アーカイブ

安心して楽しもう! 運動・スポーツの安全ガイドライン

安心して楽しもう! 運動・スポーツの安全ガイドライン

運動やスポーツを楽しく続けるためには、スポーツをする人、教える人、運営する人など、それぞれの立場の人が、今の時代に合った適切な対応を知ることが大切です。

今回は「安心して楽しもう! 運動・スポーツの安全ガイドライン」というテーマで学びました。
続きを読む
(杉浦)
運動・スポーツを楽しむには絶好の季節ですけども、野球、サッカー、水泳、登山、どんな運動・スポーツにもけがなどの事故が発生するリスクがあるよね。実は、ここに、ちょっと心配なデータがあります。運動・スポーツ中の事故の発生率は、年々上昇傾向なんだって。

(松井)
そうなんですね。それはちょっと心配ですね。

(杉浦)
このデータは、「スポーツ安全保険」っていう、学校のこどもたちや、地域のスポーツクラブなどで運動する人が多く加入している保険の記録を基にしたものでして、つまり、その保険に入っているかたが、けがなどで給付を受けたケースを集計したデータなので、全ての人を対象にしたものではないんだけど、それでも、「運動・スポーツ中の事故が、年々増えている傾向がある」っていうのは気になるよね。

(松井)
気になりますね。具体的にどのような事故が発生してるんですか?

(杉浦)
多いのは「骨折」「捻挫」「打撲」など、どれも運動・スポーツをしていたら起こりそうなものだけども、2023年度には、治療しても完全には回復しない、後遺障害が残る事故が390件、さらに、亡くなってしまう事故も17件起きています。

(松井)
想像以上に多くてびっくりしています。

(杉浦)
多いよね…。そこで、スポーツ庁が、安全・安心に運動やスポーツを楽しめる環境を整えようと、ガイドラインを作ったんです。これまでも、登山や水泳、熱中症など、事故が起きやすい場面ごとに、注意の呼びかけは行われてきました。ただ、運動やスポーツ中の事故を防ぐための対策を、幅広くまとめて示したガイドラインを公表するのは、今回が初めてなんだって! ここからは、今日の講師に詳しく教えていただきましょう。スポーツ庁健康スポーツ課の中村 宇一さんです。

(松井)
中村さん、ガイドラインというのは、具体的にどのようなものなんですか?

(中村)
このガイドラインは、正式には、「運動・スポーツにおける安全対策の評価・改善のためのガイドライン」と言いまして、運動やスポーツを楽しむためには、けがや事故、暴力やハラスメント、さらに熱中症などを、どう防いでいくのか、その対策を知って、適切に対応していくことが大切です。そのために作ったガイドラインです。

(杉浦)
この「適切に」っていうのがポイントですね。

(中村)
そうですね。例えば、「みんなが頑張っているから、体調が悪くても練習に参加しなきゃ」と、無理をして運動やスポーツをするのは、事故のリスクを高めてしまいます。また、監督やコーチが根性を強いる昔ながらの指導、「昔からこうしてきたから」という経験だけに頼るやり方も適切とは言えません。

(松井)
指導の仕方など、「昔は大丈夫だったことが、今は大丈夫じゃない」っていうこともありますもんね。

(中村)
そのとおりです。ですから、この安全ガイドラインでは、個人や組織が、今の時代に合った「科学的な知見」に基づいて、安全対策を見直し、改善していけるよう、各競技に共通して必要となる事故防止対策などをまとめています。

(杉浦)
特定の年齢や性別、障害の有無、また、プロ・アマチュアの区別なく、全てのかたが幅広く利用できる内容になっていて、スポーツ競技はもちろん、ダンスやレクリエーションスポーツなど、様々な運動・スポーツ活動に役立つんですよね。

(中村)
そうですね。この安全ガイドラインは、そのまま運動・スポーツの現場で使っていただけるように、五つの立場ごとに分けてまとめているのも特徴です。まさに「運動・スポーツをするかた」、つまり、私たち一人ひとり。それから、「学校の先生や、地域でこどもたちに運動やスポーツを指導するかた」「一般市民向けに健康教室などを主催したり、運営するかた」「スポーツ施設を設置したり、管理運営するかた」など、立場によって気を付けるポイントが示されていて、分かりやすくなっています。

(松井)
具体的にどのような内容なんですか?

(杉浦)
それ、気になるよね。では、ここからは、安全ガイドラインを基に、運動・スポーツ中、事故に遭わないよう、多くのかたに心得ておいてほしいことを、ピックアップしてご紹介していきましょう。はじめに、心得その1「自分の体を知ろう」。どんな運動・スポーツをするにも、まずは今の自分の体の状態を知ることが大切です。自分の筋力や体力に合わない、無理な負荷でトレーニングをすると、けがのリスクを高めちゃうからね。

(松井)
確かに。運動会で親御さんが急に走った時に、足をけがしちゃうって、よく聞く話ですよね。

(杉浦)
昔の体力を信じてやったら、全然体力がなかったみたいなね。

(松井)
それが、今の自分の体を知ろう! ですよね。

(杉浦)
そうならないために、客観的に自分の身体機能がどの程度なのか、知っておくことが大切ですよね、中村さん。

(中村)
そうですね。例えば、「運動・スポーツをする人」に向けた安全ガイドラインでは、自分の身体機能を知ることができる身体診断「セルフチェック」を定期的に実施し、さらに、けがの予防に効果的な「改善エクササイズ」をすることなど、具体的な提案をしています。

(杉浦)
この身体診断「セルフチェック」というのは、スポーツ庁が公開しているもので、ハンマー投げのオリンピック金メダリストで、前のスポーツ庁長官、スポーツ科学者の室伏 広治さんが長官時代に考案したものです。首や股関節など、全身の可動性や筋力などをチェックできる動きを、室伏さん自身が動画で模範実演しています。僕も1年前、この番組で、肩甲骨の可動性をチェックしたんだけど、できると思ったのに、二の腕の筋肉が邪魔してできないことがあったから。これ、ちょっと皆さん、調べてやってほしいですね。

(松井)
体って、できる! と思っても、思うように動かないこともあるものなんですね。

(杉浦)
そう! この動きはできるでしょ! と思ってたら、無理かも! ってことも結構あるんですよね。中村さん。

(中村)
そうですね。この「セルフチェック」の良さは、道具がいらない、そして、気軽にできて、自分の体の状態を把握できるということです。また、「改善エクササイズ」はけがの予防にもなりますので、是非、定期的にやっていただきたいと思います。

(杉浦)
運動・スポーツ中、事故に遭わないよう心得ておきたいこと、続いて、心得その2です。「道具・用具を使うときは、安全に使おう」。中村さん、野球やソフトボールは、道具による事故が多いそうですね。

(中村)
そうですね。スポーツ安全協会の過去のデータによると、障害物や道具、それから、飛んできた物などによるけがが、全体のおよそ4分の1を占めていて、これが、野球やソフトボールでは約半数を占めています。道具や用具を使うときは、「周りの人にも気を配りながら正しく扱う」ことを心掛けてください。また、指導者のかたは、「道具に破損や劣化がないか、責任を持って確認する」ことが大切です。さらに、道具を使う競技や、激しい接触のある運動・スポーツでは、必要に応じて「保護具や安全装備を身に付ける」ことも有効です。

(杉浦)
使用する施設や実施場所に、「危険がないか確認する」ことも大切ですよね。

(中村)
そのとおりですね。例えば「老朽化している箇所はないか」「危険な突起物がないか」。昔、体育館の床から釘が飛び出ていて、けがをするという事故があったんですが、事前にチェックしておくことが大事です。それから、時々ある事故ですが、サッカーゴールが倒れたり、テニスの審判台などが倒れたりすることもありますので、「しっかり固定されているか」なども、確認が必要になります。それと、重要なのが「AED」です。どこにあるのか、あらかじめ把握しておくことが大事です。

(松井)
調べたうえで、AEDが設置されていない場合もありそうですけど、そういうときはどうしたらいいですか?

(中村)
そうですね。AEDは、最近、レンタルもできますので、もし、設置されていない場所で運動強度の高い競技やコンタクトスポーツを行う場合は、レンタルをして準備しておくことも大事です。さらに、スポーツ活動やスポーツ大会などを行うときは、事故が起きた際に迅速に対応できるよう、「あらかじめ応急体制を整えておく」ことも重要だと、安全ガイドラインでは示しています。

(松井)
「これまで事故がなかったから大丈夫」と思い込まずに、いざというときの備えを、しっかりしておくことが大事なんですね。

(杉浦)
そうだね。では、続いては、心得その3「いかなる理由でも暴力・ハラスメント行為はダメ」。安全ガイドラインでは、「暴力・ハラスメント防止」についても示しているんですよね。

(中村)
そうですね。非常に残念なことなんですが、運動やスポーツの現場では、今も暴力やハラスメントの事案が発生しています。日本スポーツ協会に相談窓口が設けられているんですが、年々、相談件数が増えていまして、暴力・ハラスメントの被害者のおよそ半数が小学生。さらに中学生と高校生を合わせると、被害者全体のおよそ8割をこどもが占めているという状況です。

(杉浦)
もちろん、暴力やハラスメントはあってはいけないことですが、指導との線引きに迷うケースもあるかもしれません。自分では指導のつもりでも、ハラスメントと受け取られてしまうこともあり得ますよね?

(中村)
そうですね。それがスポーツの難しいところではあります。どうしても、スポーツは勝つことが優先されてしまう性質があって、暴力やハラスメントがあったとしても、試合に勝っているとか、結果が出ていると、そうした行為が正当化されてしまうおそれがありますね…。

(杉浦)
残念ですけど、確かに、そういうこともあるかもしれないですね…。

(中村)
そのため、安全ガイドラインでは、いかなる理由であっても暴力・ハラスメント行為は正当化されないことを明確にしたうえで、「どういう行為が暴力・ハラスメントにあたるのか」「その原因はなんなのか」「どうやったら防げるのか」「どのように対応していけばいいのか」を具体的に示しています。

(松井)
なるほど。これらの行為は、指導者だけでなく、先輩・後輩の関係でも起こり得ることですよね。自分がしていないか、受けていないか、あるいは、周りで被害に遭っている人がいないか。みんなで意識して、適切に対応していくことが大切ですね。

(杉浦)
そうだよね。中村さん、この安全ガイドラインでは熱中症予防についても示されてますよね。

(中村)
はい、そうですね。最近、夏は非常に暑いので、熱中症を警戒して運動をやめてしまうかたもいるかもしれませんが、健康のためには、夏の間、運動を全くしないのは、良くないので、熱中症対策をしっかりとりながら運動を継続することがとても大事です。あまり知られていないんですが、熱中症対策としては、例えば、5月や6月とか、「暑くなる前の時期から暑さに体を慣らしておく」ことが非常に大事だと言われています。それから、こまめな「水分・塩分補給」、そして、「体を冷やす」ことも大切です。ガイドラインでは、「暑さ指数」が31以上、または、気温が35度以上の場合は、熱中症のリスクが高まるので、涼しい場所を確保したり、時間帯をずらすといった工夫も重要としています。

(杉浦)
暑さ指数は、気象庁のサイトなどで発表されていますし、専用の測定器も市販されていますから、運動中は忘れずにチェックしてほしいですよね。

(中村)
そろそろ暑くなる季節ですが、運動やスポーツは、安全があってこそ、心から楽しめるものです。今日ご紹介した安全ガイドラインに加えて、現場で使いやすいチェックリストも用意していますので、日頃の対策に役立てていただけたらと思います。

(松井)
私が今日の話の中で注目したのは、「自分の体を知ろう!」です。

(杉浦)
大事だね。僕は、「運動・スポーツの安全ガイドラインを使ってみよう」です。


「 関連リンク 」
スポーツ庁「スポーツの事故防止について」
スポーツ庁「室伏長官が考案・実演する身体診断『セルフチェック』動画」
戻る