大切ですよね。

(田矢)
はい。夏休みの時期となり「海外で儲かる仕事」という言葉は魅力的に響くかもしれませんが、世の中はそんなに甘くありません。闇バイトはアルバイトではなく、れっきとした犯罪です。興味本位で安易に応募せず、もしもの時は、警察や家族、友人など、複数の信頼できる人に相談してください。

(村上)
今日の話の中で私が特に注目したことは、もう当たり前のことなんですが、「簡単にお金が手に入る仕事なんてありません!!」です。

(杉浦)
そういうことです! そんな甘い話はないですよと。僕は「ダメ、闇バイト 「#9110」に相談を!」です。困ったら、悩んだら電話してください。


「 関連リンク 」
警察庁「いわゆる「闇バイト」の危険性について」
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