みらい図鑑

Vol.77 「山椒」 和歌山県

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古くは紀元前の時代から日本で愛されてきたスパイス、「山椒」。
日本で生産されている山椒の多くは和歌山県産です。



地元の農産物と組み合わせて、山椒の新しい魅力を提案している会社が、
和歌山県の北部、海南市にあります。
「FROM FARM」の代表・大谷幸司(おおたに・こうじ)さんにお話を伺いました。

「僕の元々知っている山椒というのは、鰻屋さんだとか、
振りかけるスパイスのイメージだったんですが、
5年前にはじめて、出荷前の収穫したての山椒を少し舐めさせてもらったら、
あまりにも衝撃を受けて、もともとぼくの知っている山椒とは全く別のように
感じたんですね。」



和歌山では“緑のダイヤ”とも呼ばれている山椒。
柑橘系の爽やかな香りがふわっと漂い、そのしびれ方に衝撃を受けた大谷さんは、
山椒に新たな可能性を感じ、その魅力を若い人にこそ伝えたいと、加工品開発に乗り出しました。

和歌山県産のぶどう山椒と、柚子の皮を甘く炊いたピールを使って作る「ミックスハーブソルト」のほかに、山椒を使ったミックスナッツや山椒のグラノーラなども作っています。

山椒は香りが消えてしまいやすく、特有のしびれを維持するのが難しいスパイス。
香りが飛ばないように直前にミルで刷って、荒い状態にして、
しびれや香りが飛ばない工夫をしているんだそうです。



「間違いなく、日本を代表するスパイスのひとつだと思うんですよね。
いろんな可能性というか、山椒の面白さをもっと幅広く、
一般的にいろんな人が手軽に身近に感じられるように広がったらいいなと思います。」



そして、ただ作るだけではなく、自分たちで販路を開拓し、提案することで、
農業の可能性や面白みが2倍、3倍になると、大谷さんは考えます。

メープルシロップでコーティングされ、ぶどう山椒で風味づけされたミックスナッツ。
“今風”の食べ方を提案することで、若い人たちが山椒の魅力を知り、発信。
その結果、グローバルな農産物として成長していく和歌山の山椒。
これからも素敵なスパイラルがどんどん広がっていきそうですね!

Vol.76 「エディブルフラワー」 東京都

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今回の話題は「花」。
花といっても“飾る”ためのものではなく、“食べる”ための花、「エディブルフラワー」です。



サラダやケーキ、料理などに添えられている彩り豊かな花、あれは飾りものではなく、
「エディブルフラワー」というれっきとした食材なんですね。
東京都の立川市でエディブルフラワーを生産している、
「あみちゃんファーム」、網野信一(あみの・しんいち)さんに伺いました。

「野菜と一緒で、安心・安全に食べられるように、
特別栽培で作られたお花のことを、エディブルフラワーと言います。
うちでは、年間で20種類ぐらいを作っていて、
コスモスやパンジー、ビオラ、ペチュニア、なでしこなど、
本当に誰もが普段見ているようなお花を作っています。」





実にいろんな種類がある「エディブルフラワー」ですが、
基本的には際立った味のあるものは少なく、料理の味に大きな影響を与えません。
ですが、中には、甘みや辛味、酸味、苦味といった特徴を持つ花もあり、
味をしっかり楽しめる品種もあるんです。



観賞用の花との大きな違いは、安心して食べられるように農薬を使わずに育てること。
見た目に楽しく、食べておいしい。そんなエディブルフラワーを、是非、食卓に取り入れて
ほしいと網野さんは話します。
「たとえば飲み物ですと、氷の中にお花を入れるだけでも飲み物がまた一段と変わったり、
サラダに散りばめて頂くだけでも、緑だけのものが、ピンクや黄色など、
様々な色が入るんですよね。食卓にちょっとお花を飾るだけでも、
会話が広がったり、雰囲気が良くなったりすると思うんです。」



エディブルフラワーを生産する生産者は、全国で少しずつ増えているといいます。

同じ東京に暮らす若者に花をとおして農業の魅力を伝えたい、と言う網野さんは現在30歳。
同じ志をもつ仲間が増えると、日本の食卓は一段と華やかになりますね。


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